心理学 総合案内 こころの散歩道/ニュース/ 横綱朝青龍門問題から学ぶ心の健康(新潟青陵大学:碓井真史)

横綱朝青龍問題から学ぶ
心の健康

癒しと社会的責任の心理学


神経衰弱・抑うつ状態・横綱が悪いか・横綱の資格・処罰・モンゴルへの帰国・病気が隠れみの・社会的責任・ASD・PTSD・心の病

2007.8.7(補足8.8.汗をかけば治る?
(コメントがテレビ朝日スーパーモーニング(8.7)で紹介されました)

ニュース「朝青龍問題」の流れ

 大相撲のモンゴル人横綱朝青龍(26)が、本場所での優勝後、腰、ひじなどの体調不良を理由に巡業を休み、モンゴルへ帰国した。ところが、モンゴルで元気そうにサッカーをする様子が放送されたために、非難が集中。日本へすぐに呼び戻され、処分を受けることに。2場所の出場停止、ならびに4ヶ月の謹慎処分で基本的には自宅や稽古場以外には自由に外出できないことになった。もちろんモンゴルへの帰国も許されない。
この処分が決定した後、朝青龍は心身に変調をきたしているという。まず、朝青龍の知り合いでもある「精神科医」が面談、次に高砂親方が面談、さらに相撲協会指定医の精神科医が診察したところ、やはり精神的に健康な状態ではないことが判明した。モンゴルへの帰国をすすめる意見もでている。
さて、ここで彼を病人として見て治療を優先すべきか、あるいは横綱としての責任や処罰中であることを重視すべきか、各方面から様々な意見が次々と出されている。(07.08.07)

最初の「精神科医」の見立て

最初に朝青龍と面談した「精神科医」は、「神経衰弱および抑うつ状態」と診断し、「うつ病の一歩手前。今のままなら3、4日で発症する。本人が望む最良の環境で休養するのが一番」と病状を説明しまいた。

神経衰弱とは

トランプの遊びで「神経衰弱」がありますが、病名としての神経衰弱は、年配の人ならなじみのある言葉でしょう。症状としては精神的な努力の後の身体的な衰弱、極度の疲労感、食欲不振、不眠、めまい、頭痛などがあります。心と体が弱っている状態ということで、ある時期はずいぶん使われた診断名ですが、最近ではあまり使われません(精神科領域の診断名は比較的よく変わります)。今から考えれば、様々な精神的な症状の総称といえるかもしれません。
ある精神科医は、この神経衰弱という診断を聞いて、この診断を下した意思はずいぶん年配の医師かと思ったと語っています。
ただ、精神科領域の診断名を本人に知らせたり、社会に発表したりするときには、複雑な問題がからむことがあります。決してうそをついたり、ごまかすわけではありませんけれども、必ずしも正確な名称を使うとは限らないこともあります。
また、何か正しくて正確かというのも、簡単にはいきません。アメリカの診断基準であるDSMと日本で伝統的に用いられてきた名称や分類が異なることもあります。
今回の「神経衰弱」という発表も、世の中の人にわかりやすくという意図で行ったのかもしれません。
この「精神科医」
一部マスコミは、この医師が精神科の専門医ではないと報じています。本人は専門医だと述べているようです。真偽はわかりません。また、横綱の知り合いということを問題視する意見もありました。

抑うつ状態

たぶん、抑うつ状態なのでしょう。そのように表現することは間違ってはいません。ただし、「抑うつ状態」は病名ではありません。熱があるといったことと同じで、それを確認することは大事ですが、原因、病名をさぐり、治療していくことが必要になってくるわけです。(うつの場合、なかなか簡単にはいかないのですが)

