自殺したいと言われた時にあなたにもできる自殺予防カウンセリング面接
心理学総合案内こころの散歩道」/自殺予防の心理/自殺相談の受け方(新潟青陵大学・碓井真史


自殺したいと言われたとき
自殺予防のために

そして、伝えたいメッセージ


死にたいと言われたら・話を聴く・自分を守る・カウンセリング・価値観・自己決定・生きる意欲・伝えたいメッセージ・原則と例外・インターネット・うつ病
2003.9.12(2009.4.2加筆修正)

投稿欄(掲示板

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死にたいなんていわれたら、

 誰かから、「死にたい」と言われたとき、誰かの相談に乗っていて、「自殺したい」なんて言われたとき、あなたならどうしますか。
 誰だって、びっくりします。ショックを受けます。そして、不安になります。
 死にたいとか、自分はいらない人間だとか、いなくなった方がみんなの幸せだとか、そんなことを友人や生徒や家族から言われたら、心はとまどい、冷静さを失い、そして、不安になるのです。
 人は、他の人の望ましくない言動で自分が不安を感じると、そうすると、正論をはきたくなります。正しいことを言いたくなります。
「死んで花実が咲くものか」
「もっと強く生きましょう。」
 これらの言葉は、「正しい」言葉です。正論です。
 こういう正論を一生懸命話してているうちに、自分自身の中の不安がだんだん下がってきます。自分の心がしだいに落ち着いてきます。そうして不安が和らいだところで、「わかったね、じゃあ、さようなら」と去って行ったりします。
 言っている本人は、100パーセント善意なのですが、一生懸命語ったこの言葉は、実は、相手のためではなく、自分の不安を下げるための言葉だったりするのです。
 人は、悩みがそれほどではないときには、元気な励ましで強くなれます。しかし、悩みが深いときには、元気な正論をぶつけられても、

ああ、この人も私の気持ちをわかってくれない」と、

その場を去っていくだけです。それで会話は終わってしまいます。そこに解決はありません。
ただ明るく前向きな言葉がいつも良いとは限りません。

死にたい人の話を聴こう

 深い悩みを持っている人にとって必要なことは、話を聴くことです。
 死にたいなんていわれたら、誰でも不安になりますが、それでも、「どうしたの?」と話を聴きましょう。

説教する前に、相手の言葉に、相手の心に耳を傾け、話を聴きましょう。

 死にたいと言ってきた人の自殺を予防するためには、まず、ともかく、話を聴きましょう。

 そんな話を聴くことは、楽しいことではありません。楽なことではありません。話を聴く方も辛い作業です。でもそれが、自殺予防のためには必要です。
 死にたいと思うほどの苦しみ、辛さ、悲しみ、悔しさ、恨み、怒り。話さないままで死んじゃうなんて、そんなことしないで、どうか話してくださいと。
 話を聴いてくもらうことは、私たちが想像している以上に、大きな力になります。

話を聴いてもらい、共感してくれることは、生きる意欲につながっていきます。うん、辛いよね。うん、うん、悲しいよねと。

 そんな気の弱い話を聴いていると、説教したくなる人もいるでしょう。でもまず、話を聴いてください。お説教や、感動的な話は、また後で、その人の心がもう少し強くなって、話が聴ける状態になってからでも、遅くありません。
 話を聴いてください。正論によって会話を終わりにさせないで、会話を続けてください。
 ともかく会話を続けましょう。会話している間は、自殺できません。
「また電話してください」「また明日話してね」「約束だよ、もっと話を聞かせてね」
 話を聴き、共感することが、生きる意欲につながり、自殺予防につながります。また、ともかく会話を続けることで、自殺を先延ばしにできます。どんな理由でも良いから、とにかく自殺を先に延ばせれば、その間に弱った心がしだいに回復します。そうなれば、苦しい現実が何も変わらないときでも、死のうとはしなくなります。

だから、話を聴きましょう。
>>カウンセリングマインド:弱っている人を助けるために ・ カウンセリングマインド2:話を聞くということ(心理学総合案内こころの散歩道
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自分を守ろう

 でも、そんな暗い話を聴きつづけることは、こちらだって辛い。だから、自分の心を守りましょう。あなたが、強さや冷静さを失ってしまっては、相手を助けることが難しくなります。
 あなたのできる範囲で、精一杯やりましょう。
 自分を守るために、自分を助けてくれる人も探しましょう。自殺の話は、相手の信頼を裏切ってはいけませんけれども、自分ひとりだけで抱え込むには大きすぎる話題です。職場や、学校や、家庭の中なら、信頼できるほかの人と、その問題を共有しましょう。

