上原美優心理学 総合案内 こころの散歩道 (心理学講座)/自殺の心理/上原美優自殺新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科・ 碓井真史)

上原美優さん自殺から考える自殺予防の心理学

貧乏、不幸、自傷、喪失を越えて

2011.0513

ウェブマスターによる新刊(2010年5月27日発行)
あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ
自殺予防のために・いのち輝かせるために

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「貧乏タレント」として人気のあったタレントの上原美優さん(24)が、自宅マンションで首をつって亡くなっているのが、発見されました(2011.5.12未明)。自殺と見られています。 
愛用の手帳に「お母さんが死んで辛い。このままのスタイルで仕事して先行きどうなるか」といった趣旨の殴り書きが残されていました。
若いタレントさんの自殺は、若者たちに少なくないショックを与えているでしょう。
 



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タレント上原美優さん

上原美優さんは、鹿児島・種子島出身のタレント。10人兄弟の末っ子として生まれました。アイドルとしてデビュー後は、子ども時代の「貧乏話し」を明るく語り、人気が出ていました。

上原美優さんの苦しみ・自殺の準備状態1

テレビでは明るく語っていた大家族の貧乏話ですが、自著10人兄弟貧乏アイドル☆―私、イケナイ少女だったんでしょうか?を見ると、本当につらかった様子がわかります。母親との親子関係も悪化していきます。
自分は愛されていないのではないか。いらない子どもなのではないか。どうでもよい存在なのではないかと思い始めます。
母親からゴキブリを投げつけられたり、包丁を投げつけられたりしたこともあるようです。働き者のお母さんだったようですが、苦しい経済状況の中で、不安定になる時もあったのでしょうか。
上原美優さんにとっても、安心感のある家庭ではなかったようです。
それでも、上原美優さんが故郷を離れ、高校進学するときには、母が港に立って手を振っていてくれた、かばんの中に3万円ものお金を入れておいてくれたことに、彼女は感激しました。
働きながら高校進学した上原美優さんでしたが、高校生活も上手くいきませんでした。親に仕送りをしながら、授業料を稼ぎ苦学していましたが、経済的な問題は重くのしかかり、クラスの友人たちともうまくいかなくなり、退学します。
上原さんは、自傷行為や暴走など、荒れた生活を始めます。
しかし、姉の助けもあり、彼女は芸能界にデビューします。タレント上原美優の誕生です。
家族心理学:不幸を背負わないで:がんばってきたあなたのために:機能不全家族

母の死と自殺の準備状態2

芸能界にデビューし、人気を得て行くものの、やはり不安定なところはあったようです。失恋による自殺未遂もありました。
不安定な人気商売である芸能界の問題もあったのでしょうか(韓国では芸能人の自殺が相次ぎ、問題になりました:パク・ヨンハさんの自殺から考える自殺予防の心理学
上原美優さんは、
「私が死んだら誰かが悲しんでくれるだろうか」、そんなことを確かめたい気持ちになってしまうほど精神的に追い詰められたと語っています。
リストカットの跡も、生々しく残っていました(テレビに出る時は隠していましたが)。
彼女の心の中には、不安定な部分がそのまま残っていたのでしょう。
そのような中、昨年母親が亡くなります。母親のためにテレビに出ていたと語らう上原美優さんにとって、大きな喪失体験です。
家族、仕事などを失う大きな喪失体験は、自殺への危険性を高めます。

自殺の直接的きっかけと自殺のサイン

直前のブログには、恋愛の悩みが書かれていました。自殺当日も、交際中の男性が部屋にいました(わざと一人にしてもらった時に自殺を実行)。恋愛問題が直接のきっかけだったのでしょうか。現在、まだよくわかりません。
自殺の準備状態が高まっていると、たとえ小さなきっかけでも、自殺してしまうことが李ます。
自殺の公式=自殺の準備状態×直接原因
女優可愛かずみさん自殺から考える自殺予防心理学の基礎:自殺の公式、自殺の伝染
上原美優さんのブログには、「早く結婚したいのに まぢ焦る−−−!!!汗」とも書かれていました。彼女は苦しい子ども時代だったからこそ、良い家庭を築きたいと思ったのかもしれません。それなのに、恋愛や結婚が上手くいかないのは、大きな悩みだったのかもしれません。
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彼女は自殺のサインを出していました。
自殺未遂も、自傷行為も、今回の自殺のサインと考えてよいでしょう。
そして、死の前日、父親と電話で話しています。
『もう仕事をやめて種子島に帰りたい。お母さんの所に行きたい』と泣いていました。

