新潟青陵大学大学院(碓井真史) / 心理学 総合案内 こころの散歩道 (心理学講座)/犯罪心理学/酒井法子容疑者に覚せい剤取締法違反容疑で逮捕状
2009.8.7(8.8補足)
2009.8.9 NEW 酒井法子容疑者に覚せい剤取締法違反容疑で逮捕:芸能人と、覚せい剤、麻薬の心理学
2009年8月3日の夜中に自称プロサーフォーの夫が覚せい剤所持の現行犯で逮捕される。逮捕時には、酒井法子さんも立ち会っており、泣き崩れていたという。翌日4日、酒井法子さん失踪し、行方不明。親族が「最悪の事態」も心配して、捜索願を出す。
8月7日、酒井法子さんに覚せい剤所持容疑で逮捕状。「酒井法子さん」から「酒井法子容疑者」へ。「失踪」から「逃亡」へ。
警察は、自宅から覚せい剤が見つかり、夫が自分のものではない、妻も使用していたと供述していることから、妻の酒井法子容疑者に逮捕状がでたもよう。
8.8補足:酒井法子容疑者の弟である元暴力団員が、先月覚せい剤取締法違反罪で逮捕起訴されていたことが判明。また報道によると、酒井法子容疑者宅にあった覚せい剤は化粧品のポーチに入っていたという。覚せい剤の吸引器具にあった付着物のDNA型も、酒井容疑者のものと一致した。 →8.8夜酒井法子容疑者逮捕
判決がでるまでは、「推定無罪」です。そうはいっても、逮捕状が出た段階で、社会的ダメージは大きいでしょう。酒井法子「容疑者」の場合も、すでに一部のコマーシャルや出演作品の使用などが控えられています。
そして、逮捕され、供述がとられ、起訴された段階で、たとえば解雇されたり、退学になるなど、正式な社会的制裁が加えられるでしょう。
ここでは、本人の供述もないままに有罪と考えているわけではありません。また、どちらにせよ、現段階(8.7)で酒井法子さん個人を攻撃する意図もありません。(当ページ「犯罪心理学:心の闇と光」では、様々な事件を扱っていますが、原則として容疑者の氏名は載せていません。)
ただ、今回は「酒井法子容疑者に逮捕状」という膨大な報道がなされ、大きな社会的注目が集まっているなかで、一般的な覚せい剤犯罪の問題を取り上げてみたいと思います。
→8.8夜酒井法子容疑者逮捕
覚せい剤とは、ヒロポン(商品名)とか、シャブ、スピード、S:エス(いずれも俗称)と呼ばれるもので、日本における薬物乱用の中心的な存在です。
難しく言うと薬物の中でも「興奮系薬物」です。
ちなみに、シンナーや、ヘロイン、モルヒネなどは、「抑制系薬物」
LSD、MDAD(合成麻薬の一種、8月3日に逮捕された男性俳優が使ったとされているのが、この薬物)、大麻(マリファナ)などは、「幻覚系薬物」です。
「覚醒剤(かくせいざい)」ということを、とても広くとらえれば、覚醒作用のあるものですから、コーヒーに入っているカフェインも覚醒剤です。ただし、一般的には、カフェインやコーヒーを覚醒剤とは言いません。
覚醒作用のある覚醒剤の中でも、法律で規制されているものを、一般に「覚せい剤」と呼んでいます。
麻薬とは
脳に作用する依存性のある薬物で、法律で規制されているものを、一般に麻薬と言っています。
眠気や疲れが取れ、作業能力が上がったように感じます。感覚が鋭くなったように感じます。爽快な気分や精力増進をかんじます。芸能人の中には、自分の音楽性が上がったように感じていたという人もいます。ただし、客観的にみると、必ずしもそうではありません。
本人としては、薬のせいでとて気分が良く快調だと感じるときでも、周囲から見れば、落ち着きがなく多弁、多動と感じられたりします。
(0807現在、酒井法子容疑者に関する様々な情報が錯綜しています。一部報道によれば、酒井容疑者がクラブやイベントで「異様にハイな状態」で踊り続けるような奇行が見られたと証言する人もいます。CM撮影現場でも「異常なハイテンションだった」と語る人もいます。)
そして、覚せい剤による興奮効果は数時間で切れます。、その後は激しい疲労感や眠気、抑うつ感が襲ってきます。
覚せい剤は、「精神依存性」がとても強い薬物です。一度覚せい剤に依存してしまえば、善人でも、意志の強い立派な人でも、覚せい剤を止めることができなくなってしまいます。
覚せい剤で逮捕された芸能人が、さらに何度も逮捕されるのは、このためです。
一度目の逮捕では(自分が持っているだけなら)、執行猶予も付きますし、しばらく仕事を自粛した後で芸能界に復帰する芸能人もいるわけですが、2度目、3度目の逮捕となると、芸能界復帰難しくなってしまいます(そんな歌手もいましたね)。
元オリンピック代表の女子体操選手で芸能活動もしていた人は、今年2月に5回目の逮捕をされています。
