心理学総合案内「こころの散歩道」/マインドコントロール研究所 / オウム / 法的責任
マインドコントロールの問題を中心に、判決理由(要旨)を見てみましょう。
【殺意の存否】
殺意は存在した。
【マインドコントロールの影響】
弁護人は、犯行はマインドコントロール下で、被告は心神喪失または心神耗弱(こうじゃく)の状態にあったと主張する。しかし、犯行時、被告人は通常の人間の感情を持っていた。
これは、被告が松本の単に手足となっているにすぎないという領域を越え、固有の意思や思考を持っていた証拠である。被告は犯行の中で冷静な態度をとっている。また、自己の行為が犯罪行為にあたることを自ら認めており、犯行当時、被告は行為の是非善悪を判断していた。
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(私の意見)
マインドコントロールされていたって、普通の感情は持ちます。自分の意思や思考も持ちます。自分の行為は違法かどうかもわかります。だからマインドコントロールの影響下に無かったとはいえません。でも、そうなると、法的には心神喪失や心神耗弱とは言えませんよね。
違法だとわかっていても、教祖や組織のためならば、それは良いことだと思ってしまうのです。
【量刑の理由】
犯行は、犯罪史上類を見ない卑劣かつ残虐な犯行である。被告の担当した車両からは死者は出なかったが、犯行全体の中で、重要な役割を果たした。
弁護人は、マインドコントロール下にあった被告が松本智津夫被告の指示に抗し難かったこと主張する。
しかし、松本被告が説く教義や修行内容はポアと称して殺人を犯すものまで含まれ、銃の製造など、大きな反社会性を持っていた。
被告は自分の判断と意思で教団にとどまり、ついに地下鉄サリン事件を迎えたのであって、いわ ば自ら招いた帰結だ。
被告が松本や故・村井秀夫元幹部の指示に抗することは心理的に困難だったことは否定できない。
しかし松本が述べる教義や修業の内容は、荒唐無稽(こうとうむけい)で、普通の人であれば、松本やオウム教団の欺瞞性(ぎまんせい)、反社会性を見破ることができたというべきだ。
犯行の罪質、動機・目的(松本の指示を絶対視した組織防衛)・犯行態様の悪質性、結果の重大性、遺族の処罰感情、社会に与えた影響、各犯行で被告が果たした役割の重要性、犯行後の諸事情等に照らすと、刑事責 任はあまりに重大だ。
被害者支援基金に300万円をなど、これらを最大限に考慮しても、被告には極刑をもって臨まざるを得ないと考える。
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(私の意見)
教祖の命令に逆らえなかったことは判決でも認めています。これは、私も同意見です。
しかし、教祖の教えは、ばかげていて、普通の人ならすぐにおかしいことに気づくはずだ。それなのに、自分の意思で、教団に残り、犯行を犯した罪は大きいと判決は言います。
マインドコントロールを受けていれば、ばかげた理論も信じてしまいます。マインドコントロール問題が話題となる、統一教会やエホバの証人も、普通の人が普通の状態で見れば、おかしな教義やおかしな規則だとすぐにわかります。
宗教学者、神学者からみれば、明白な誤りがたくさんあるでしょう。組織の欺瞞性(うそ、いつわり)も、少し教えてもらえばわかります。
けれども、それがわからなくなってしまうのが、マインドコントロールです。「見破ることができたはずだ」というのは、江川紹子さんも述べているように、マインドコントロールの理解不足だと思います。
「自分の意思で教団に残り」というのも、同様です。確かに強制ではありませんが、真の自分の意思、自己決定ではありません。(とは言っても、この部分は、法的に言えば、やはり自分の意思ということになるでしょうね。)
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