こころの散歩道(心理学総合案内)/ 犯罪心理学 / 9年ぶりに保護/なぜ
1973年、ストックホルムで銀行強盗が人質をとり、立てこもります。6日後に人質は解放されますが、不思議なことに人質の中には犯人に対して良い感情を持ってしまう人々がいました。犯人と人質の間に生まれるこの奇妙な感情は、後にストックホルム症候群と呼ばれるようになりました。
今回の事件でも、これに似たことが起きてしまったのかもしれません。大きな不安や恐怖の中で、ほんの少しでも親切にされると、理屈には合わないのですが、犯人に感謝の気持ちのようなものを感じてしまうことがあります。
9才で誘拐された少女にとっては、この犯人に頼るしか、生きる方法はなかったでしょう。このようにして本来持っていた自由な心が奪われると、逃げられるチャンスがあっても逃げることができなくなることはあるでしょう。
ペルーのリマで発生した日本大使公邸占拠事件の時にも、犯人と人質の間で相互に友情のような気持ちが芽生えたようです。事件解決後も、人質が犯人をかばうようでは困りますが、この親愛感情のおかげで、特殊部隊突入時にも犯人は人質を殺すのをためらったといわれています。これは「リマ症候群」ともいわれています。
今回の事件は、警察が周りを取り囲む人質事件とは違いますから、厳密に言えば、ストックホルム症候群とは異なるかもしれませんが、被害者の女性は無意識のうちに自分の命を守るために必死になって犯人の攻撃心を和らげてきたのかもしれません。
誘拐した子どもが騒いだので殺してしまったといった話はよく聞くことですから。
人間は弱いものです。現実の鎖でつながれていなくても、心がつながれてしまえば、逃げることができなくなってしまいます。
私は子どものころ、電車にひかれそうになったことがあるのですが、ほんの数メートル動けば安全なのに、一歩も動くことができませんでした。声も出せませんでした。ただ、ぼう然と立ちすくむだけでした。
激しい暴力、不安、恐怖に打ちのめされてしまえば、戦う気力も逃げる勇気も失うことがあります。
ゴルゴ13やランボーではない私たちは、一発思いっきり殴られただけでも無抵抗になってしまうことはあるのです。いじめられて自殺してしまう子も、客観的に見れば、いくらでも助かる方法はあるのに、自分の世界でもう解決の道はないと思い込んでしまうのです。
こういう人たちが特別弱いわけではありません。そんな過酷な環境に置かれれば、だれでもそうなってしまう可能性があるのです。
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→「なぜ逃げなかったのか」と責めずに心のケアを
→少女誘拐監禁、少女はなぜ逃げられなかったのか2:学習性絶望感(学習性無力感)
→少女誘拐監禁、少女はなぜ逃げられなかったのか3:プリゾニゼーション(「模範囚の心理)
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