買い物依存症についてわかりやすく解説。ドラマで学ぶ買い物依存症。
「心の散歩道」(心理学総合案内)/「心療内科医・涼子」から学ぶ心理学/ 4、買い物依存症
第4回 97.11.3
「そんなあなたをね、
愛している人がいるんだよ。」
「あきらめないで。あきらめないで!」
ゲスト・クライエント:斎藤由貴
心の問題:買い物依存症
依存症・セルフ・コントロール・ミーティング
あらすじ
デパートで東由香里(斉藤由貴)が一心に買い物をしている(買い物依存症)。幼稚園児の息子・太一が「オシッコ!」と大声で訴えているが、由香里の耳には入らない。
その由香里の家を医局長の替わりに訪問した涼子は、太一が髪をかきむしるのを見て、心療内科受診を勧める。数日後、小学校受験のために太一の癖を直したいと、二人が病院を訪れる。太一は遊戯療法(描画療法)、由香里は箱庭療法を受ける。由香里は、母子だけの食卓を箱庭で作る。何か家庭に問題があるらしい。
病院からの帰り、由香里はまた異常な様子で買い物をする。涼子が止めるのも聞かない。だが、とうとうカードの限度額を超え、現金もなくなった。取り乱した由香里は、太一を残して、走り去った。この出来事をきっかけに、家のことに無関心だった夫の茂樹(伊藤俊人)も妻の異常な買い物癖(買い物依存症)を知る。そして、激しく由香里を責めた。
太一の小学校受検の日がきた。しかし、控え室で離婚の話を持ち出された由香里は、そのまま走り去ってしまった。茂樹は、太一を実家に預けることにした。
自分の病気(買い物依存症)を自覚し始めた由香里は、カウンセラー(小倉久寛)が司会を務める依存症の患者さんの集まり「セルフ・コントロール・ミーティング」に参加した。そして父親がいなかったさびしい子供時代と、買い物せずなはいられない買い物依存症の自分をありのままに語った。激しい買い物の理由として、父親がいないという剥奪感があったのだ。
入院治療を行い、快方に向かっていた由香里のもとへ、弁護士から離婚と親権問題に関する書類が届いた。由香里は再び我を忘れ、買い物をするために町へ出ていった。
由香里を探しに出る涼子。太一のもとへも来ていない。夫は由香里のことで怒るが、逆に涼子は、誰のせいだと思っているのかと夫を厳しく叱る。
デパートの前に、憔悴しきってしゃがみ込んでいる由香里がいた。苦しかったが、買い物はしなかったようだ。由香里は、自分にはもう何もないとつぶやく。しかし、涼子が言う。
「今日は何も買わなかった。その「今日」を積み重ねていこう。」
「太一君ね。ほんとにあなたのことを愛しているんだよ。」
「着飾ってなくて、何も持ってなくて、まるはだかのあなたのことを、ずっと愛している太一君のことを忘れないで。」
「あきらめないで。あきらめないで!」由香里は、買い物依存症の治療を続け、夫も一応は親権問題を取り下げた。本当の問題解決への第一歩が、始まったのだ。
心の問題はいろいろな形で現れます。一つは、こころ。悩みとか神経症(ノイローゼ)という形です。もう一つは、身体。円形脱毛症とか、神経性胃炎などです。由香里の頭痛もそうですね。もう一つが行動。過食、非行、家庭内暴力、虚言癖、異常な買い物(買い物依存症)、髪をかきむしる等です。小さな子供の場合、心の問題が心に現れるよりも、身体や行動に現れることが多いようです。
太一のことに関して、涼子が母親の由香里に言うセリフです。親は子供を心の底から愛しても、でも子供は親とは違う、別の意志と人格を持った人間なのだという自覚が必要です。
たしかに、小さいときからの教育は大切です。でも、子供の人生を決めるのは、子供です。早いうちに、親が決めてしまうのは、どうでしょうか。
私の好きな絵本にレオ・レオニの『せかいいちおおきなうち―りこうになったかたつむりのはなし』があります。大きな家がほしいというカタツムリの子供が、こんなお話を聞きました。
あるカタツムリが大きな家がほしいと努力して、世界一大きくて立派な家を背中に背負った。でも、大きすぎて、動くことができず、死んでしまった。
この話を聞いた子供のカタツムリは思います。。
「ちいさく しとこう」
「おとなに なったら、すきな ところへ いけるように。」
箱庭療法は、砂の入った箱の中に自由に箱庭を作ってもらいます。「投影法」と言われる方法です。クライエントが作る箱庭にクライエントの心が映し出されると考えられます。
乱暴な親、酒乱の親、遊んでくれなかった親。人は、自分はそんな親にはなりたくないと考えます。でも、その思いが強すぎると、かえって自分を追いつめて、自分が思っているような良い親になれなくなってしまうことがあります。
親や家族のことを質問された由香里が、激しい口調で応えます。実は、ここにこそ彼女の問題があったのですが、人は自分の心の弱い部分に他人が入ることを嫌います。むしろ、その部分は何ともないと強がることもよくあることです。
心の痛みを癒すために、いろいろなものに依存する人々がいます。その依存以外では、よくやっているように見える人もいます。由香里もそうでした。この後に、「買えば安心できた。〜でも長続きしないの。」というセリフもありました。
