心理学総合案内・こころの散歩道/犯罪心理学/神戸小学生殺害事件/「神戸小学生殺害事件:事件の背景とこれからの教育を考える」月刊「児童心理」(金子書房)1997年11月号別冊

「注目すべきは中学生のストレス」

社会学者 宮台真司

要約

・「メディア悪玉論」には問題が多い。

・「犯人当てゲーム」や「動機推測ゲーム」には問題が多い。

・直接の事件のきっかけとなった「引き金要因」とその背後にある「背景(周辺)要因」の区別をしなくてはならない。周辺要因こそ、議論されるべきである。

・精神医学、心理学者、犯罪学者達の方法には、問題がある。たとえば面談もしないで診断を下すのは間違いである。

・周辺要因である中学生達のストレスこそ、改善すべき問題である。

・学校の改革を行い、「満員電車状況」や「学校化状況」を解除しなくてはならない。

コメント

 さすがに、マスコミでも活躍中の宮台先生。面白く読みました。大変有能で、尊敬できる先生だと思います。学者として優秀なだけではなく、表現やネーミングが実に上手いですよね。要約の前半部分3つに関しては、私も賛成です。もっとも、これは宮台氏だけのオリジナルな主張ではなく、他の方々も主張されているようには、思いますが。

 なにしろ、表現が上手いので、宮台氏の文章を読むと、彼以外の識者がみんな愚かに見えてしまうのです。もちろんそんなことはありません。

 そういう巧みな表現を取ることは、議論の際には、必ずしも間違っているとは思いません。

 しかし、気をつけないと、一般の読者の方は宮台氏だけが正しいと誤解してしまうことがあるかもしれません。心理学者や精神医学者を批判していますが、私はやはり心理学者の一人として、社会学者である宮台氏の意見の方に違和感を感じます。

 もちろん中学生達のストレス状況は改善されなくてはなりません。しかし、今回の事件のような「快楽殺人」は、やはり「教育問題」にはならないと思います。教育現場の荒廃は、非行を生むことはあっても、「快楽殺人」を生むことはないと思います。

 補足1

別の本にあった宮台氏への批判

「宮台氏は、学校を解体しようとしている。その象徴として神戸の少年を使おうとしている。だから、少年が精神異常者であることをわざと軽視しようとしている。」

 そこまで、彼が計画的、意図的に発言しているのかどうかはわかりませんが、今回の事件と教育問題は、別に論議されるべきだと思います。

 補足2

 先日、TBSの「ニュース23」に、宮台氏が出演していました。中学生によるナイフを使った女性教師刺殺事件と神戸の事件は、密接なつながりがあるとして、教育問題を語っていました。これは、私は間違っていると思います。

 続発するナイフの事件から教育問題を語ることは、正しいと思いますが。

宮台真司氏の著書

→次のページへ進む「心の中にある「悪」:どう表現し、発散させるか」 臨床心理学者 山中康裕 
前のページへ戻る「「透明な存在」が実態を取り戻すには」 教育学者 下村哲夫 

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