うつになるのは根性がないのか

横綱ともあろうものが、うつになるとは情けないといった意見もきかれます。しかし、どんなに強い人も病気になります。怪我もします。どんなに強い格闘家も、ナイフで刺されて亡くなったり、白血病で亡くなったりします。その人が弱いだめな人間だからではありません。
健康管理も、プロとしての責任だとは言えるでしょう。しかしもしも横綱がガンになったら、根性がないとか、健康管理がわるいといって、横綱を責めるでしょうか。どんな人も体の病気になります。そしてどんな人も脳の病気にもなる可能性があります。
もし「うつ病」だとすれば、それは脳の病気です。だから、脳の機能に作用する薬を服用することで症状は改善されます。
病人に必要なのは、非難ではなくて、治療と援助です。横綱でも、大臣でも同じです。
おそらく体の病気であれば、多くの人が賛同してくれるのでしょうが、脳(心)の病気になると、根性がないとか、精神がたるんでいるといった意見が出てしまうのは、それだけ心の病が理解されにくい病気だからでしょう。
うつは、もっとも他者からの理解を必要とする病気なのに、もっとも他者からの理解を得にくい病気だといえるでしょう。
うつ病の人との正しい接し方を、私たちみんなが理解することが大切です。

今の状態を招いたのは横綱自身だろう

たしかに、そうかもしれません。体の病気や怪我でも同じことが言えるときもあるでしょう。あなたがそんな食生活をしているから、あなたがそんな無謀な運転をしたからといって、責められることはあるかもしれません。でも、だからと言って、治療を受けさせてもらえにことがあるでしょうか。
骨折しているのに走らされたり、40度の熱があるのに出張に行かされることがあるでしょうか。原因は誰であれ、何であれ、まずは治療と援助が必要ではないでしょうか。

うつになるような人間は横綱にふさわしくない?

朝青龍は、きわめて強い精神力を持っていると思います。そうでなければ、一人横綱として横綱の責任を果たし、好成績を残せるわけがありません。強い横綱です。
しかし、それでも人は脳の病気、心の病気になります。どんなに強靭な体の持ち主でも体の病気になることがあるのと同じです。そして、スポーツマン、格闘家としての心の強さと、社会的な非難を浴び、人生をかけてきた仕事を奪われそうになっているストレスに立ち向かう強さとは、別問題でしょう。
たしかに、今の心が弱っている朝青龍の姿は、横綱らしくないでしょう。それは、今もし彼が体の病気で寝込んでいても同様です。
あるいは、旅客機の機長の視力が悪くなれば、それは機長としてふさわしくないといえるでしょう。
スポーツマンの体の病気も、機長の目の病気も、治ればどうでしょうか。一時期そのようなふさわしくない状態だったからと言って、治ったあとも復帰させないことが正しいでしょうか。
以前、木村拓也がパイロットを演じたドラマでもありましたね。事故のため視力が悪くなる。もちろん操縦はできなくなります。パイロットを辞めなくてはいけなくなる瀬戸際で彼の視力は回復します。厳しい検査と安全のための試験を通ったあと、彼はパイロットとして復帰します。
うつ状態であれば、闘争力もわきませんし、堂々とした態度もなかなかとれませんし、たしかに横綱らしくない状態でしょう。横綱にふさわしいとはとてもいえません。しかし、治れば、またもとの強さを取り戻せるはずです。一度でも打つになるような人間は、横綱失格であるとするのは、精神障害に対する偏見と差別の現われではないでしょうか。

処罰の途中なのに

彼は悪いことをして、その罰を受けている最中だというのに、彼の思い通りにしたりすれば、罰にならないだろうという意見も聞かれます。
しかし、刑事罰を受けて刑務所にいる人ですら、もしも入院治療が必要ということになれば、病院での治療をうけます。懲役刑を受けているのだからという理由で、病院での治療が受けられなかったり、どんなに重い症状での作業をやらせるということはないでしょう。
ただし、どんな病気でも、どんなに軽い症状でも、作業を休ませ、入院させろというわけではありません。刑務所であれ、その他の処罰であれ、総合的な判断ものと、当初予定通りの処罰を続けるか、治療を優先させるかをけめるでしょう。
心や脳の病気だけは話は別というわけではありません。

精神科医香山リカ氏のコメント

精神科医の香山リカ氏は次のようにコメントしています(8.6)。
「今回の重い処分や厳しい批判を受けた反応性のうつ状態ということだろう。針のむしろでストレスが多い環境が、症状を悪化させかねない、ということも理解できる」
「この状況を招いた本人が謝罪会見もしないうちに診断結果が発表され、批判しにくいような状況になるのは、精神科医として複雑な気分だ。診断が隠れみの的に利用されるようなことはあってほしくない」