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覚せい剤は、とても精神依存性が高い(何が何でもどんな手を使ってでも覚せい剤を使いたいと感じてしまう)ので、覚せい剤を買うための金欲しさの犯罪なども起きてしまいます。
サルを使った実験では、6千回レバーを押さないと覚せい剤が出ないようにした装置の前で、覚せい剤依存症になったサルは、一日中レバーを押し続けていました。
さらに覚せい剤を使い続け中毒状態になると、幻覚や幻聴、妄想など、精神病の様な症状が現れる「覚せい剤精神病」になってしまいます。
覚せい剤中毒の場合、強い被害妄想を持ち、自分がやられるまえに、人をやってしまわなければと思いこみ、傷害事件や殺人を犯してしまう人もいます。(精神病ではそのようなほとんどありません)。
薬を使った時の一時の快感。これに脳がやられてしまいます。人間としての意志の力を超えて、この快感を求めてしまいます。
薬が切れると、強い不快感が襲います。この不快感を取り去るために、薬を使います。心が依存する場合には、「精神依存」です。薬が切れると手が震えるなどの場合は、「身体的依存」も加わります。
薬は、一般に使っているうちに耐性がついてきます。最初は少しのアルコールでも酔っていた人が、しだいに酒に強くなり、たくさん飲まないと酔えなくなる現象です。こうして薬の量が増えていきます。
薬のせいで、家族や仕事を失えば、その辛い現実を忘れるために、また一時の快感を求めて薬に走ります。こうして、薬の魔の手から逃れることができなくなっていきます。
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覚せい剤の場合は、「逆耐性」と呼ばれる問題もあります。一度、依存状態になってしまった人は、そのあと何年もたっているのに、ごくわずかの量の覚せい剤や、またはストレスなどによっても、突然症状が出てしまう恐ろしい「フラッシュバック」の問題もあります。
歌手で清純派アイドルスターだった酒井法子さんも38歳になっていました(1971年2月14日生まれ)。
青年期の薬物依存が、非行や好奇心によるものが多いのに対して、中年期の薬物は、「静かな依存」「適応のための依存」「まじめな依存」だと、語る専門家もいます(『薬物依存 (岩波新書) 』)。
様々な体の変化、生活の変化、不安や悲しみの中で、何とか頑張らなくてはという思いが、時にお酒や薬に走らせます。「適応努力としての薬物使用」(『薬物依存 (岩波新書) 』ともいえるでしょう。
容疑が事実だとすれば、酒井法子容疑者も、生活の中で様々なことがあったのでしょうか。
関係者の中には、「酒井法子は結婚してから変わった」と語る人もいます
暴力団員だった弟の逮捕も、だから覚せい剤が身近にあったのだとも考えられますが、長年彼女の悩みの種だったかもしれません。以前、酒井法子さんが「徹子の部屋」に出演したときには、黒柳哲子さんの「ご兄弟は?」の質問に「1人っ子です」と答えています。真っ白な清純そうな服を着て。
薬物犯罪に限らず、多くの女性犯罪者は、乱暴な男性犯罪者と比べると、精神的に追い詰められた末の犯罪が多く見られます。酒井法子さんの人生に、何があったのでしょうか。
覚せい剤は、戦後大々的に流行しました。戦後の混乱期に、芸能人、芸術家、一般の人にまで、覚せい剤中毒が広がりました。その流行が収まったあとに第二次乱用期と言われる流行がありました。
そして、今、第三次乱用期に入ったのではないかと危惧されています。
酒井法子容疑者が「狡猾な逃亡者」であれば別ですが(入念な逃亡準備をしていたという見方もありますし、また一部ネット上でに流布しているように新興宗教団体がかくまっているというのなら別ですが)、連絡がつかなくなった直後に親族が捜索願を出すということは、やはり何か心配するだけの理由があるのでしょう。
逮捕状が出され、法的には失踪から逃亡になったとしても、酒井法子さんの最悪の事態の可能性、自殺の危険性が消えたわけではありません。そんなことになれば、だれにとっても最悪です。
容疑が事実であるとしても、裁きを受けた後の再出発を期待したいと思います。「のりピー酒井法子さん」には、大勢のファンがいるのですから。そして、10歳の子どものお母さんなのですから。
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→ 2009.8.9 NEW 酒井法子容疑者に覚せい剤取締法違反容疑で逮捕:芸能人と、覚せい剤、麻薬の心理学
犯罪心理学:心の闇と光
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毎日新聞2009.6.7朝刊1面コラム欄で紹介されました。
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