心理学 総合案内 こころの散歩道 (心理学講座)/癒し・臨床心理学

「愛子さま“乱暴”で通学できず」から学ぶ
不登校の心理学

愛子様が不登校?

2010.3..5(金)の報道によると、皇太子ご夫妻の長女で学習院初等科2年生の愛子さまが、今週に入り、通学時に強い不安感と、腹痛などの体の不調を訴え、学校を休まれているということです。「乱暴な子」が複数いるということが、原因と見られています。愛子さま自身が暴力などをふるわれたり、いじめられたりしているわけではななさそうです。

登校時の頭痛、腹痛、吐き気などの体の不調と不登校

登校する朝。子どもが突然頭痛、腹痛、吐き気などを訴えたら、親ならみんな心配します。様子を見て休ませたり、病院へ行くでしょう。体の不調があれば、もちろんまず病院です。
病院で何か体の病気が見つかれば、普通に治療を行うわけですが、体の病気が何も見つからないことがあります。あるいは、頭痛腹痛などが、今日は学校を休むと決めると、治っていくことがあります。あるいは、土曜日や日曜日には全く症状が出ないことがあります。
こうなると、体の不調は内科的な病気ではなくて、心の問題かと考えます。これは、決して仮病ではありません。本当に痛いのです。子どもによっては、もどしたり、下痢になったり、熱が出る子もいます。子どもは、本当に苦しがっています。

登校しぶりと不登校

このような体の症状が出る前に、もしかしたら「登校しぶり」があったかもしれません。朝なかなか起きてこなかったり、着替えなかったり、ぐずぐずしている印象です。このような段階で、何かあるのかと「サイン」として受け止められると良いのですが、なかなかできないでしょう。
がんばって学校へ行かせます。学校に行きつづけても問題が解決しないと、次第に心が苦しくなり、心の苦しみが体に現れると、朝の登校時の頭痛、腹痛になります。
子どもの場合、大人以上に、心の問題が体に現れるのです。

不登校への解決方法と逆効果

小学校低学年の場合、登校をしぶる子どもを、担任が抱きかかえ、すっと教室に入れてしまうと、それで問題が解決してしまうこともあります。中学生ではそうはいきませんが、登校しぶりの原因がそれほど複雑で大きくない時には、そんな時もあるのです。
しかし、いつもそれでうまくいくわけではありません。
泣きじゃくる子どもを、親や先生が力づくで教室へ入れることを無理に続けてしまうことは、逆効果でしょう。学校や教室が恐ろしいところだと、心に刻みつけてしまうようなものだからです。

学校と相談しよう

問題解決には、関係者一同の信頼関係と協力体制が必要です。どんなことでも、単純な一つの理由で事が起こることはないでしょう。学校や家庭で、その子の心の中で、何かが起きています。
その子の周囲の人たちが情報を持ち寄り、解決を考えましょう。
今回の場合は、「乱暴な子たち」の存在が一つの理由のようです。

乱暴と不登校

「乱暴」は、自分を殴ったり、突き飛ばしたりされることだけではありません。その子にとって何が乱暴と感じるかは、人それぞれです。
子どもはだいたい乱暴なものです。大声で騒ぎ、廊下を走り、大人の世界だったら暴言といえるようなことを平気で言います。乱暴な遊びもします。
同世代の子どもの乱暴な世界で、一緒に遊べる子どもは良いのですが、驚いてしまう子もいます。もともと、大きな音や、激しいことが苦手な子もいるのです。
環境の違いもあるでしょう。大声に慣れている子もいれば、慣れていない子もいます。子どもの中には、自分ではなくて他の子が先生に叱られているのに、その叱りつける声におびえてしまう子もいます。
教室に入りづらい子のタイプとしては、めずらしくありません。