反応性うつ状態

ショッキングな出来事があったために、抑うつ状態になることを、反応性のうつ(抑うつ)といいます。抑うつ状態(うつ状態)とは、興味や意欲の減退、喜びや関心の低下、注意力や集中力の低下、疲れやすさ、頭痛、肩こり、睡眠障害、食欲不振、希望の喪失、悲観的感情、自責の念、自信の低下、自殺への思いなどが見られる状態です。
家族の死、失恋、入試の失敗、仕事の大失敗など、様々なことで私たちはショックを受け、立ち上がれなくなることはあるでしょう。寝込んでしまうこともあるでしょう。ほとんどの人が、大なり小なり、このような体験があるのではないでしょうか。そして普通は、数日たつうち少しずつ元気を取り戻して行きます。
このような状態であるとすれば、うつ状態ではありますけれども、本格的な「うつ病」ではないことになります。
今回のような騒ぎと処罰を受ければ、朝青龍でも誰でも、いったんは激しく落ち込む(反応性抑うつ状態になる)のは、当然のことでしょう。


うつが隠れみの?

病人や障害を持つ人に必要なことは、非難や侮辱ではなく、治療や支援です。
しかし、病気であれば、障害があれば、すべてが許されるわけではありません。そんなことは、当事者たちも望んでいないでしょう。
病気ということが、すべてのことにおける免罪符になってはいけないと思います。診断名が隠れみの的に使われてしまうのは、さらに問題を悪化させるでしょう。
私が花粉症でくしゃみがとまらないとすれば、そのこと自体を非難されたり責められたりすべきではありません。必要なのは、援助であり、治療です。しかし、花粉症なのだといって、マスクもせず、口を手で押さえることもせず、周囲の人につばをかけまわってよい訳がありません。映画館の中で、くしゃみをし続けてよいわけはありません。私は、私のできる限り、人につばがかからないようにしますし、映画館からいったんは出るでしょう。
(たとえば、ある種の障害や病気持っている人間は目障りだから出て行けなどという言語道断な意見は、いうまでもなく間違っています。また、たとえば突然の盲腸の痛みや心臓麻痺で、その会場を混乱させたとしても、それは本人を責めるべきではないのも、言うまでもありません。本人としては、どうしようもないのですから。)
横綱の心身の状態が悪いとしても、今の状態でできる範囲において、社会的責任を果たさなければならないと思います。
(少し別の問題ですが、「うつ」を隠れみのにして、やりたい放題、言いたい放題で、周囲に迷惑をかけている人もいるようです。 参考「擬態うつ病」:精神科医林公一氏のページ こういう話を聞いて、ああ自分もそうかもしれないと自分を責める方は、たぶん本当のうつなのでしょう。こういう話を聞いて、ばかやろうと怒り、長文の抗議メールを出してやれと思う人の中に、もしかしたら擬態うつ病があるのかもしれません。 朝青龍が仮病や擬態うつ病だとは思いません。本当にうつ状態なのだと思います。)

