PTSD 心的外傷後ストレス障害:心理学 総合案内 こころの散歩道 (心理学講座/災害心理学/東日本大震災の災害心理学・癒しと臨床心理学入門/PTSD/(新潟青陵大学・碓井真史)
2011.3.24
PTSDとは、衝撃的な出来事を経験した後に起こる心の障害です。
PTSDとは、ポストトラウマティック・ストレス・ディスオーダーposttraumatic stress disorder の略で、トラウマとなるようなストレスの後に発症する障害という意味で、心的外外傷後ストレス障害あるいは外傷後ストレス障害と呼ばれています。
トラウマとは
トラウマとは、簡単に言えば、心の深い傷です。
ですから、PTSDとは、深い心の傷であるトラウマができてしまうほどの衝撃体験(外傷体験)のために、その後の心や体に変調をきたしてしまうものと言えるでしょう。
傷つくような激しい体験をすれば、誰しも心や体が痛みますが、PTSD普通の痛みよりも強く深く長く続きます。PTSDとは心の後遺症と言ってもいいかもしれません。
(後遺症といっても治らないという意味ではありあません。障害といっても一生続くわけではありません)
ご家族、避難所のみなさん、災害ボランティアの方々、様々なプロの災害支援者のみなさんなど、みんなで心の問題も理解していきたいと思い真ます。
以前は、文字通り命にかかわるような体験の後に起こるのが、PTSDと言われていましたが、現在ではさらに広く考える人が多くなってきました。死亡者が出るような災害や事故はもちろん、命にはかかわらないものの、強いショックを受ける事件事故、性犯罪、いじめ、虐待などによっても、PTSDが発症すると考えられています。
とくに、性犯罪、いじめなどは、客観的にみれば大きなことではない場合も、本人は激しく傷つくことがあります。他の傷害事件などの犯罪もそうですが、誰かが悪意をもって攻撃してこられた体験は、深く心が傷つくでしょう。
また、同じような家族の死や家屋の崩壊でも、阪神淡路大震災や、東日本大震災のように、町全体が壊滅的な被害を受けるような場合の方が、PTSDになりやすいと言われています。
乗用車の単独事故よりも、列車の大事故列車の大事故の方が、PTSDの危険性は高くなります。
また、虐待のように、長く続く外傷体験は、一度の衝撃体験によるPTSDとは異なる「複雑性PTSD」を起こすとも言われています。
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衝撃的事件のすぐあとにPTSDになるわけではありません。衝撃体験のすぐ後に、その強いストレスの反応として表れる様々な症状を、ASD(急性ストレス障害と言います。
普通は、このASD急性ストレス障害は、徐々に治っていくのですが、これが尾を引いて、一か月以上長く続いてしまうのが、PTSDです。
- 再体験
考えたくない、思い出したくないと思っていも、あの時の恐怖や不安の感情が、突然おあおって来ることがあります。過去の出来事なのに、今まさに体験しているように感じます(フラッシュバック)。悪夢を見ることもあります。
- 回避・まひ
トラウマとなった衝撃体験と似た状況を避けようとします。たとえば、列車事故にあった人が電車に乗れなくなったりします。生活の範囲が狭くなってしまいます。あるいは、頭が真っ白になったように、悲しめず、現実感をなくす人もいます。
- 過覚醒
余震に非常におびえたり、小さなことに必要以上に敏感になってしまいます。たとえば、地震の後、小さな物音や揺れでも、飛び上るほど驚いてしまうことがあります。いつも、ビクビクしたり、イライラしてしまうこともあります。
PTSDのの症状によって、日常生活に使用をきたす。現実感がなくなるなるという解離症状が表れて、生き生きと生活できなくなる。こういう人もたくさんいます。人生のなかで、積極的にチャレンジしたり、楽しんだりすることができなくなってしまいます。
不眠や体調不良が長く続き、集中力が亡くなり、うつ状態になり、自分が小さくなってしまったような感覚に襲われる人もいます。自分はダメな人間だと、自尊心、自己評価が下がり、自己卑下するようになることもあります。
進学、就職、結婚などに影響することもあります。
・うつ病の人との接し方:接し方に悩む家族、友人、同僚のために
体のケガならわかりやすいでしょう。元気がなく落ちこんだするのも、衝撃体験のすぐ後なら理解されるでしょう。しかし、PTSDは長く続きます。その人の生き方、人生にまで関わってきます。
周囲は理解しにくいでしょう。
必要があれば、専門医の治療を受けましょう。SSRIなどの抗うつ剤が効くこともあります。様々な心理療法、カウンセリングや、認知行動療法もあります。治療を試みましょう。
また、周囲の人の理解と支援も不可欠です。説教も、叱責もいりません。偉そうな上から目線で、接しないでください。カウンセリングマインドをもって、対等な立場として、ぜひその方の話を聞いてください。その人と共に泣き、共に笑い、共に歩んでください。
ただし、こんなふうに配慮していく周囲の人も、心が疲れることがあります。自分自身を守ることも、大切な仕事です。
みんなで、幸せになりましょう。
PTSDの状態のあなたが、本当のあなたではありません。心の傷は、時間はかかるかもしれませんが、きっと治ります。以前のあなたを思い出して下さい。何を感じ、何にチャレンジし、何を楽しんでいましたか。
がんばりすぎも良くありません。早く元気になろうと焦ると、帰ってうまくいかない時もあるかもしれません。
それでも、少しずつあなたは回復していきます。元気で積極的なもとのあなた、本来のあなたにきっと戻れるはずです。
被害の現実は残ります。記憶は残ります。でも、深い深い悲しみの末に、長い長い時間の果てに、「私はな負けなかった。今の私はこんなに幸せだ」と言える日が、きっと来るでしょう。
衝撃的な出来事の後で、さまざまなストレス反応がでることは、普通のこと、自然なことです。ASD(急性ストレス障害になる人もいるでしょう。PTSDと同じような症状が出てお辛いと思いますが、それでも、短期間で改善されれば、OKです。問題は、長引いて、PTSDになることです。
心身の様々な症状、ストレス反応がでますけれども、特に悲しめないといった、現実感がなくなる解離症状が出ている場合には、要注意です。十分なケアが必要です。
見るからにショックをうけ、泣いている人ならば、周囲も配慮をしやすいでしょう。けれども、そのような人だけではなく、一見強くてがんばっている人こそ、周囲のケアが必要なことがあります。
前述したように、東日本大震災のような未曾有の大災害や、列車、航空機の大事故などを体験している人々は、PTSDの心配が特にあります。症状が悪化しないように、互いに配慮し、長い時間にわたってケアし続けて行きましょう。周囲の支援も受けましょう。
子どもをPTSDを予防するためには、周囲の大人の態度も重要です。父母、祖父母、教師など、周囲の大人がまず落ち着き、不安がっている子どもの心と体を抱きしめてあげましょう。
そのためにはまず、大人自身が癒されていきましょう。
(さらに詳しい災害時PTSDなどを準備中2011.3.24)
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