女性犯罪・妻の殺人・夫殺し・バラバラ死体・家庭内暴力(DV)・女性の支配・アルコール問題
2009.3.31 弁護側は東京高裁での控訴審でも一審同様「心身喪失状態」で無罪と主張。
昨年12月、新宿渋谷で、切断された男性の胴体や下半身が相次いで発見された。年が明け2007年1月10日、被害者男性(30)の身元が判明し、被害者の妻(32)が逮捕された。
報道によると、容疑者は、「12月12日早朝、酒に酔って帰宅した夫が寝た後、ワインのびんで頭を殴り殺害した。その後、渋谷区の雑貨店でノコギリなどを買い、自宅で遺体を切断した」と供述している。
被害者である夫の遺体については、「胴体は旅行用キャリアーケースに入れ、タクシーで捨てに行った。下半身は同じケースに入れて(徒歩で)台車で運んだ。頭部は電車で運び、町田市の公園に穴を掘って埋めた」と供述しており、未発見だった頭部は供述どおりの場所から発見されている。
容疑者女性は、「いろんなことで言い争い、家庭内暴力(DV)で鼻を骨折したことがあった。今までしてきたことを全く認めてくれなかった」とも供述し、、「家庭内が不和で夫は酒癖が悪い」と話している。。
遺体を切断したことに関しては、「(遺体が)想像以上に重く、自分では動かすことが難しかった。一刻も早く目の前から遺体を取り去ってしまいたかった」と供述している。2007.1.11
(1.15補足:報道が続く中、夫婦双方の浮気がの浮気が原因で離婚の話があった、また容疑者はいくつもの隠ぺい工作をしていた等様々な情報が出始めています。)
女性は男性と比べると、ずっと犯罪を犯しません。女性による犯罪は、犯罪総数の2割にすぎません。(男性は女性の5倍犯罪を犯していることになります。)
特に強盗や暴行事件では、女性犯罪は5パーセントだけです。放火恐喝、詐欺などでも、女性の割合は10パーセント前後です。
万引きのみ例外的で女性犯罪者が5割です。また女性の場合、プロの犯罪者はほとんどいません。そして殺人に関しても、女性による殺人の割合は、2割程度です。
今回の事件で、都心でバラバラ死体が発見されるというショッキングなニュースを聞いたとき、多くの人々は、何となく男性殺人犯をイメージしたのではないでしょうか。だからこそ、犯人が女性であったということが、衝撃をもって伝えられたのでしょう。
男性殺人犯が殺害する相手の6割が他人です。ところが、女性殺人犯が殺害する相手の9割が、恋人や家族などごく親しい相手です。
夫婦間の殺人事件では、かつては夫に殺される妻のほうが多かったのですが、近年ではほぼ同数になっています。
生まれたばかりの赤ん坊を殺してしまう嬰児殺人の犯人の95パーセントは、女性です。
家族を殺してしまうというのは、女性の恐ろしさを示しているのでしょうか。いえ、そうではないでしょう。様々な異なるケースはありますけれども、女性による家族殺人の多くは、たとえば心理的に追い詰められ、無理心中をしようとしたものの自分は死にきれなかったといったケースです。
もちろん、自分の子どもであっても殺人が許されるわけもありませんけれども、子どもを憎くて殺したのではなく、むしろ愛しているがゆえの「愛他的殺人」といえるでしょう。必死になって家族を維持しようとしすぎたあまりに、冷静さを失い、家族心中、子殺しへと向かってしまうのです。
嬰児殺人にしても、妊娠出産は男女の共同責任のはずなのに、女性だけが責任を取らなければならない事情へと追い込まれていくのでしょう。
夫殺人の場合も、いろいろなケースはありますが、多くは夫に苦しめられ、もうどうしようもないと思い込み、殺人に至っています。
死体が発見されただけで、もちろんニュースになりますが、「バラバラ死体」となると、とても大きなニュースになります。猟奇殺人事件といわれたり、その殺人事件にはどんなおぞましい背景があるのかなどと想像してしまいます。
しかし、殺人犯が遺体を切断するのは、以外とシンプルな理由によるものが多いのです。単純に死体を処理するためという理由です。
今回の事件でも、容疑者女性は、「(遺体が)想像以上に重く、自分では動かすことが難しかった」から切断したと語っています。
彼女は切断した遺体の一部を台車に載せ、徒歩で近所に捨てに行っています。また、バックに入れ電車で運んでいます。このような遺体処理の方法しかなかった容疑者にとっては、遺体を切断するしかなかったのでしょう。
ただ、普通は遺体をバラバラに切断するなど、怖くてできないでしょうが。
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女子短大生遺体切断事件の犯罪心理学
容疑者女性は、夫の遺体を一見冷静に冷酷に切断しています。そして、「一刻も早く目の前から遺体を取り去ってしまいたかった」と語っています。
とてつもなく恐ろしいことをしてしまったとき、人の心の中で、その記憶を抑圧し、取り消したい、打ち消したいという思いが生まれます。なかったことにしたいのです。現実は変えられませんけれども、見えないようにしてしまいたいのです。