モンゴルへ返すべきか

 当然のことですが、患者を診る医師は、患者のことを第一に考えます。医師の立場としては当然です。今回の横綱の件も、考えられる限り患者である朝青龍の心身にとって良いことを見つけ、提案するのが、担当医の役目でしょう。そうすると、朝青龍にとっては母国へ戻ることがより良いと判断すれば、帰国をすすめるでしょう。
では、帰国しなければ絶対に治らないのかといえば、そんなことはないでしょう。帰国しなければ絶対に治らないとか、帰国すれば確実に治るといったことは、いえないでしょう。
どんな治療や対処もそうですけれども、許される範囲内で、最善の方法を模索することになるでしょう。
たとえば、空気の良いところへ転地療法(気候療法)した方が良いとしても、すべての人にそれが許されるわけではありません。もちろん、できればそうしたいわけですが。あるいは、ある女性が旧家にお嫁に行き、どうしてもそこでなじめず、「適応障害」になったとしましょう。できれば、舅姑から離れて暮らすほうが良いとしても、特殊な事情でそうはいかないこともあるでしょう。(当サイト内の関連ページ:雅子妃、適応障害診断 から学ぶ 私たちの心の健康
モンゴルへの帰国以外にも、入院や、モンゴルから家族に来てもらうなど、いろいろな方法が考えられると思います。いま具合が悪ければ、必要な薬を飲むことももちろん大切でしょう。
朝青龍の病状が本格的な病気の状態であり、モンゴルへ帰ることが朝青龍の健康回復のために良いことだとするならば、可能であれば帰国できれば良いと思います。しかし、もしそうだとしても、現状のまま帰国してしまうことが、今後の相撲活動に取り返しのつかない大きな障害を残すとしたら、そう簡単には結論はだせないでしょう。
もちろん、本来は健康第一ですから、心の病への偏見をとりのぞき、周囲は温かい目で見られれば良いと思います。しかし、どうしてもそうは行かないのであれば、健康をとり、横綱の地位を捨てるという選択肢もあるでしょう。できれば、療法上手くいくのが、一番ですが。
大臣が病気になったとします。横綱でも大臣でも関係なく、病気には治療が必要です。しかし、どうしてもその病気の治療をしながら大臣の重責を担えないとしたら、健康第一で大臣を辞任することも考えられるでしょう。
(ただし、うつ状態のときには、退職、退学、離婚などの重大な決定は後回しにするのが原則です。抑うつ状態の普通ではない感情のまま、簡単に元に戻せないような決断をすべきではありません。)

社会的責任

記者会見をするのであればする。できない状態であるのならば、できない状態だと誰もが納得するような医師の診断書を公表する。朝青龍と相撲協会双方の責任だと思います。朝青龍の病状が悪く、今は社会的責任が果たせないというのであれば、当然雇用主の相撲協会が責任を果たすべきでしょう。
相撲は国技だと自負し、横綱に高い人格を求めるのであれば、相撲協会もまたぜひ国民の手本となるような高潔な態度を示してほしいと願っています。
今回の報道の最初には、サッカーに興じる朝青龍の姿を見て、あたかも仮病を使って巡業をさぼったかのようなコメントもあり、厳罰に処せとの声も多かったようです。しかし本当に仮病だったのか、そもそも腰とひじに関する最初の診断書は正しかったのか(診断書を書いた医師は評判の良い立派な医師だったようです)。もう一度説明をしてもらえればと思います。
現状は、腰はだいぶ改善されたが、ひじはまだ悪いとも報道されていますが、診断書が正しかったとすれば、夏巡業を休むこと自体は正しかったのでしょうか。相撲は取れなくても、地方のお客様に土俵入りを見せるなど、ファンサービスすべきだったのでしょうか。それとも、朝青龍のためにも、大相撲の将来のためにも、この不世出の横綱の回復のために、モンゴルへの帰国は正しかったのでしょうか。
これらのことを、事前にどれほど話し合ったのでしょうか。天下の相撲協会と、相撲が強いだけではなく「品格抜群」と認められて横綱になったはずの朝青龍なのですから。

相撲協会指定の精神科医による診断

8.6夜、相撲協会指定の精神科医が朝青龍の診断を行ったとの報道がありました(8.7)。良いことだと思います。診察の結果、「抑うつ状態」「急性ストレス障害ASDと発表されました。
知人の「精神科医」の診断は、知人であるがゆえに横綱よりの偏った見方ではないかとの意見もありましたが、どうやらそうではなかったようです。(同じ、抑うつ状態という判断です。診断名は多少違いますけれども)

急性ストレス障害

まず、精神的にも身体的にも弱っていて、普通の状態ではないことは、朝青龍にあった医師も相撲関係者も同様に感じたようです。これは、演技などではないでしょう。さて、そのような気持ちが極端に落ち込み元気のなくなった抑うつ状態をどう見るかですが、
抑うつ状態、神経衰弱、うつ病一歩手前、反応性うつ、急性ストレス障害、ASD
現時点では、どのような症状が出ていても「うつ病」と診断することはできないと思います。(本格的なうつ病(「大うつ病性障害」と正確に判断するためには、一般にうつの症状が2週間以上続くことを確かめなくてはなりません。)
しかし、彼はいま社会からのバッシングと相撲協会からの処罰にたいする反応として、抑うつ状態になり、心身が衰弱しています。それを、急性ストレス障害(ASD)と呼ぶこともできるというわけでしょう。
急性ストレス障害、ASD)は、大きなストレスで心が激しく傷つく体験をした直後に、感情が麻痺したような感覚、不安、解離(まるで自分が自分でないような、現実感を失った状態)など、様々な心身の症状が現れる障害です。普通は、1ヶ月ほどで回復していきますが、ここで対応を誤ったり、もともと心身の状態がよわまっていると、さらに症状が長引き複雑化し、PTSD 心的外傷後ストレス障害になっていく場合もあります。
さらに、PTSDと思われる人の中には、PTSDからのうつ病という判断をした方が良い場合もあるようです。

