心理学総合案内「こころの散歩道」/ 犯罪心理学 /少年犯罪の心理 /中学生 ホームレス暴行死事件/第一報
都内の中学生達が、図書館で叱られたことを恨み、ホームレスの男性に暴行を加え、死亡させました。14歳の少年3人が26日に傷害致死の疑いで逮捕され、13歳の少年は児童相談所に通告されました。
まだくわし情報はわかりませんが、少年達は暴力や犯罪行為を仕事にするような生徒ではなく、その意味では「普通の」子どものようです。普通の子どもたちが起こした事件だからこそ、私たちは衝撃を受けます。
なぜ、普通の子が!? しかし、もしも彼らがもっとワルだったら、多分こんな事件にはならなかったでしょう。仕返しをするにしても、自分は痛い目に会わないような方法を考えるはずです。
悪質なイジメッ子は、誰かを殴るときに顔にあざなど作りません。すぐにばれてしまうからです。ばれないように、腹を殴ることでしょう。被害者を脅し、しっかり口止めするでしょう。
そんな悪知恵が働かず、自分の行為と刑罰の計算などできない普通の子だからこその犯罪かもしれません。
一般的に、今まで補導歴のないような子どもが起こす重大事件を、いきなり型と呼んでいます。ただし、「いきなり」と感じるのは、大人の側であり、少年の側には目には見えなくてもそれなりの準備状態があることのほうが多いようです。
大人でも、普段おとなしい人が突然キレて怒鳴ったりすれば、周囲は「いきなり」と思うでしょうが、本人としてみれば、我慢に我慢を重ねた末の爆発です。
少年の場合も同様でしょう。多くの場合、大人には感じ取れなかったけれども、ストレスがたまっていてのかもしれません。
報道によると、少年達は図書館でこの男性に叱られていました。その仕返しをしたというわけです。少年が暴力を爆発させるとき、多くの場合、プライドが傷つけられたと感じています。バカにされたと感じるわけです。
本来のゆったりとした自信に満ちあふれた人は、多少人から何かを言われても動じません。しかし、本当は自信がなく、それでも自信があるように生きている人にとって、プライドが傷つけられた痛みを自分の中では処理できなくなることがあります。
校内の対教師暴力などもそうですが、暴力のきっかけは、しばしば「正しい言葉」です。相手が間違っている場合には、実際にも心の中でも反論できるから良いのですが、正しい言葉は強く激しく、子どもの心に突き刺ささってしまうのです。
(もちろん、被害者男性は何も悪いことはしていません。むしろ当然のことをしただけなのですが。ご冥福をお祈りいたします。)
*その後の報道で、事件前日の図書館において、すでに殴り合いが起きていたことが判明。叱られた言葉に腹を立てただけではないことが判明。そのときに、どちらが先に暴力を振るったかなどは不明。1.26.19:30
青少年達は、昔から攻撃的であり、暴力的です。特に、大人、学校、政府、常識とか体制というものに反発するものです。
しかし、最近の少年犯罪者達の攻撃は、弱者へと向かいます。少年達の攻撃心や、反発心自体は悪いことでではないと思うのですが、それが弱者へ向かってしまうのが、現代社会の病んだ部分でしょう。
今回の事件は集団で起きました。誰かが、仕返しをしようという。後をつけたり、仲間を集めたり、復讐計画をねる。誰かが最初の一発を殴る。本来なら、どこかで誰かがブレーキをかければよいのですが、いわゆる集団心理は逆に働きます。
その雰囲気の中で、やめるように言うのは、その集団の中ではむしろ間違ったことになってしまうのです。集団の中で、考えも、行動も、どんどんエスカレートしてしまったのでしょう。
(また、ある種の心の障害を持った人の中には、ひとたび始まった暴力を止められない人もいます。)
人が死んでしまうまで暴力をふるいつづける。もう、子どもの行為とはいえないかもしれません。しかし、ささいな動機で、行動がエスカレートし、計画的犯罪だけれども、逃亡計画はなきに等しい。事件が大事(おおごと)になって、親に付き添われ、泣きながらやってくる。
これは、典型的な子どもの犯罪と言うこともできます。私たちは、傷害致死という行為だけに目を奪われてはいけないと思います。
改正された少年法により、14歳の少年でも刑事罰を受ける可能性があります。この改正は、今回の事件の抑止力になったのでしょうか。おそらく、ほとんど無力だったでしょう。法的問題などを考える余裕があれば、こんな犯罪ははじめから起こさなかったでしょう。
「凶悪犯罪を抑止するための刑罰という発想は、暴力行為を犯したさいの犯人の心理状態を無視するものである」(ドロシー・ルイス著『殺人少年』徳間書店)
事件がおきた市では、臨時の校長会が開かれています。他の生徒たちの動揺を鎮め、落ち着かせることは大切です。この機会に、命の大切さを教育することもすばらしいでしょう。
ただ、一部の生徒たちが起こす暴力や犯罪の抑止ということでは、一般的な道徳教育や感動的な講話だけでは、あまり効果がないかもしれません。
治療が必要な場合もあり、罰よりも愛を受け必要もあるかもしれません。甘やかせというわけではありません。自分の行為に責任が持て、しっかりと幸福な人生を歩み取っていけるような援助を、学校でも家庭でも地域でも行っていければと思います。
2002.1.28 (14:00)
*「謝らせたかった」 集団心理が暴行加速(毎日新聞)という記事がネット上に載っていました。集団心理に関するもう少し詳しい内容を現在準備中です。今晩中に更新予定。1.28. 19:00
○事件の概要 1.29.
○集団心理・群集心理 1.29
○中学生 ホームレス暴行死事件 その2 1.29
謝らせようと思った・仕返し、うらみの心理・ホームレス、偏見差別・少年達はワル?
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