ドラマで学ぶ共依存の心理
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「盗食する 女」
共依存・過食・兄弟姉妹の問題

第1回 97.10.13


「あなたも叫びなさい」

「気づいてよ!」「私はここにいる!」「私を愛して!」


ゲスト・クライエント麻生祐未藤田朋子

心の問題:過食, 共依存,共生関係, 暗闇恐怖症,自殺......

用語解説

心療内科,クライエント,HTPテスト(家と木と人の絵),箱庭療法,逆転移....


あらすじ

 明邦大学付属病院・心療 内科。“暴走特急”の異名をとる心療内科医・涼子(室井滋)、研修医の飯島武(河相我聞)、医局長の杉本(寺脇康文)、看護婦長(萬田久子)らのところへ、ケガのために有名な料理研究家の市枝都(麻生祐未)が入院してくる。だが、都には、自分では抑えきれない過食(大食)があるようだ。都の妹の伸子(藤田朋子)は、姉を気遣いながらも、どこか不自然に都に寄り添っている。

 都は自分の欲望を抑えきれず、病院の冷蔵庫の食品を盗み食いし、さらに食堂の残飯を食べる。涼子に目撃された都は、取り乱しながらも自分の病気を認める。しかし、妹の信子は都を無理矢理退院させ、生番組に出演させてしまう。都は、出来上がりの料理を本番前に全部食べてしまい、番組を台無しにしてしまった。

 都は病院に戻り、涼子に話す。妹の信子と自分の婚約者がキスをしているのを見てしまった、その時から盗み食いが始まったと。

涼子は、都の病気を「共依存」と診断する。妹の信子と互いに必要以上に頼り合い、自立できない病的な「共生関係」が病気の基だった。

 二人は、一心同体の関係で育ってきた。しかし、心の奥底で、都は優秀な妹信子への憎しみをも持っていた。涼子との面接の中で、その感情に気づき、その感情を吐き出せたとき、都は自立を目指し、快方へ向かっていった。

 しかし、問題なのは、信子のほうだ。信子のマンションに行った涼子は、真っ暗な衣装部屋に閉じこめられてしまった。信子は涼子がアゴラフォビア(暗闇恐怖 症)だと知っていたのだ。

 駆けつけた杉本に助けられた涼子は病院へ戻る。刃物を持ち、お姉ちゃんに捨てられたと取り乱す信子を抱きしめ、涼子が叫ぶ。

「あなたも叫びなさい」「私はここにいる!」「気づいてよ!」「お姉ちゃんのついでなんかじゃない!」「私を愛して!」「私はここにいる!」

信子はやっと自分の問題に気づく。自立して「自分」の幸せを求めてもよいと気づく。「さよなら、お姉ちゃん。」

* * * *

「人間は弱いけど強い」「死にたいけど生きたい」


この場面・このセリフ・この設定

「〜そんなレッテル張られて....」

 料理研究科が拒食症などと知られたら、仕事ができなくなるというセリフです。心の病への偏見と差別は、残念ながらまだまだ根深いものがあります。恥ずかしい病気であり、人から責められてもしょうがない病気だと思われています。でも、そんなことはありません。病人に必要なのは、非難ではなく、治療と理解と援助です。ドラマとこのサイトを通して、あなたの心が癒されるとともに、心の病への偏見が減ることを願っています。

「病気のせいなの」

 めちゃくちゃな行動をとる都のことをこう説明しています。身体の病気で、せきやくしゃみをしても、その人を責める人はいないでしょう。病気のせいだからです。心の病気も、同じです。

患者(クライエント)からの攻撃

 人から責められたり、非難されたりすれば、つい言い返したくなります。心の悩みを持っている人達が、援助しようとしている人達に、かえって悪態をついてくるときがあります。そんなとき、その悪口に巻き込まれてしまえば、お互いに不幸です。