高砂親方のコメント

高砂親方は朝青龍の状態について「昨日の医者(前の医者ではない相撲協会の指定医)はうつではないと診断した。」「健康体ではないことに違いはないが、前の診断よりも安心した。」と述べています。
とりあえず、「うつ病」という名前が出なかったことで少し安心されていらっしゃるようですが、医師の診断名をあまり正確にはご理解されていないようにも思えます。
精神科的な心の病は、血液検査やレントゲンで明白になるような病気ではありません。時代により、国により、分類方法や名称が変わります。複雑であり、そして目に見えないだけに、理解が難しいものです。そのなかでも、うつ、ASD、PTSDは、特に周囲から理解されにくいものでしょう。
ただしい判断をするために、親方も関係者も、ぜひじっくりと医師からの説明を受けられればと思います。

他の理事のコメント(8.8報道)

「ストレスなら汗をかけば治る」といった発言をされている理事もいらっしゃるようです。どうやら一般に、「うつ」と聞くと重い感じがし、「ストレス」と聞くと軽い感じがするよです。
たしかに、重いうつ病の患者さんが感じる苦しみは、健康な人の想像を超える辛さ苦しさです。一方、ストレスというのは、日常的にありますし、私たちは軽いストレスなら毎日感じているでしょう。
ただし、ストレスにも大小があります。急性ストレス障害(ASD)や心的外傷後ストレス障害(PTSD)につながるようなストレスは、主観的には命が危ういと感じられるほどの巨大なストレスです。
朝青龍の今の状態にどんな診断名をつけるのかは、いくつかの考え方があるかもしれませんし、そのような処罰が必要かは医学だけでは判断できないと思いますが、診察した協会指定医と理事会のみなさんが良く話し合うことができればと思います。(8.8補足)

横綱朝青龍のために 大相撲のために 私たちのために

まだ20代の外国から来た青年。しかし、国技とされる相撲の名誉と責任ある横綱。一人横綱の責任を立派に果たしてきた男。相撲界と日本社会に貢献してきた人間。しかし、さまざまなトラブルで周囲の怒りと混乱を生んできた朝青龍。そして、今回の大騒ぎ。
新横綱ができたので、今までのうっぷん晴らしの処罰ではなかったのか。
心の病を理解せず、横綱だからと言って無用な非難を浴びせていないか。
心の病を隠れみのとして、横綱であるにもかかわらず社会的責任を果たしていない部分はないか。
病気になのに治療がないがしろにされている部分はないか。
双方に、反省すべき点はないのか。
双方が、関係者一同が、協力体制を作っているのか。
国民である私たちも、彼らを支える気持ちがあるのか。
まだ不十分なものはあるものの極めて有能な青年を守り、教育し、育てることができるのか。
大相撲の良き伝統を守ることができるのか。
良き伝統を守りつつ、心の病に関するあたらしい態度を身につけていくことができるのか。
今回の朝青龍問題が大きな注目を集めるのは、みんなが相撲が好きで、朝青龍が注目の大スターだというだけではないだろう。
外国人労働者の問題、上司と部下のコミュニケーションの問題、職場のメンタルヘルス(職場ストレスや社員のうつ)の問題、古い伝統と若者文化の問題、人権と自由と人情と社会的責任の問題。今回の問題は、私たちの現代日本社会が抱える多くの問題を象徴しているような気がする。
国技、大相撲。悩みながらも、一つの解決方法の例を、ぜひ示してほしい。
(07.08.07)
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