子どもの叱り方、罰の問題点と効果に関する基礎心理学。
心理学総合案内「こころの散歩道」/やる気研究所/2報酬と罰の効果
報酬と罰の効果2叱り方、罰や体罰の問題点と効果・ちょっと複雑な話 |
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前のページでお話ししたように、何が報酬になるかは場合によって違うので、時には予想もしないようなことが報酬になってしまうという難しさがあります。けれども、その効果については、報酬によって行動が促進されることが心理学的に明らかにされています。
しかし、罰の効果については、いろいろな考え方があります。
ある行動をとって罰を受ければ、普通はその行動を止めようと思います。ですから、常識的には罰はとても効果的な方法だと考えられています。
けれども、心理学の実験結果から、罰の効果は一時的でしかないという考えもあります。罰を与えれば、行動は確かに減少します。しかし、罰が与えられなくなると、以前と同じか、場合によっては、もっと多く、その行動が表れてしまうのです。
さらに、罰によって、葛藤や不安などがおきて、心身症的な症状も現れることもあります。この考えによれば、罰を与えることはできるだけ止めて、報酬を与えることによって行動を左右した法がよいことになります。これは、スキナーというとても有名な心理学者の考えです。
ただし、罰の効果が一時的だからダメだと言ったら、報酬の効果だって一時的ではないか。その理由によって罰の効果を否定するのはおかしいという意見もあります。
また、スキナーの意見に対して、罰の効果は持続的だという反論もあります。これらの意見の他にも、罰にはほとんど効果がないという意見もあれば、強い罰なら効果があるという意見などもあります。
つまり、罰の効果については、様々な実験結果があり、心理学者の間でも意見が一致しないのです。ただ少なくとも、一般に考えられているほど、罰は効果的な方法ではないとは言えると思います。
罰のマイナス効果(罰の副作用)
罰、特に体罰には、次のような副作用が考えられます。
1.罰を与える人に反発心や抵抗心を持つ。
2.罰を与える人との人間関係が悪くなる。
3.何をしたらよいか、罰だけでは分からない。
ある幼稚園の体重測定の場面です。子ども達はふざけて、体重計の上で体を動かしてしまっています。先生が、「動いてはダメです!」と一生懸命叱りましたが、上手く生きませんでした。そこで今度は、「両手を足にぴったり付けましょう」と言ったところ、子ども達はしっかりと立って動かなくなりました。
4.もっと大きな罰を避けるために、現在の行動を変えようとしないこともある。
罰のプラス効果
子どもが悪いことをしたときに、ただ単純にいたい目に合わせるのではなく、真剣に叱っている気持ちが伝われば、子どもはそれがどんなに悪いことか自覚して、そんなことはしなくなるでしょう。
自分が悪いことをしていると自覚しているのに、誰も叱ってくれないと、ますますイライラして悪いことをしたくなることがあります。叱ることが愛情表現となることもあるでしょう。深層心理学的には、誰かに叱られることを求めて、非行などの悪いことをする場合もあると言われています。
ただし、ただ腹が立って体罰を与えるようなことを「愛のムチ」などと言ってごまかしてはいけません。
犯罪防止としての罰の効果
刑罰はもちろん犯罪防止に効果があります。ただし、全ての犯罪に効果があるわけではないでしょう。自分の行動と与えられる罰について計算ができる人の場合は、罰は効果的です。
企業の犯罪行為は、罰則が厳しくなれば減るでしょう。違法駐車の取り締まりを厳しくし、罰金を高くすれば、違法駐車の数は減るでしょう。
しかし、罰が一般に考えられる手いるほど効果的でないことは、上に書いた実験からも、犯罪と刑罰の歴史からも分かっています。
このことについては、「犯罪心理学」のぺーじでも扱っていきます。ただし、犯罪の発生は刑罰の有無や重さだけに影響されるわけではなく、社会のさまざまなものの影響を受けています。日本の犯罪が欧米よりもずっと少ないのは、刑法や少年法や警察力が優れているとことだけが理由ではないでしょう。
*ちょっとややっこしい話になってしまい、すいませんでした。上の方に書いたことは、主に心理学の基礎的な実験による話です。効果的なほめ方叱り方など、もっと日常的な賞罰についても、また別の機会にご紹介したいと思います。
→次のページへ進む達成動機:目標を目指すやる気
関連ページ:体罰の心理学:愛のムチの限界と副作用
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