心理学総合案内「こころの散歩道」/やる気研究所/内発的動機づけ1

内発的動機づけ 1

人間はなまけものか

理想の楽々バイト?

 あー、仕事もいやだ、勉強もいやだ、人間関係もわずらわしい。何もかも面倒くさい。毎日ごろごろして生きられれば、最高なのになあ。

 こんなふうに思うときがあるでしょうか。では、実際に試してみましょう。

 アメリカで行われた実験です。まず、実験に協力してくれる学生を募集します。かなり高額なバイト代を出します。やるべきことは何もなし。三食昼寝つき、ただごろごろしていればOKです。何日続けてもけっこうです。

 さあ、あなたならどうですか。

 学生の中には、休み中ずっとこのバイトをしてクルマを買おうなんて考えた人もいるようです。

何日でもやって、がっぽり稼ぐぞー!

仕事の中身は? 何もなし

 何もやらなくてもいいという仕事ですが、何もできないようになっていました。手は筒をつけられ、物をつかむことはできません。目にはくもりガラスのメガネ。ものが見えません。意味のある音も聞こえません。部屋には窓もありませんし、訪問者もないし、もちろんテレビも雑誌もありません。

 食事とトイレのときだけは、筒もメガネもはずしてもらえます。

 まあ、あまり楽しそうなバイトではありませんが、お金がもらえるのですから仕方がないでしょう。高額の報酬と、食事と、安楽な状態。もしも、人間が必要がなければ動かないなまけものだったら、この状態をいつまでも続けるはずです。

かんべんしてくれー

 さあ、金儲けするぞーと意気込んで始めた学生たち。ところが、ほとんどの学生は2、3日ももたず、根を上げてしまいました。
 もっと、体を使い、頭を使い、気を使う仕事で、もっと給料が低くてもいいから、お願いだからこの仕事だけはかんべんしてくれと言ってきたのです。
 学生たちは、最初は昼寝をしたり、歌を歌ったりしながら時間をつぶしていましたが、いつまでもそんなことばかりはしていられません。
何もやることがない、究極の退屈を味わった学生たちは次々とリタイアしていきました。

退屈、たいくつ、タイクツ

 それでも少数の「豪傑」は、数日間、この状況をがまんしました。すると、幻覚が見え始めたといいます。別に精神に異常をきたしたわけではないのですが、ありもしない幻が見えるのです。最初は、このめずらしい現象を楽しんでいたのですが、だんだん、このコントロールできない幻覚は苦しくなってきたようです。
 必死になって退屈と戦っている学生に、少しだけメガネをはずして、電話帳を与えてみました。すると、特に目的もないのに、電話帳をむさぼるように読み始めました。
 また、ラジオを渡して、株価情報を聞かせたところ、株に興味があるわけでもないのに、社名と数字が延々とと続くだけの放送を一生懸命きいたというのです。
 人間にとって、退屈は耐えられない、なにか刺激がほしい。何か見たい、聞きたい、何かしたいのです。

人間はなまけものか

 この実験は、人間が決してなまけものではないことを示しています。食べ物やお金が与えられれば、もう何もしない、なんなことはないのです。人は、何かをしたいと感じます。
 このように、何かをしたいという思いを、内発的動機づけと名づけました。
 人はたしかに、お金のため、食べ物のために働きますが、それだけでは満足できないのです。
***
大金持ちの息子
 以前出会ったある学生です。

 お父さんは大金持ち。いくつも会社を経営しています。学校を出れば、高給の重役の椅子が待っています。仕事は特にしなくてもいいそうです。地位とお金だけもらって、あとは自分の趣味の生活をすればいいそうです。その趣味の生活のためにも、お父さんはたくさんのお金を用意していたようです。
 どうでしょうか。リストラや就職難で困っている人から見ると、まるで天国のような環境でしょうか。彼ほどの幸せ者はいないでしょうか。
 しかし、その学生は、親の悪口を言いながら、だらだらと精気のない生活を送っていました。ちっとも幸せそうには見えませんでした。
何か面白いことないかな
 「何かおもしろいこと、ないかなあ、」 中高生や大学生がよく言っています。でも、ここでいう何か面白いことというのは、家でゴロゴロしながらテレビをみるような、面白さではありません。
 何か、もっとやりがいのあること、興味の持てること、夢中になれることを、彼らは探しているのです。一見、無気力でやる気がなさそうに見える青少年も、とりあえず衣食住の心配がないのでのんびりしているのでしょうが、決して満足しているわけではないのです。
 何かがしたい。彼らにも、満たされていない内発的動機づけがあるのです。
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