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岡崎朋美選手 スピードスケート女子500m 銅メダル!
昨日に比べて緊張しているなあと思ったら、マスコミ報道によれば、前の番はほとんど眠れなかったそうです。もともとプレッシャーには、強くないタイプだそうです。
女子スピード界の女王として活躍し続けてきた島崎選手と並んだだけで、以前は緊張して萎縮していたそうです。(スポニチ98.2.15)
きれども、一番の大勝負で、見事な集中力を見せてくれました。
「お前の手のひらの上でオリンピックは開かれているんだ。観衆を飲み込むんだ。」(長田富士急監督、五輪ナショナルコーチ)
「臆することなく、硬くならず、得意とする攻めのスケートができた」(同監督)
「無名だけど、やればできるということを証明できた。このメダルは光っていないけど、私の中では一番輝いているメダルです。」岡崎朋美
岡崎選手の銅メダルを悪く言う人はいないでしょうが、他人がどう思うかよりも、自分がどう思うかの方が大切です。もちろん結果は大切です。けれども、それと同時に、客観的な結果はどうであれ、自分で自分の結果を輝いていると感じられることこそ、すばらしいと思います。
「顔が真っ青になるほど努力する。途中で絶対投げ出さない。」(同監督)(読売新聞98.2.15)
島崎京子選手 5位入賞喜びいっぱいの岡崎選手と対照的に、島崎選手の悔しさやショックが伝わってきました。世界のトップレベルの実力を持ちながら、前回、前々回のオリンピックでも、あまり良い結果が出せませんでした。今回も、岡崎選手と同走だったことは、あまりプラスには働かなかったのでしょうか。
島崎選手の実力からすれば不本意な結果なのでしょうが、人生の中で、オリンピック5位入賞(自己最高)を誇りと思えるようになっていただければと思います。
(19日の1,000メートルにも出場するんですか? 納得のできるレースができますように。そして良い結果が得られますように。)
ノルディック複合 荻原健司4位
前半の9位から大健闘の4位でした。
「リレハンメルの時の4位は悔しかった。今度の4位は正直ほっとした」父親の談話(スポニチ98.2.15)
荻原次晴(弟)6位入賞
「満足している。次晴の名前をのこせたから。」
女子スピードスケート500メートル
はじめに島崎京子選手が日本新を出したと思ったら、すぐに岡崎朋美選手が記録を塗り替えて、日本新記録。島崎選手は、レース直後のインタビューには答えず、後で、コメントを出しました。「明日は、燃えます。」
明日の2日目は、岡崎、島崎の両選手が一緒に滑ります。互いにいい意味でライバル心を燃やして、レース後には二人の笑顔を見たいものです。
ノルディック複合前半
いつも、兄・荻原健司の陰に隠れていた弟・次晴。でも、今日は弟の方が、主役でした。
「荻原健司の弟としてではなく、次晴個人としてアピールすることができました。」(テレビのインタビュー)
男子スピードスケート1500メートル
いつもナンバー2だったノルウェーのセンデロール選手が、ついに金メダル。
「何度も何度も負けてきた。でもこういう経験は、これから生きていく上でもきっと忘れないと思う。負けることを恐れちゃいけないんだ」(asahi.com)
日本の女子カーリングチーム、予選敗退。
残念でした。莫大なお金をかけ作られる金メダリストよりも、むしろ私は、こういう普通の選手達を応援したくなります。
常呂町は、北海道のオホーツク海に面した人口5,500人の小さな町です。けれども、日本代表チーム男女合わせて10人中5人が、この町の出身です。日本唯一の屋内専用カーリングホールもあります。
実は、私は常呂町の隣の紋別市に6年間、住んでいました。常呂町の遺跡や資料館も見に行きました。ホタテもとってもおいしいです。
里谷多英選手モーグルで金メダル
「まさかの金!」オリンピックでは、期待されていた選手がダメで、全然期待されていなかった選手がメダルをとるということが、よくありますね。「里谷多英選手の金メダルで学ぶ心理学(依存と自律)」を作りました。
船木和 喜選手がジャンプノーマルヒルで銀メダル
「やはり五輪はちがうと思った。名前がコールされた瞬間に、大歓声がおきた。ゾクゾクして、気持ちよかった。」
大観衆からの声援をプレッシャーではなく、快感に感じた舟木選手の銀メダルでした。
原田雅彦選手は5位
一回目はトップだった原田選手。2回目のジャンプに失敗し、5位でした。「原田、また失敗ジャンプ!」なんていう報道もありました。彼の精神的な部分を指摘する報道もあります。一方、ジャンプそのものが失敗なのではなく、あくまでも風のせいだと言う人もいます。話としては、心の問題をとり上げた方がおもしろいでしょうが、あまり言い過ぎてはいけません。そんなことをすれば、彼をさらに追いつめ、「おまえは、大事な場面では必ず失敗するんだ」と暗示をかけるようなものだからです。
それにしても、いつも笑顔の原田選手。とってもいい人なのでしょうね。以前、「笑顔で世界を平和にできればうれしい」と言っていました。しかし、「原田の笑顔が逆に痛々しい」(朝日新聞2.12)という言葉に同感です。
ねえ、みなさん。原田さんが人前で少しぐらい暗い顔を見せても、不機嫌な態度をとっても、原田さんのことを嫌いになったり、軽蔑したりしませんよね。原田さんは、オリンピックというすごい舞台で戦っているのですから。
原田選手自身が、以前、テレビのインタビューに答えて言っています。「何も考えずに、あたまを真っ白にすることが、いいジャンプの秘けつだ。」
原田選手にとって納得のいくジャンプができることを、かげながら祈っています。
清水宏保選手500メートル金メダル
