こころの散歩道（心理学総合案内）/ 犯罪心理学 / 女性監禁/ノート

ノートに託された想い

　監禁されていた部屋の家宅捜査が続く中、少女の赤いランドセルやノートが発見されました。ノートには、家族の名前、自分の名前、学校の名前などを並べて、何回も何回もびっしりと書き込まれていました。

　おそらく、子ども時代に書いたものでしょう。思春期のころ、好きな人のことを想いながら何度もその人の名前を書くことなどがありますが、彼女は家族や学校のことを想いながら、何度もその名前を書き続けたのでしょう。

　孤独におびえ、恐怖に震え、激しい不安の中で、涙ながらに書いたのかもしれません。でも、これは、彼女の生き抜こうとする必死の努力だったと思うのです。

　主観的には悲しい、淋しい、弱い心で書いたのかもしれませんが、その心のもっと奥底で、負けないぞ、がんばれ、がんばれと、自分に言い聞かせながら書いていたような気がします。

　自分と家族は一緒で、学校のみんなとも一緒だと言う想いが、そのノートには詰まっているような気がします。

　辛かったよね。苦しかったよね。でも、よくがんばったぞ。えらかったぞ。ほんとに、ほんとに、えらかったぞ。

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　このニュースを教えてくれた地元紙の記者さんが、私のコメントを聞いて後で言っていたのですが、記者さん自身、この情報を知ったとき、手が震えたと言っていました。

　今、私も、その時の情景を思い浮かべながらこのページを書いていて、心が揺さぶられています。この犯罪のむごさを感じ、今ここにその当時の子ども時代の彼女がいたら、抱きしめてあげたいような気持ちです。

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行動すること　負けないために

　苦しみに打ち勝ったり、思いを遂げるためには、強い心が必要です。でも、私たちの心は、体や行動と切り離されてあるわけではありません。強い心を保つためには行動することが助けになることがあります。

　たとえば、禁煙しようとするとき、ただ心の中で決心するだけではなく、「禁煙」と紙に大きく書いて、部屋に張ったりするでしょう。行動することで、心を強めているのです。

　頑張る気持ちを高めるために、はちまきをまいたり、みんなで声をあげたり、手を振り上げたり、いろいろなことをするでしょう。

　無人島に流れ着いた人が、一日一日過ごした日を刻みつけていくことなどをします。たった一人の生活で、日にちなど数えても無意味なような気がしますが、そうではなくて自分を励ます道具になるのです。

　落ち込んでいるときには、まず心と体をいたわり、休むことが一番なのですが、少しだけでも元気があれば、たとえ心が沈んだままでも、うつむいたりせず、顔をあげて、元気に手を振って歩いてみます。すると、ほら、だんだん元気になってきますよ。

　ある映画で見たシーン。捕虜収容所に入れられた女性が主人公です。あるとき、彼女の友達の若い女性が兵士の気まぐれによって罰を受け、全裸にされて廊下に立たされます。

　大勢の兵隊や連行される捕虜の列が廊下を通ります。その子は恥ずかしさと屈辱で、うなだれて涙を流しています。そこを主人公が通ります。彼女は小さな声で、でも力強く言います。

「顔をあげて！　あなたは何も悪いことをしていないのだから。」

　涙を流していたその女性は、唇を噛みしめ、勇気をふり絞り、毅然とした態度で顔をあげます。りりしく、強く、美しい姿です。

　彼女は相変わらず捕らわれの身ですが、しかし、もう心は縛られていないのです。

＊

　たとえば、職場の中で、横暴な上司に理不尽に叱られているときも同じです。部屋中に響くような怒鳴り声の中で、うつむいて目に涙を溜めながら我慢するのではなく、目を上げます。

　逆らったりすればなおさら怒るでしょうから、逆らいはしません。でも、怒っている上司の目をしっかりと見ながら、口を開きましょう。

「すいませんでした」「申し訳ございません」「以後、十分に注意いたします」

　謝っているのですから、上司も文句は言えないでしょう。でも、不思議なことに何でもいいですから口を開くと、なんだか勇気が湧いてくるのです。

心によって行動がうまれますが、行動によって心が変わることもあるのです。

＊ノートに関する私のコメントが、地元紙新潟日報に掲載されました。また、2月3日の地元ローカルニュースで紹介されるとともに、TBSの昼、夕方、夜の全国放送ニュースで紹介されました。夜のニュース23では、オープニングの音楽と映像にかぶせて私の声が使われました。

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