やる気を育てる親、やる気を奪う親、やる気奪う上司
心理学総合案内「こころの散歩道」/やる気研究所/達成動機2

達成動機2:やる気を育てる人・やる気を奪う人

子どもや部下のやる気と親、上司の態度

やる気を育てる人

 ある研修会に招かれた講師。ずいぶん、ぎょうぎょうしい会で、偉い人たちがズラリと壇上に上っています。講師は、フロアの聴衆に向かって「みなさんの心が燃えていないのは、」と言うと、くるりとお偉いさんの方をふり返り、「それは、この人たちが燃えていないからです!」

 たしかに、上司のやる気がなくちゃあ、下の者だってやる気は出ません。「やってられないよぉ」と思ってしまいます。やる気のないコーチはやる気のない選手を生み、やる気のない教師はやる気のない生徒を生むでしょう。そして、やる気のない親は、やる気のない子を育てます

 ネコはネズミを捕ってくると、ご主人様にほめてもらおうと思って獲物のネズミを見せに来ます(最近のペットネコはダメですが。それにネズミなんか持ってきたら叱られちゃうでしょう)。

 人間の子どもだって、何かが「できた!」と思ったときや、「わかった!」と思ったときは、親のところへやってきます。「ねえ、ねえ、ねえ、見て、見て、見て!」って、言ってね。

 親は内心「うるさいなあ」などと思いながらも、子どもの作ったものを見たり、話を聞いたりして、「ほー、こりゃすごい!」と大げさにほめます。別に演技をしなくても、我が子の作品やアイデアの素晴らしさにびっくりすることはあります。

 たいての親は、この子は天才じゃあないかしらと思うときがあります。まあ、親バカなんですけどね、でも、いいと思います。子どもは、やった!と思っているのですから、親も、すごいなあ!と応答する。それでこそ、子のやる気も育つのです。

 親や、上司、社長など、指導的立場の人自身が、高い達成動機を持ち、何かをやり遂げることに価値を感じている。それで、下のものが目標を目指して頑張っているのを応援し、成し遂げたときには、心からの賞賛を送る。こういう人が、やる気を育てる人です。

 やる気の高い人がやる気を育て、やる気のない人は、他の人のやる気まで下げてしまいます。


やる気を奪う人

 やる気のない人は、人のやる気を育てません。でも、少し違うケースでやる気の育っていない人もいます。

 ボケーとして、ぜんぜんやる気がないなあ、こいつは。などと思う学生の親に会ってみると、これが以外とやる気満々の親だったりします。実にしっかりした親です。会社を経営しているお金持ちの父親だったり、市民運動や文化活動に燃えている母親だったりする、りっぱな親御さんです。

 そうすると、子どものやる気も高くていいはずなのですが、その逆なんですよねえ。実は、心理学の研究でも、そんな研究があるのです。

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達成動機の研究から:やる気を奪う親

 親の達成動機が高いと子の達成動機も高くなります。ところが、親の達成動機が高すぎると、子の達成動機が低くなることがあるのです。

 子どもが積み木を3つ積み上げて、「見て、見て!」と言ってきても、「なんだ、たったの3つか、隣の子は5つできるぞ!」ってなことになってしまって、子どものやる気を奪ってしまうことがあるのです。

やる気を奪う父親

 自分が、やる気満々で、確かに能力もあって、一代にして大きな会社を作った。そんなお父さんが、自分の子どもが普通にやっているのを見ると、なんとも歯がゆくて仕方がないのです。俺の子ならもっとできるはずだ、俺はもっと努力してきたぞ、と思うのです。

 怒鳴られ、怒られ、バカにされるたびに、子どもは小さくなっていくでしょう。

やる気を奪う母親

 やる気満々のお母さんも同じです。自分の能力や、努力、充実した子ども時代と比べて、普通にやっている我が子がダメな子に見えてしまうのです。

 場合によっては、子どもがせっかく自分でやっていることに手を出してしまうこともあるでしょう。お母さんが手伝えば、りっぱな作品が仕上がるかもしれませんが、せっかく子どもが努力して達成の喜びが得られるチャンスを奪ってしまうのです。

やる気を奪う上司

 やる気一杯の上司が、普通の部下を「やる気がない!」と叱咤激励する場合も同じでしょう。自分は確かに能力があって、とても頑張ってきた。その結果、普通の人の普通の成果を認めたてあげられないことがあります。

管理職になるような人は、強いプレッシャーをはねのけてきました。そうすると、部下にも同じようなプレッシャーをかけてしまう上司がいます。しかし、そんなプレッシャーに耐えられない部下は、委縮する一方でしょう。

部下や子どものやる気を奪わない上司や親のやる気

 では、やる気がとても高い人は、みんな人のやる気を奪ってしまうのか。もちろんそんなことはありません。その話は、また後日。・・・・「内発的動機づけ」の高い親は、高すぎるからといって子どもや部下のやる気を下げません。

2000.10.26

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やる気を育てる―子どもの成長と達成動機 (有斐閣新書) 』
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