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カンニングの心理学

大学入試問題ネット投稿問題から考える

2011.3..3


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あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ
人生と命について考える心理学エッセー
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京都大学入試問題ネット投稿事件の概要・容疑者へのメッセージ


カンニングをする者の二つのタイプ

1 心理的に追い詰めたれた真面目で神経質なタイプ

普段は不正行為などせず、真面目に生活しているが、合格、成績アップの強いプレッシャー^を感じ、やむにやまれずカンニングをしてしまうタイプが考えられます。このままではダメだと思いこみ、思い詰めた心理でカンニングの準備をするでしょう。試験が開始した後も、強い不安と緊張、葛藤を感じるでしょう。試験監督の監視が厳しければ、カンニングを実行しないまま試験が終了することもあるでしょう。

2 罪の意識を感じない、確信犯的タイプ

テストは結果だけが重要であり、良い点数を取るためには手段を選ばないと感じるタイプも考えられます。カンニングはみんながやっていることで、自分もカンニングして良い点数をとっても良いだろうと思うでしょう。

*試験監督としてカンニング学生を捕まえた経験から

まだ、大学院の学生だった頃、アルバイトで某大学(私が所属していたところで就職したところでもありません)の定期試験の監督を務めたころがあります。私自身も、他のアルバイト試験監督も、カンニング学生を捕まえましたが、カンニングを摘発された学生の中には、捕まった段階で真っ青な顔をして、緊張の極致に至っている学生もいました(上記1「真面目で神経質タイプ」)。こちらが心配になってしまったほどです。
一方、摘発され、捕まえられても、反省の態度を示さず、中には「俺だけじゃないだろう!」などと毒づく者もいました。

*ある進学校の生徒の発言から

ある難関進学高校の生徒が言っていました(ずいぶん以前の話ですが)。定期テストは、要領よくやって高い点数を取ればよい。カンニングも可能ならやってもよい。

*海外でのカンニングに関する研究によると

ナルシスとはカンニングしやすいとか、サイコパス的な人がカンニングをするといった研究もありますが、日本ではこれらの確信犯的な人に加えて、真面目すぎるタイプもいるだろうと思います。

*少年犯罪、少年非行の研究から

非行少年、犯罪少年には、過剰抑圧型(良い子型)と、社会化されていない攻撃型(ツッパリ型)とされています。

カンニングと環境

とても難しい試験問題を出し、良い点を取ることへのプレッシャーをかけ、そしてカンニングをしやすい状況にしておく。たとえば、ちょっと視線を動かせば隣や前の人の答案が見える、という状況を作ります。

すると、多くの人が誘惑に負けてカンニングをしてしまうようです。

もちろん、どんな環境でも不正はいけないのですが、カンニングをしやすい環境は、カンニングを誘発するでしょう。

たとえば、昔ながらの対面式の店が減り、スーパーやコンビニタイプの店が増えると、万引きも増えてしまうことが考えられるのと同様です。


カンニング、悪いことをするときのドキドキ

感情に関する心理学の基礎研究です。カンニングしやすい状況を作っておき、そして何の効果もない「偽薬」を飲ませ、この偽薬を飲んだ半数の人には、「この薬を飲むとドキドキします」というウソの情報を伝えます。
その結果、薬でドキドキすると伝えられた人たちの方が、カンニングをしました。人は、カンニングをしようという気持ちになれば、、ドキドキすることでしょう。
この「ドキドキ」を普通は、「胸の痛み」「良心の呵責(かしゃく)」と判断します。そうすると、悪いことはしてはいけないと考え、カンニングを思いとどまります。
一方、偽薬を与えられ、薬のせいでドキドキすると伝えられた人たちは、自分のドキドキを薬のせいだと考え、良心の呵責を感じずに、カンニングを実行してしまったわけです。(情動二要因説)
カンニングや万引き時のドキドキする感覚を、良心の呵責と考えられれば、行動にブレーキがかかりやすくなるでしょう。これを、「スリル」などと感じてしまえば、不正は実行させるでしょう。また、不正行為も繰り返すうちに興奮、ドキドキが減少してくると、心の痛みをあまり感じずに、実行できるでしょう。
スリルを楽しんでいる人あならば、もっとドキドキできる行動に移っていくでしょう。