乱暴な子

その年齢として標準的な乱暴さが、ある子どもにとっては激しすぎる乱暴さに感じられることがあります。
また一方、標準的な程度を超える「乱暴な子」も増えています。昔のいじめっ子や、番長の様な子は減っていると思いますが、落ち着きのない子や、ルールが守れない子どもは増えているように思えます。
今回の場合がそうだということではありませんが、学級崩壊や、経度発達障害の問題等は、よく見られることです。
今回、具体的に何が起きたのかは良く分かりませんが、やや乱暴な子たちによって、やや繊細な子たちが、驚いたり、傷つくことは、良くあることでしょう。

不登校とは

不登校とは、「何らかの心理的,情緒的,身体的,あるいは社会的要因・背景により,児童生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況にあること(ただし,病気や経済的な理由によるものを除く)」ものです。
学校基本調査では、上記のように病気や経済的理由ではなくて、30日以上欠席している児童生徒を「不登校」としています。
調査によれば、12〜13万人の不登校の子どもがいます。
体調不良で学校を欠席する場合は、病欠となりますが、今多くの学校で理由を問わず3日程度の欠席が続くと「早期対策」をとるところが増えています。
本当にカゼなどの理由なら良いのですが、「病欠」の中に不登校の始まりの子もいるからです。
今回の愛子さまの場合、早めの対策がとれたことはよかったと思います。

具体的問題が解決されても

たとえば大声を出す子やケンカをする子がいて、別の子が不登校になったとしましょう。学校の指導により、乱暴な子が静かになったとします。そうすれば、問題解決ですから、不登校も解決するかというと、そうはならないこともあります。
客観的にみれば問題は解決なのですが、私たちの心はそれほど簡単ではありません。恐怖や不安が染み付いてしまうことがあるからです。
理屈では怖いことはないと思っても、一度怖い思いをした場所に近づくと、恐怖や不安が襲ってくることがあるのです。
どんなに大丈夫だと説明されても、怖いものは怖い、不安なものは不安なのです。
こんなときには、無理をしないで、一歩、一歩です。
あるいは、
問題が解決されたと思っても、その「問題」は単なるきっかけににすぎず、別の問題が潜んでいることもあります。だから、当初問題とされていたことが解決しても、不登校が解決しないこともめずらしくありません。

子どもが幸せになるために

一番大切なことは、子どもの幸せです。そのためには、子どもを責めない、親を責めない、学校を責めないことが大切だと、私は思います。誰が悪いかと犯人探しをするよりも、協力し合ったほうが効果的ではないでしょうか。
学校に行けない理由が具体的にあり、その理由が解決できればよいのであれば、そうしましょう。しかし、それほど単純でない場合もあります。そんなときには、いつまでも「どうして学校へ行けないのか」と悩むよりも、「どうしたら学校へ行けるのか」と考えましょう。
そして、いずれにしても(学校に行くにしてもいかないにしても)、その子ども自身が幸せになれるように、大人たちが子どもを支援していきましょう。

不登校と家族と私たち

不登校がどんなに多いと言っても、自分の家庭に起きるとは誰も考えます。そんなことが起きれば、ほとんどの場合、家族の中に嵐が吹き荒れます。夫婦が不仲になることもあります。犯人捜しが始まります。子どもはさらに不安定になります。
しかし、その嵐を乗り越えると、家族みんながすばらしく成長するでしょう。
子どものことで一番悩むのは、お母さんです。皇太子妃雅子様は、体調がすぐれない部分もありますから、心配です。特別に有名な御家族ですから、このようなプライベートなことが「ニュース」になってしまいます。
子どもを親が支え、親を他の家族が支え、家族を学校や社会が支えなければなりません。
学校の担任が子どもや保護者を支えますが、その担任を学校が支えなくてはなりません。学校を社会が、私たちみんなが支えなくてはなりませせん。
雅子妃の適応障害診断報道の時も同じことを思いましたが、私たちは、この困難の中にある人を支えることがができるのか、問われていると思います。
(「乱暴な子」とされた子どもと家族も大きな困難の中にあると思います。支えが必要なのは同様です。)

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