過食と拒食の心理
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95年11月 「過食症に数年間悩まされた。うつ病になって、足や腕を自分で傷つけた」(英BBCの独占インタビューに答えて、ダイアナ自身が語る)
極端に食べ過ぎてしまう「過食」や「大食症」、逆に十分な食事をとらない「拒食」「食欲不振症」「思春期やせ症」などを合わせて、「食行動異常」とか「摂食障害」と呼んでいます。
単純な食べ過ぎやダイエットとは違い、心の問題があります。正しい治療をしなければ、時には命に関わる危険な状態になることや、心理的に孤独な状態になることもあります。ダイアナが具体的にどんな症状だったのかはわかりませんが、一般的な食行動異常と心の問題について、考えていくことにしましょう。ダイアナの人生と死を無駄にしないためにも。
食行動異常として有名なのは、過食よりも、むしろ「拒食」の方でしょう。1983年にカーペンターズのカレンが拒食症で死亡したことによって、この病気が有名になりました。宮沢りえの「激やせ」もマスコミをにぎわせましたね。
心の病としての過食は、たいていの場合、拒食の最中に現れます。片方だけが現れることもありますが、同じ心の問題が、両極端の二つの症状を生み、過食と拒食が交替に現れることもあります。心は食事を拒否しても、体は食事を求め、そのアンバランスが拒食と大食を生みます。そこで、このページでも、この両方について考えたいと思います。
他に病気がないのに、ひどいやせが何カ月にもわたって続きます。たいていの場合、30才以下の女性で、特に思春期に発病することが多いようです。月経も止まります。
普通なら、やせすぎの自分の体や月経が止まったことを気にするはずです。しかし、彼女たちは全く気にしないで、それどころか今の状態をとても気に入っています。今の状態が不自然だとは思っても、自分が異常だという認識(病識)は乏しく、かえってとても活動的になります。
心の原因としては、大人の女になりたくないという「成熟拒否」がよく言われます。だから、女らしいふっくらした体型や月経がなくなることは、うれしいことなのです。
途中で、大食に走ることもあります。ただし、すぐに指をつき込んでもどしてしまったり、下剤を使うので、体重が増えることはありません。
大食症は「むちゃ食い」を繰り返す摂食障害です。隠れ食い、盗み食い、拾い食い、気晴らし食いや、残飯あさりをすることもあります。人前では、大食しないこともあります。
ただの大食とは異なり、大食した後、気分が落ち込むうつ状態になり、絶望感、自己卑下、不安、葛藤などの感情が強くなります。大食後に吐いたり下剤を使う場合には、極端に太ることはなく、かえってやせるときもあります。
拒食とは異なり、自分が病的である意識を持ちやすく、そのため心理的な面接をとして治療も容易です。
よく見られる例として、学校や職場での葛藤状態の中での発病があります。拒食症と比較して、心理的に大人であり、対人関係もうまく行っていても、自分の能力を超えた目標や自分にはどうしようもできない状況で、ストレスが高まり、大食してしまいます。
(ダイアナもそうだったのでしょうか。)過食、大食症は、拒食症ほど話題になることは多くありませんが、現在のストレス社会の中で、拒食症よりも、隠れた患者数は多いという意見もあります。
成熟拒否の心理から、結婚や出産に関心が低くなることがあります。結婚しても、セックスに極端に消極的になることもあります。その逆に性的逸脱行動の走ることもあります。その結果、離婚になることもあります。
そのほか、手首を切って自殺しようとしたり、アルコールに浸ることもあります。
心の病は、体の病よりも、原因がよくわかりません。いくつかの意見があります。
* * *
・女性としての自分自身を肯定的に受け入れることができず、大人の女性になることを拒否する心理が働く。そのために食事を拒否して、女らしい身体になることを避けようとする。
・実際よりも太りすぎているという誤ったボディーイメージを持ってしまい、過度のダイエットを行う。その結果、心と体のバランスが崩れ、拒食症に発展してしまう。
・とても困難な状況で、ストレスが非常に高まる。その悩みを一時的に忘れるために、異常な食行動を行う。また、このようなことをすれば、周囲の人が自分に目を向けてくれる。
*これらの原因がからんでいることもあるでしょう。家庭内の問題、母子関係の問題なども大きいようです。また、家族の特徴として、親の社会的地位が高いこと、両親の間に葛藤があること、家族のそろわない会話の少ない食卓等が指摘されています。
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ここに書いたようなことを本人が意識して行動しているわけではありません。ただ、冷静になって自分を振り返ってみれば、心の中が見えてくることもあるでしょう。
ダイアナは過食や自傷行動が、SOSである心の叫びだったと語っているようです。
体の病気への偏見や差別はずいぶん減ったのに、心の病気に対する無理解と偏見は、まだ強く残っています。心の病は、それ自体の苦しみとともに、人々からの攻撃も受けています。
しかし、心の病も、体の病と同様に、必要なのは保護や治療や援助です。非難や軽蔑を与えるべきではありません。私も含めて、多くの人が完全に健康な心を持つことは難しく、誰でもが心の病にかかる可能性はあるのです。
食行動異常も、決して不治の病ではありません。早期発見、早期治療を行えば、治療が特別困難な病気でもありません。
ダイアナの勇気ある告白を一つのきっかけに、この心の病気への理解が深まることを願っています。
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