インターネットを使ったカンニング

 インターネットを使った不正、犯罪行為は、今も大きく報道されやすいと感じます。インターネットを使った犯罪行為は、一般的に犯罪への敷居が低くなりやすいと言えるでしょう。
面と向かって人の悪口を言ったり、対面して詐欺をはたらくよりも、ネット上での名誉棄損や侮辱罪的行動、ネットオークションを使った詐欺行為などは、ずっとやりやすいでしょう。
人は匿名になると、悪いことをしやすくなるのです。また、ネット上の犯罪は、様々な意味でコストが低いと感じられることでしょう。「なりすまし」も簡単にできてしまいます。
インターネット上での不正な情報のやり取りは、さらに罪の意識が低いでしょう。青少年たちの中には、ネットの不正ダウンロードを使って映画や音楽を楽しんでいる人たちがたくさんいます。
インターネット上には、レポートや、宿題の解答が有料、無料で、たくさんあります。定番の課題の解答は、あちらこちらにありますし、「こんな宿題がでました。教えてください」と言えば、すぐに教えてもらえます。教えれ方が、「参考にしてください」と言っていても、教えられた方はそのまま全文を提出する人もいるでしょう。
インターネットを介したカンニングは、中国、韓国、アメリカ、そして2011年には日本の京都大学の入試でも見られました。大人から見れば、驚くようなことでも、現代の青少年にとっては、むしろなじみの方法だったのかもしれません。
*インターネットでのトラブルを防止するためには、インターネット・ネットコミュニケーンにはどんな特徴があるのかを理解し、教育していく必要があると思います。→インターネット心理学(心理学総合案内こころの散歩道)

試験監督の心理:定期試験の場合・入学試験の場合

本気でカンニングを摘発しようとすれば、いろいろな技があります。複数の試験監督が不規則に試験会場内を静かに歩き回る。受験生の後ろ側から歩いて行くが、ときどき、くるっと振り返る。怪しい学生のところを、重点的に監視する、などです。
ただし、教育現場では摘発が目的ではありませんので、カンニングをしくい雰囲気を作り、怪しい学生に対しては、じっとみつめるなど心理的プレッシャーをかけ、カンニングを防止することの方が、重要でしょう。
(現在私自身が大学内で定期試験を行う際には、「教科書・ノート持込み可」として、カンニングを無意味化しています。)
しかし、入試の場合は、事情が違います。必要以上の緊張感を受験生に与えませんし、ましてや特定の受験生をにらみつけることなど、なかなかできないでしょう。入試では、原則として受験生全員を公平に扱わなければならないからです。
また、入試は小さなカンニングペーパーで点数が取れるようなものではありませんし、さすがに入試でカンニングの様な大それたことをする人はいないだろうと、
油断してしまうことも、ないとはいえません。
→入試で「監視がない」と思われる理由:試験監督の体験から:京都大学入試問題ネット投稿問題(こころの散歩道ブログ版)

入学試験でのカンニングの防止と今後の対応

入学試験においても、インターネットやハイテク機器を等を使った有効なカンニング手法があるし、実際に入試でもカンニングを実行する人はいるのだと、認識を新たにしなければならないと思います。そのうえで、カンニングをしにくい状況を作り出す工夫が必要です。カンニング行動への心理的コストを高くするわけです。
カンニングも、万引きも、一見するとできてしまうとおもえることもあるでしょう。しかし、ひとたび発覚すれば大変なことになります。
大学における「入学試験」は、大学における一大イベントです。普段は面倒なことはあまりしない大先生も、入試にはいらっしゃるように、入試は実際に重要なことであることに加えて、厳粛なものとも言えるでしょう。
カンニングをする受験生の中には、軽い気持ちでカンニングを実行する者もいるかもしれんません。しかし、そのカンニングが発覚したときの大学側の怒り、義憤は、若い受験生の想像以上だと思います。大学の「根幹を揺るがす」といった表現がなされ、徹底的に解明するためならというわけで、2011年の京都大学も警察力まで使いました。
カンニングは、大ごとなのです。
ということを、ぜひ受験生には理解してもらいたいと思います。
ネット上の匿名の行為も、警察が介入すれば、すべてが明るみに出ます。ネット上の不正行為も、ネットユーザーが思っているほど、簡単なものではないのです。
現在、青少年の凶悪犯罪は長期的に見れば、減少しています。その一方、不良少年ではない普通の少年たちが、タバコ、万引き、自転車泥棒などをすれう例が増えています。小さいと思えること、みんながしていると思えることでも、悪いことは悪いことだという教育が必要でしょう。
非行少年に関する調査によると、彼らも「悪いことをして罰を受けないようにしよう」とは思っています。しかし、違法行為をする少年は、「だからばれないようにしよう」を考えてしまうようです。罰は必要ですが、罰がるから不正をしないのではなく、悪いことはしてはいけないという自律的な道徳心を育てていきたいものだと、感じています。 ツイートする
犯罪心理学:こころの闇と光(こころの散歩道)
少年犯罪の心理学、非行の心理(こころの散歩道)

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碓井真史著『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』 碓井真史著『嘘の正しい使い方:ホンネとタテマエを自在に操る心理法則』    「ふつうの家庭から生まれる犯罪者」  

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