 信子に「何も知らないくせに」と言われた涼子は、言い返したりせず、さらりとかわして自分の仕事を始めます。これが援助者の態度です。ただ、その前のシーンで、都に「ブス」といわれた涼子は、まるで口げんかを楽しんでいるように言い返します。これは、攻撃に攻撃を返しているのではなく、都からの悪口をうまく活用して、都に接近しているわけです。涼子らしい高等テクニックですね。

感情を吐き出す

 都が信子への憎しみをぶちまけるシーン。信子が「私を愛して」と叫ぶシーン。どちらも、これをきっかけに治療が進みます。
 心の中には、いろいろな思いがあります。自分自信で認めたくない思いもあります。そんなとき、人はその思いを「抑圧」し、そんな思いがあることを自分でも忘れてしまうことがあります。その心の奥底のゆがんだ思いが心の病の原因になることがあります。その抑圧された感情に自分で気づき、感情を出すことによって、心が癒されることもあります。
「あなたも叫びなさい。」

涼子の暗闇恐怖

 精神分析で有名なフロイトは、「広場恐怖」でした。そんなところから来た設定でしょうか。

「気づいてよ!」「私はここにいる!」「私を愛して!」

 今週のキメのセリフです。人は一人では生きていけません。無視されることほど、悲しいことはありません。ふりむいてほしい、愛してほしい、そんな思いを素直に口にできる人は、心の病にはなりません。でも、人はなかなか素直になれません。あきらめて黙ってしまったり、愛してほしい気持ちをゆがんだ行動に現したり、愛なんかいらないと強がったりします。

 でも、あなたも愛されています。あなたも愛されていよいのです。あなたも、愛してほしいと叫んでよいのです。私を無視しないで! 私を愛して! 私はここにいる! きっと、あなたの叫びに答えてくれる人がいます。
「私はここにいる!」


ドラマ

 室井滋は、名脇役だと思っていましたが、主役を張ってもなかなか見せてくれますね。もっとも、涼子が都にサインをせがむシーンで、「さらさらっと左手でも......」なんていう軽い演技は、室井滋らしくて、やっぱり絶品ですね。もう、みてて楽しくなっちゃいましたよ。(あそこはアドリブかな。)

 たくさん食べるシーンというは、大変です。NGなんてだしたら、ほんとに大変。(NGはなかったそうです。)

 信子が叫んで泣くシーンで、鼻水が出ていました。ぐしょぐしょに泣いているのですから、当然です。でも、女優さん達は少しでもきれいに撮ってもらおうとします。それで、瀕死の重病人でも、きれいに頬紅が入っていたりすることがあります(真面目に演技しろ!)。鼻水流して泣いてくれたりすると、きちんと演技してくれているなあと好感が持てます。

 レギュラー陣の中では、やっぱり、室井滋と萬田久子の二人のシーンが一番安心して見ていられました。それにしても、登場人物は、みんな善人ですね。もう少し、無理解で、涼子と本気で対立する人がいてもいいと思うのですが、あまりドラマを堅くしたくないのでしょうか。

 心の病を扱うのですから、かえって暗い雰囲気にはできないのでしょうね。コミカルな始まり方をしたのは、それはそれで言いと思います。これからも、コミカルな中にも、いい意味の緊張感のあるドラマづくりを期待しています。

(このサイトでは、基本的にドラマを応援する立場で、ページを作っていきたいと思っています。でも、ひとこと。最後の場面で、車椅子に乗った信子が人知れず都の結婚式を見ています。けれど、あんなに近くにいたら、誰かに気づかれちゃうんじゃないかな。もう一工夫ほしかった。まあ、でも、単なる過食症ではなくて、ひねりを加えた脚本で、第一回目スペシャル版の意気込みを感じました。スタッフ、出演者のみなさん、毎週見ますから、よろしくね。)

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BOOK:『心療内科医 涼子』(ドラマから生まれた小説)
DVD:『心療内科医・涼子』DVD 1〜4(全話収録)
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