アルコール依存症の人でも、酒さえ飲まなければ良い人だと言われることがあります。でも、そのときは心の痛みを忘れられても、それは本の一時だけです。酒を浴びるほど飲んだ後、異常な買い物をした後、もっと激しい自己嫌悪が待っています。
とうとう、その依存行動(買い物依存症の場合は買い物)ができなくなったとき、問題がはっきり現れます。由香里の場合もそうでした。お金が続かなくなったのです。アルコールの場合も、肝臓をやられて、血を吐いて、どうしても酒が飲めなくなり、禁断症状が出たために、依存症の治療が始まることがあります。
心の病気は、健康と病気、異常と正常の境目があやふやです。多少、おかしなところがあっても、普通の社会生活ができるならば、病気とは言えないでしょう。でも、その行動のために、自分自身や周囲の人が困り果ててしまうほどになれば、治療が必要な、広い意味での心の病気といえるでしょう。
良い母になろうと、自分を追いつめては行けません。ときには、休憩することも、ちょっと手を抜くことも必要です。
少しぐらい失敗したって大丈夫。失敗したときに反省するのは必要だけど、自分を責めすぎては行けません。人は他人に責められたとき、怒るか泣くかで、あまり良い方向には変わりません。自分で自分を責めてしまう場合も同じです。
涼子が由香里の夫に言うセリフ。子供にかまいすぎる母親、無関心な父親、行動に異常が見られる子供。前回の家庭内暴力の場合と同じで、典型的なパターンです。
買い物依存症をはじめ、依存症は、苦労して治しても、ちょっとしたきっかけで元に戻ってしまう場合があります。アルコール依存症では、退院して、帰りの駅の自動販売機でワンカップ大関とか、退院のお祝いだと言って酒を勧められるとか。一口飲んだら、元の木阿弥というわけです。
こういうふうに、一歩一歩行くことです。買い物依存症の治療も、アルコール依存症の治療も。
女性が離婚して、親権をとられたら丸裸になってしまう。そんな社会は、さびしいですね。(私は特別フェミニストというわけではありませんが、もし女性が不幸ならば、人類の半分が不幸だということです。それは人類が不幸だということですから、そんな社会はゆるせません。)
今週のキメのセリフです。人は、誰かに愛されていると実感することが大切です。それも、お金や学歴や地位ではなく、ありのままの自分自身が、そのまま愛されていると知ることが必要です。
あなたを愛してくれている人もきっといます。がんばりすぎなくても、失敗ばかりしても、それでも、ありのままのあなたを愛してくれる人が、きっといます。忘れないで。あなたも愛されています。だから、
「あきらめないで。あきらめないで!」
ドラマにちょっと一言
・斉藤由貴が主演した「はいすくーる落書き (1989放送 / 出演 斉藤由貴、所ジョージ) [DVD]」(TBS)は、とってもおもしろかったので、今回も期待して見ました。「セルフ・コントロール・ミーティング」に参加しての長ゼリフは、さすがに聞かせてくれましたねえ。クライマックスのデパートの前での室井滋とのセルフのやりとりも、見応えがありました
(斉藤由貴がお好きな方は、こちらへどうぞ。「YUKI-NET」:斉藤由貴ファンに贈る斉藤由貴ファンの為のページ)
・室井滋と萬田久子が二人でセリフを交わすシーンは、いつも安心して見られる好きなシーンなのですが、今回はあんまりピンと来ませんでした。
・デパートで、このカードは限度額を超えていて使えませんと由香里に告げるシーン。きちんとしたお店で、お客には連れもいるときに、あんなに露骨には言わないのではないでしょうか。
・由香里の家の台所。立派な家の割にキッチンが貧弱に見えました。
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買い物依存症とは
- 買い物に固執する
- どんどん高額な買い物をする
- 買い物をやめようとしたり、金額を経らそいするとイライラする。
- 現実のストレスを発散させるために買い物する。
- 買い物をし続けるために、嘘をついたり、非合法なことをする。
- 買い物にのめりこみ、大切な人間関係を壊したことがある。
リンク
高知アルコール問題研究所(買い物依存症などの情報満載)
BOOK:『心療内科医 涼子』(ドラマから生まれた小説)
DVD:『心療内科医・涼子』DVD 1〜4(全話収録)
MUSIC:『心療内科医・涼子』の曲 (主題歌など)
☆ ネ ッ ト で D V D レ ン タ ル ! ☆ T S U T A Y A D I S C A S ☆
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『ひとりになれない女たち―買い物依存、電話・恋愛にのめりこむ心理 (文春文庫PLUS)』
『依存症溺れる心の不思議―酒、薬、ギャンブル、買い物依存症…なぜやめられないのか? (KAWADE夢新書)』
『依存症 (文春新書)』
『依存症がよくわかる本―家族はどうすればよいか?』
『依存症のすべてがわかる本 (健康ライブラリーイラスト版)
』
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