心理学総合案内「こころの散歩道」/ 犯罪心理学 /少年犯罪の心理 /中学生 ホームレス暴行死事件/その2
謝らせようと思った
少年達が、警察で男性に「謝らせようと思った」と語っていという報道を聞いて、「冗談じゃない、謝るのはお前達の方だろう!」と、誰かが語っていました。
そうですね。図書館でやりたい方題して人に迷惑をかけていたのは少年達の方です。そうのとおりです。
ただし、少年達の主観的な心の世界ではそれが違っていたのでしょう。暴力、乱暴、いじめ、こんなことをする子ども達も、自分達の思いとしては、自分達の方が正しいと思い込んでしまっています。
クラスの中で、一人の子がみんなにいじめられている。外から大人が見れば、どう見てもその一人が被害者で、他のみんなが悪い加害者です。ところが、調査してみると、いじめっ子や、いじめの傍観者達は、しましばいじめられている子供が悪いと感じています。
集団のルールを破っている。和を乱している。それは、人より汚いとか、できないということもあるでしょうし、逆に人よりきれい過ぎる、できすぎるということもあるでしょう。
自分が我慢していることを、あいつは平気でやっている、などと感じて、攻撃心を向けることもあるようです。
「泥棒にも三分の理」ということわざがありますが、暴力をふるう人にも、その人なりの理屈「正義」があるわけです。
だから、子ども達に教えるときに、悪いことはやめなさいではなくて、何が本当に悪いことなのかを教えなくてはならないでしょう。
大人の世界でも、理由があれば暴力をふるってもいいと思っている人は少なくありませんから。
仕返し、うらみ
少年達は、男性に注意されげんこつで殴られたことを恨みに思い、仕返ししようと思いました。その仕返しは、客観的に見れば、「自分の方が悪いのに」ということになりますから、「逆恨み」などと呼ばれるわけですが、本人達としては、当然のうらみ、正当な仕返しと感じていたことでしょう。
うらみとは、「他者から与えらた不当な仕打ちによって生じた不快感を、辛抱しつづけた苦しみを基調として発現する感情」です(山野保著『うらみの心理』)。
辛抱しつづけといっても、大人の目からは、すぐに爆発しているように見えますが、少年達にとっては堪忍袋の緒が切れたわけです。
少年達には、残念ながら我慢する力が育っていませんでした。
心理学的に言えば、うらみとは、基本的には弱者の感情であり、甘えの裏返しです。常に勝っている強者は、うらみをつのらせる必要がありません。また、自立した人間同士であれば、仕返しといった行動は出にくいのですが、甘えがあるからこそ、怒鳴るとか、殴るといった乱暴な行為に走ってしまいます。
低い自尊心の持ち主が強がって生きているときに、そのもともと壊れてしまいそうな自尊心を傷つけられると、過剰な反応に出てしまうのでしょう。
肩で風切って歩いているチンピラが、誰かと肩がぶつかると、すごく怒るわけです(ちなみに肩は権威の象徴)。
多少のことで倒れそうにならないしっかりとした自信、自尊心、不当なことをされたと感じても、過激な反応をしないですむ心の余裕。そんな心をもった子ども達を育てて行きたいと思うのです。
(ところで、当掲示板は別ですが、少年犯罪に関する掲示板などで、「もし自分の家族が被害者だたら、犯人の少年達をこの俺がぶち殺してやる」といった発現が見られます。今回の事件に関してもそうです。感情的には理解できますし、またその人が本当に殺人を犯すつもりでもないでしょう。けれども、仕返しだといって傷害致死事件を起こした少年達を責めながら、ネット上の公の場の発現で、俺も条件がそろえば仕返ししてやるぞと発言するのは、いかがなものでしょうか。)
ホームレス
被害者の男性のことを、マスコミは名前のほかに、「ホームレスの男性」とか「住所不定無職の男性」と呼んでいます。
被害者の男性の近くで暮らしている同じホームレスの男性は、中学生達が自分達をゴミ扱いし、「。ぶらぶらして、何やっているんだ。仕事でもしろ」などと言ってくると語っていました。
自分だって働いていない中学生が何を言っているのだと、お思いの方もいらっしゃるでしょう。私も同感です。
そんなことを言う中学生達はどこかが歪んでいます。今回の事件でも、通学生を叱った男性が、立派な家に住んでいる人だったら、この事件はおきなかったかもしれません。
中学生達は、ひどい偏見と差別を行っていました。彼らは間違っています。しかし、多くの場合、偏見差別は、大人の社会が作り出したものです。意図しなかったにせよ、大人たちが子どもたちに教え込んでしまうことが多いのです。
少年達は、ずいぶん悪いこともしていたようです。警察沙汰にはなっていませんでしたが。
でも、もし私がワル知恵のはたらくいやな子どもだったら、男性に殴られた時点で、警察に行っていたかも知れません。自分は善良な被害者であり、乱暴なホームレスに暴力を受けたと。
彼らには、そういうワル知恵はありませんでした。ただ、殴ってやろうと思ったのです。
暴行を一旦中止し、塾に行った少年もいました。塾をサボり、塾の先生や親に叱られるような悪いことはしなかったのです。
そうして彼らは、もっともっと悪いことをしてしまったのです。
このページだけでは書ききれない部分については、『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』主婦の友社 『なぜ、少年は犯罪に走ったのか』KKベストセラーズ ワニのNEW新書などもぜひご覧下さい。
少年犯罪や非行の心理につては、当サイト内の少年犯罪の心理、犯罪全般については犯罪心理学:心の闇と光をお読みいただければ、幸いです。このサイト全体「こころの散歩道」は、人の心の問題を広く扱っています。
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