今回の事件でもそうだったのかもしれません。今回の犯行が、長い時間をかけた緻密な計画犯罪ではないとしたら、容疑者の心はその恐ろしい現実を受け入れることができず、奇妙な冷静さの中で、遺体の処理を行っていたのかもしれません。
(捜査本部は1.11現在、夫との3年10カ月あまりの結婚生活でうっぷんを募らせた容疑者が、衝動的に犯行に及んだ可能性があるとみて調べていいます)
容疑者は夫である被害者から家庭内暴力を受けていたと語っています。
妻達の2割が夫からひどい暴力を受けたことがあるとする調査もあります。今回の事件でも容疑者の供述が真実であるとすれば、1度、2度ではなく、継続的にひどい暴力を受けていたことになります。
鼻の骨が折れてしまうほどの暴力とは、どのようなものだったのでしょうか。私個人は、それほど強く人から殴られた経験など一度もありません。多くの現代人がそうではないでしょうか。そんな現代人である私たちが、家庭という密室の中で、生まれて初めて激しい暴力を受けたとき、その暴力を受けつづけたときに、体だけではなく、心がどれほど傷つくことでしょう。
これまでも、家庭内で激しい暴力をふるう息子を親が殺してしまうといった事件が何度もおきています。暴力にさらされていく中で、人は冷静な判断力を失います。暴力は避けなくはなりません。逃げなくてはなりません。暴力を受けなくてもすむ工夫が必要です。
親子ではなく夫婦の場合には、離婚すればいい、別居すればいい、逃げればいいとお思いでしょう。しかし、なかなかそのようにできないのが、家庭内暴力(ドメスティックバイオレンス:DV)の問題の深いところです。
今回の事件ではどのような事情があったのかはまだわかりません。ただ、一般的には次のような理由が考えられます。
・激しい暴力で脅されている場合
別れたり、逃げたりしたら殺すぞ、親も殺すぞ、実家に火をつけるぞなどと脅されて、逃げられなくなっている女性達がいます。
・暴力による無力感
暴力が心に与える力は巨大です。圧倒的な暴力を受けつづけたとき、人はすっかり無力感に支配され、客観的に見れば逃げることは可能なのに、不可能だと思い込んでしまいます。
・暴力:DVのサイクルによる心理的支配
家庭内暴力は、家庭外でも、またいつでも暴力的な人が、家庭内で妻にも暴力をふるうケースもあります。しかし、家庭外ではおとなしくまじめな人が、家庭内では暴力をふるっている人もいます。しかも、常に乱暴というわけではありません。
何かささいな理由で激しい暴力をふるいます。骨が折れるほど殴ります。しかし、我に返って冷静になると、とんでもないことをしてしまったと気づきます。薬を塗り、病院へ連れて行き、とても優しい言葉をかけ、その後しばらくはとても親切になったりします。しかしその状態は長続きせず、暴力のサイクルが繰り返されます。
被害者は暴力をふるわれないように必死に男性につくし、それでも暴力を受け心身共に深く傷つき、さらにその後の一時的な優しさの中で、もう暴力はしないだろうとあわい期待を持って、逃げるチャンスを失います。
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この暴力のサイクルは、、たとえば戦争による捕虜をマインドコントロールするときの手法にも似ています。非常に苦しめた後、優しくする、いうことを聞いている限りは優しくし、しかし小さな違反にも激しい暴力が待っている、このような状態にされされつづけると、人は判断力を失い、相手の言いなりの人間になってしまいます。
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マインドコントロール、洗脳の心理
マインドコントロールは意図的ですが、家庭内暴力の多くはそうではありません。
男性は結局のところ女性を「物」としてみています。気に食わないことがあって暴力をふるいませすが、それは腹を立て自分の自動車を蹴っ飛ばすようなものです。傷がついてしまえば、あわてて修理しようとするでしょう。
夫や妻に優しくするのは、本来は愛情によるものです。だから、妻が喜んでくれることは、自分の喜びとなります。しかし、家庭内暴力を続ける男性はちがいます。自分の思い通りになって当然だと思いつつ、女性に優しくしていますから、優しくしながらしだいにストレスがどんどんたまっていきます。そして限度を越えたとき、激しい暴力となります。
DVのサイクル:暴力の爆発→ハネムーン期(優しい)→緊張の蓄積(ストレスがたまる)→暴力の爆発→・・・・・・
また、女性の中には、優しさと過剰な責任感の強さから、逃げることができなくなるケースもあります。男性がダメな人間だと十分わかっているのですが、この男性を自分が支えなければならないと感じてしまい、離れることができなくなってしまうのです。
