ドラマで学ぶ虚言癖の心理
「心の散歩道」(心理学総合案内)/「心療内科医・涼子」から学ぶ心理学/虚言

虚言する女
虚言癖

第2回 97.10.20

「あなたは一人じゃない」

ゲスト・クライエント篠原涼子

心の問題:虚言癖・自己顕示......

用語解説

虚言癖、リストカット・インテーク面接......


あらすじ

 妻子ある男性との関係がこじれた花岡キヨノ(篠原涼子)は、手首を切って(リストカット)自殺を図る。涼子(室井滋)の病院に入院したキヨノは、優しい家族がいて、婚約者がニューヨークにいるなど、幸せで裕福であるというウソと演技をし続ける(虚言癖)。

一方、キヨノは、原因不明の腹痛を訴える。これは、1年前に人工中絶したことから来る「想像妊娠」らしい。キヨノは、ぬいぐるみの熊を自分の子供のようにかわいがっている。

病室に、男がやってきた。だが、話は別れ話。キヨノは、取り乱して、病院を出た。そして男の子供を連れだした。涼子 が駆けつけたとき、もみ合う中で、ぬいぐるみが海へ落ちた。 海に身を投げようとするキヨノを止め、涼子が海に飛び込み、ぬいぐるみを拾い上げる。

涼子は、キヨノを抱きしめて言う。「あなたは一人じゃないよ。」

ぬいぐるみは単に子供の変わりではなく、キヨノ自身を表していた。
心療内科でのキヨノの治療が始まり、キヨノの心も徐々に癒されていく。そして、「自分を認めて、赦せる日が来れば......」


この場面・このセリフ

キヨノに殴られる涼子

 人間は、意外と力があるものです。普段は、遠慮したり、無意識のうちに力を押さえているのですが、この場面のように、周りの状況が見えなかったり、心理的なパニックに陥ったりすると、びっくりするほどの力を出すことがあります。「火事場のばか力」というのも、実際にあるようです。精一杯力を入れているときに、さらに「ヨイショ!」とかけ声をかけると、その瞬間、もっと力が出ます。ただ、いつもこんな力を出していたら、体がまいってしまうので、人間は自然と力を抑えてているようです。

白衣(「仕事をするのに、何で脱ぐんですか!?」)

 ユニフォームは、自分の意識を高め、自分の役割(仕事)を自分にも、周囲にもはっきりさせます。しかし、場合によっては、「権威の象徴」となることもあるでしょう。涼子がどこまで意識して行動しているかはわかりませんが、患者と対等に話そうと思うとき、白衣を脱ぐのは、理解できます。

「体で話そうとする」

 明るく振る舞っているキヨノ。しかし、その言葉だけではなくて、身体全体を良く見る必要があると涼子は言います。「言葉」ではどんなことでも言えます。私はあなたを前にして「愛している」とも「大嫌いだ」とも言えます。でも、あなたは私の表情や目を見て、それが本当かどうかを判断するでしょう。


 私がある人と面接しているときです。とても明るく話しているその人の手を見ると、プラスチック製の小物を変形するど強く握りしめていました。言葉の内容ではわからない、その人の緊張がわかりました。

「つらいね」

 キヨノが話した事への涼子の応答です。常識や自分の道徳観、価値観に反する話をされたとき、人は反発して、反論したり、お説教をしようとします。ときには説教も必要でしょう。しかし、カウンセラーや心療内科医にとって必要なのは、むしろ共感と受容です。非難よって人が良い方向に変わることはまれでしょう。

「私たちの仕事は、嘘をあばくことではなく、言葉の奥にあるものを感じ取ること。今は彼女の嘘を受け止めよう」

「どんなことを聞いても嫌いにならない?」

 キヨノが、うそをついたり、真実を話したり、真実をウソだと言ったりする場面でのセリフです。私達の心には、二つの思いがあります。自分を知ってほしい、でも知られたくない。助けてほしい、でも助けられたくない。なかなか素直になれません。本当の自分を知られてしまったら、愛されないのではないかと思っているからです。

あなたはウソつきではない。ウソがつけなかったから苦しかった」

 心の病を持つ人は、そのためにいろいろと人から非難されるようなことをしてしまいます。でも、たいていの人はもともととても真面目な人達です。いい加減にごまかすことができないからこそ、心が病んでしまうとも言えるでしょう。

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ウソの心理学、嘘の心理学(こころの散歩道)

「あなたは一人じゃないのよ」

 今週のキメのセリフです。人間の不安のもとは、自分が見捨てられるのではないかということです。誰にも愛されないことは、我慢できないほど、辛いことです。それを防ぐためなら、人はどんなことでもやります。

 人に好かれようとするのは、普通のことです。しかし心が病むほどにその思いが強くなってしまうと、自分をダメにするようなことをしても、愛を得ようとします。でも、大丈夫。あなたは一人じゃない。あなたからどんなことを聞いてもあなたを嫌いにならない人は、きっといます。あなたは一人じゃない。


ドラマにちょっとひとこと

 第1回目も、第2回目も、ゲスト・クライエントが犯罪的な行為をします。ドラマを盛り上げるためには必要なのかもしれないけれど、心の病への偏見をかえって強めないかと心配です。


用語解説(虚言癖、リストカットなど)

心療内科医・涼子 NO.3 家庭内暴力へ進む

BOOK:『心療内科医 涼子』(ドラマから生まれた小説)
DVD:『心療内科医・涼子』DVD 1〜4(全話収録)
MUSIC:『心療内科医・涼子』の曲 (主題歌など)

☆ ネ ッ ト で D V D レ ン タ ル ! ☆ T S U T A Y A  D I S C A S ☆

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