前日(9日)の一日目のレースでトップになり、マスコミは、金だ、金だと、大騒ぎ。これは大変なプレッシャーだなあ。だいじょうぶかなあと心配していたら、やってくれました。重圧を跳ね返すみごとな金メダル。とてもさわやかな優勝でした。「清水選手の金メダルで学ぶ緊張とリラックスの心理学」を作りました。
小柄で、喘息気味だった子供時代。父の愛と特訓。母の苦労。父の死。映画ができそうな金メダルストーリーです。
「記録はいつも、数え切れないほどのドラマに後押しされて生まれる。」(新潟日報98.2.11コラム欄「日報抄」より)
悪天候・物理の世界と心の世界
悪天候のために、試合の延期がいくつかありました。スキーの解説者によると、「ちょっと視界が悪くなっただけで、気持ち的に引いてしまう」のだそうです。もちろん実際の視界の悪化や、新雪による影響もあるでしょう。でも、実際の環境の変化以上に、「不安」や「あせり」などの影響力が、人の心に働いてしまうのです。
スポーツの問題だけではありません。たとえば、何かの商品や作物がちょっと品薄になっただけで、実際の需要と供給のバランスの問題を越えて、値上がりしたりします。商品が足りない、なくなるかもしれないという気持ちが、人々の行動をつき動かしてしまうからです。
インタビュー
プロテニスプレイヤーの松岡修造さんが、本番直前の選手達にインタビューしていました。ところで彼は、試合の前にインタビューされることがとてもいやだったそうです。「集中しようとしているのに邪魔だ!」と感じたそうです。しかし、その彼が、今度はインタビューする側にまわりました。
彼の個人攻撃をするつもりは全くありません。彼はとても一生懸命に、そして誠実に、自分の仕事をしようとしているように見えました。でも、マスコミもスポンサーも、「オリンピックを応援しています。」「ガンバレ!ニッポン!」なんて盛んにやっていますよね。
視聴者にとっておもしろい情報を流すことが「応援」なのか、選手がベストコンディションで試合に臨めるように協力するのが「応援」なのか、どちらなのでしょう。
これとは別の問題なりますが。
日本の男子モーグルの有力選手が、転倒して予選落ちしてしまいました。滑り降りてきた直後に、松岡さんがインタビューしました。はじめは普通に答えていたのですが、しだいに悔し涙を流し始めました。
これは、すばらしい映像とインタビューなのでしょうか。それとも、こんな時は「武士の情け」で、そっとしておいてあげるべきなのでしょうか。松岡さんは、どう感じられたのでしょうか。
開会式
対人地雷と子供達
大金をかけた大仕掛けの演出よりも、地雷除去作業中に右手右足を失ったクリス・ムーンさんが、大勢の子供達と一緒に登場したシーンに一番感動しました。20世紀末の大きな問題と21世紀を背負う希望にあふれる子供達とのコントラストがとても鮮やかでした。
児童劇団の子達などではなく、地元の子供達を使ったのも、とても良かったと思います。子供達の中には、耳の不自由な子や目の不自由な子ももいたそうです。
「スポーツを愛する人、障害に立ち向かう人、平和を願う人の代表として走れることに感謝したい。」 クリス・ムーン
伊藤みどりさんが聖火台に点火
人選も演出も、特に何も感じませんでした。でも、伊藤みどりさん自身が、点火の瞬間、感動して感極まっている様子が伝わってきたのが、とても良かったですね。結局、人間の心に最も影響を与えるのは、人間の心なのですから。
原田雅彦選手
ところで、オリンピック直前2.5のスキー・ジャンプのワールドカップで、「原田雅彦選手がまた失敗ジャンプ。踏切に失敗、66メートルで最下位!」という報道を見ました(2.6)。
原田選手はニコニコと観客に応えていました。前回のリレハンメルオリンピックの時も、失敗の直後は座り込んでしまいましたが、その後は笑顔でした。
でも、彼は激しく落ち込んでいたのです(最近テレビで彼自身が語っていました)。この4年間の彼の技術面、精神面双方の努力は、並大抵のものではなかったでしょう。
落ち込んでも人前で笑顔でいられるのは、彼の強さでもあり、また弱さとも言えます。本番前からあまり追いつめないでほしいものです。
心の強さと弱さ(強がりと悲しみの表現)
落ち込んでいても、笑顔でいられるのは、もちろん心の強さです。でも、時には、悲しみを表現することも必要です。
涙を流すのは、心の弱さの表れとは限りません。不良少年達が強がって見せているのは、本当に心が強いのではなく、自分の心の弱さを表現できるほど、心が強くないからです。
自信のない人格的に未熟な教師が、生徒から間違いを指摘されたりすれば、真っ赤になって怒って、大声で怒鳴りちらすかもしれません。その一見強そうな態度は、実は弱さの表れなのです。自信のある教師は、素直に間違いをわび、間違いに気づいた生徒の熱心さをほめる余裕もあるでしょう。わびるという一見弱い態度は、実は強さの表れなのです。
悲しいときには、悲しみを表現できた方が、後に心のしこりを残さないようです。愛する人が死んだとき、大失恋したとき、不治の病の宣告を受けたとき、無理に冷静さを装うより、しっかりと悲しみ、その感情を表現した方が、早く立ち直ることができるようです。
阪神大震災の後、直後には、とてもしっかりとしていた子供が、しばらくあとになって、心理的にくずれるケースがありました。あなたは、失恋して、一晩泣き明かして、そうしたら少し心がすっきりした体験などはありませんか。
原田選手の場合は、奥さんに、自分の本心を表現することができたようです。私自身、人前で弱さを出すのは、とても苦手です。ある面の心の弱さの表れですね。でも、やはり家族が支えになってくれています。
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