今回の事件で何があったのかは、まだわかりません。ただ、供述が本当であるとすれば、女性は我慢をしつづけ、しかしついに耐えられなくなり、命を奪うという最悪の方法をとってしまったのでしょう。
(結婚や恋愛は、対等な二人の人間関係です。どちらかが奴隷になったり、どちらかがつくすだけの関係は不健康です。恋愛心理学的に言えば、本当の恋愛、結婚とは、「自分の何かを失うのではないかという恐れ無しに、二人の人が一つとなることです。)
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恋愛と結婚の心理
恋愛心理学:男女関係、恋愛、結婚 の心理
容疑者は被害者でる夫の酒癖が悪かったとも話しています。酒に酔うと常軌を逸した暴力をふるっていたとするならば、それはもう治療の対象です。
アルコールのためにひどい目にあっている妻や子がどれほどたくさんいることでしょうか。
多くの国々で、アルコールは大きな社会問題となっています。その割りには、日本ではそれほど大きな問題として認識されていません。その理由としては、日本人は人種的に酒に弱いために他の人種ほど大量飲酒を続けられないことこともあるでしょう。
また、諸外国ではアルコールによる欠勤が問題になったりするのですが、日本人は何があっても会社にだけは行くようです。そうすると、問題が見えにくくなります。
実はアルコール依存症であり、ひどい酒乱であるのですが、その被害を妻や子だけが受け、世間の人々が知らないままに、傷つき、悩み続けることになるのでしょう。
日本は、アルコールや酔うことに関して、とても寛容な国のようです。イスラム諸国ではアルコールが禁止ですし、欧米でも、社会的に立派な人々がパーティーの席でひどく酔ったり、そのような人や女性が酔って千鳥足で街をあるくことなど、あまりないでしょう。人前でそのような姿をさらすことは良くないと感じるようです。
何であれ、お酒を健康的に楽しんでいるのならば良いのですが、家族が被害者になっていることも少なくないでしょう。
さらに、この豊かな現代社会が、問題を見えにくくしています。昔日本人が貧しく、となりの家の物音も筒抜けだった時代であれば、どこの家の亭主の酒癖が悪いといったことを、近所の人はみんな知っていたでしょう。
助けてくれるとなりのおばさんがいたり、説教してくれるご隠居がいたことでしょう。しかし、現代では各家庭が孤立し、家庭の問題で悩む人々は辛い孤独感に耐えなくてはなりません。
理由は何であれ、殺人が許されるわわけはありません。真実が明らかにされ、犯人はその責任に応じて正しく裁かれなくてはなりません。
しかし一般的に言って、男性犯罪者には、なんでそんな乱暴なことをしたんだ、もっとおとなしくなれと怒りたくなるのに対し、女性犯罪者には、その犯行自体はひどいものだとしても、むしろもっと自立的にもっと強く人生が歩めていればと言いたくなります。
家族のことで殺人を考えるほどに追い詰められる前に、逃げる勇気、相談する余裕、戦う力を持てていればと思います。
今回の事件でも、もっと違う形での家庭内暴力の解決、アルコール問題の解決があったはずなのですから。
*被害者のご冥福をお祈りいたします*
(1.15補足:報道が続く中、夫婦双方の浮気がの浮気が原因で離婚の話があった、また容疑者はいくつもの隠ぺい工作をしていた等様々な情報が出始めています。真実はまだわかりません。新しい情報にそって、ページの更新をしていきます。)
2008年9月緊急発行 『誰でもいいから殺したかった! 追い詰められた青少年の心理』 |
2008年8月発行 『人間関係がうまくいく図解嘘の正しい使い方:ホンネとタテマエを自在にあやつる!心理法則 』 |
2000年 『なぜ少年は犯罪に走ったのか』 |
2001年 『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』 |
2000年 『なぜ少女は逃げなかったのか:続出する特異事件の心理学』 |
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「誰でもいいから殺したかった青年は、誰でもいいから愛してほしかったのかもしれない。」 ☆愛される親になるための処方箋 本書について(目次等) |
・ 『ブクログ』書評「〜この逆説的かつ現実的な取り上げ方が非常に面白い。」 ・追い詰めない叱り方。上手な愛の伝え方 本書について(目次等) |
bk1書評「本書は,犯罪に走った子ども達の内面に迫り,心理学的観点で綴っていること,しかも冷静に分析している点で異色であり,注目に値する。」 本書について | 「あなたは、子どもを体当たりで愛していますか?力いっぱい、抱きしめていますか?」 本書について | 「少女は逃げなかったのではなく、逃げられなかった。それでも少女は勇気と希望を失わなかった。」 本書について |