なぜ自殺を止められなかったか

上原美優さんが亡くなったのが、12日未明。その日の朝の番組で、友人であった眞鍋かをりさんが、泣きはらした顔で出演していました。生放送直前に上原さんの自殺を知ったそうです。
1カ月ぐらい前に「話したいから会いましょう」という内容のメールがあったが、お互いのタイミングが合わず会えなかったと悔んでいました。
死の前日電話を受けたお父さんは、「種子島に帰って来い」「私があした迎えに行くから」と語っています。本当に迎えに行って行けていたら、自殺は防げていたかもしれません。
しかし、その後上原美優さんから、「もう元気になったから、仕事行くから、大丈夫だよ。(迎えに)来ないでいいよ」という電話があったそうです。結局迎えにはいきませんでした。
その他にも、何人もの芸能人の方々が、とても残念がっています。不安定になっていたことを知っていた人は、何人もいました。それなのに自殺を止められなかったのは、とても残念です。
自殺を止められなかった方々を責める気持ちは決してありません。悩んでいる方々は、みんな良い方々で、一生懸命な方々です。むしろご自分を責めすぎている友人やご家族のことが心配です。
お父さんも、無理強いすることなく、優しく言葉をかけています。
しかし、上原美優さんの真面目で誠実で一生懸命な部分が、災いしてしまったのでしょう。もしも、彼女が誰かにどうしようもなく泣きつくことができていたら、今回の自殺はなかったかもしれません。とても残念です。

明るさ、真面目さ、元気さ、誠実さ、一生懸命さ、そして心の傷

自殺をする人は弱い人だとか、卑怯だとか、命や人生を大切にしていないなどと言われることがありますが、そんなことはありません。
いいかげんなひとであったなら、もっと適当に生きて行きます。真面目だからこそ、苦しくなってしまうのです。
芸能人、アイドルとしての「上原美優」は、明るくて元気でした。貧乏で不幸な生い立ちを乗り越えてきたバイタリティーを感じました。
けれども、幼いころの心の傷は完全には治っていなかったのかもしれません。彼女は愛を求めていました。どこかに寂しさを抱えていたのかもしれません。それでも、彼女は芸能界の人々からも、ファンからも愛されていました。
もう少し長く生きることができたなら、彼女の心の傷は、少しずつ、きっと癒されていたことでしょう。
傷ついた子ども時代からの癒し:インナーチャイルド

自殺報道と自殺予防

自殺の第一報が入った12日の翌日、13日のワイドショーは、上原美優さんのことを大きく取り上げっていました。しかし、番組によってはこの話題を30分も取り上げておきながら、自殺予防に関する情報が何もない番組もありました。
センセーショナルな自殺報道は、次の自殺を誘発します。自殺連鎖が起こります。
大きな自殺報道をするときには、かならず同時に自殺予防に関する内容が必要です。
自殺した人が身近な人、有名人なども場合は、要注意です。特に同じような悩みを抱えている似た立場の人。たとえば、若い女性で、経済的な問題や、親子の問題、恋愛の悩みを抱えている人が近くにいたら、注意深く見守りましょう。
あなたの一言が、自殺を防止するかもしれません。
「死にたい」「消えたい」「いなくなりたい」そんな言葉を聞いた時には、お説教はいりません。ただ、「あなたが死んだら私は悲しい」と伝えましょう。

貧乏と不幸な生い立ち

やはり不幸せな子ども時代を送った人は、だめなのでしょうか。いいえ、そんなことがあるわけがありません。子どもの頃の苦しみは、それを乗り越えさえできれば、人生の大きな財産です。苦しい環境で育った方々が、とても素晴らしい人になることは、珍しいことではありません。
ただ、時間はかかるでしょう。ゆっくり、ゆくりと、人は成長します。長い年限つの跡で、あの時の苦労も自分の人生へのギフトだと思えるようになる時が、きっと来るのでしょう。生きてさえいれば。生きてさえいれば、きっと幸せをなることができるのでしょう。
上原美優さんのご冥福を心からお祈りするとともに、同じな悩みを抱えている方々の幸せを心からお祈りしています。
癒しの心理学

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