カウンセリング的面接のための、しっかりとした価値観

 自殺したいなんて、誰だって不安になるような話を聞いても、こちらが冷静さを失わないためには、私は、聞く側の心の健康と確固たる価値観が必要だと思います。
 カウンセリングの本などを読むと、カウンセラーが、相談にきたクライエントの問題に振り回されたり、巻き込まれたりせずに、そして同時に共感的理解を示すためには、しっかりとした価値観を持つこと、そして、その価値観を振り回さないことが、勧められています。
 他の問題でも同じだと思います。引きこもりの人の話し、自分は無価値だと言う人の話。こういう話は、聞く側を不安にさせ、時には不用意な「正論」や「説教」を引っ張り出してしまいます。
 引きこもりの人に、働いたり、勉強したりする意義を説教しても、相手をイラつかせるだけです。
 不用意な言葉で人間関係を崩さないためにも、しっかりとした価値観が必要です。
 働くことのすばらしさ、学ぶことのすばらしさ、すべての人間にある真の価値。こういう価値観をゆるぎなく、しっかりと持っていて、それで、そうではないという言動をとる人を前にしても、不安が高くならず、落ち着いて相手の話を聴くことができるのです。
 だから、しっかりとした価値観を持ちましょう。本当にしっかりとした価値観を持ち、自信を持っていれば、それを振り回すことはありません。価値観が揺らぎそうなときこそ、振り回してしまいがちです。あるいは、正しく、はっきり主張すべきときに、自信が持てなくなり、主張できなくなってしまいます。
 「こんな私でも、生きていていいのでしょうか」
 「こんなだめな僕なんか、死んだほうがましですよね」
 「私なんか生きていても、みんなに迷惑をかけるだけだ。死んだほうが良いんだ。」
 本当に過酷な状況で、こんなことを言う人たちがいます。こんなとき、心の片隅にでも、「ああ、そうかなあ。死んじゃったほうがいいのかなあ」などと思ってしまえば(自殺予防ではなく自殺推進を考える人を除けば)、自分のその思いに慌ててしまいます。冷静さを失います。
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カウンセリング的面接の目標

 話を聴くことを強調してきましたが、カウンセリング的な面接は、ただ話を聴くだけではありません。カウンセリングの人間観は、「人は自ら良くなる力を持っている」という人間観です。
 人は、心の健康を取り戻せば(自己一致できれば)、自ら生きる意欲を取り戻すことができるという信念に基づいています。
 だから、ただ人の話を聞いて、その結果、その人がどうなろうともその人の自由だとは考えません。相談者の自由と自己決定は確かに重んじますけれでも、その人が何をしても勝手だと考えているわけではありません。
 心が弱り、生きる意欲を失っている人、やけになったり、いじけたりして、自己決定する力が一時的に弱っている人々に、話を聴くことで共に寄り添い、側面からサポートし、その人が心の健康を取り戻し、真の自己決定ができるようになることが、カウンセリングの目標です。
 きっとそうなることができると信じているからこそ、じっくり、人の話を聴くことができます。
 そして、自殺は、冷静な自己決定の結果による決断ではなく、心が弱り(自殺準備状態にあり)、孤独と絶望感に押しつぶされた結果の行為なのです。
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死にたいと言う人に伝えたいメッセージ

 あなたにも価値がある。あなたにも生きる意味がある。あなたもされている。あなたも一人ではない。そのことに、気づいてほしいのです。

 あなたはどうですか。大切な人に自殺なんかして欲しくない。でも、ただ生きているだけでいいですか。できることなら、自分の価値を信じ、愛を信じ、生き生きと暮らしいて欲しいと、願わないでしょうか。

 こいう思想が、真実なのかどうかは、宗教や哲学の分野で、心理学のような科学が、答えることではないかもしれません。しかし、こういう考えをもつことが、生きる意欲心の健康につながることは、心理学的にも言うことができます。

 だから、私は、こいうメッセージを伝えたいと思っています。

「あなたも愛されているし、あなたも一人ではないのですから」

 このメッセージを伝えるとても有効な一つの方法が、お説教ではなく、カウンセリングであり、傾聴し、共感するという技法です。

 相談に乗っているときに、死にたいと思っている人の話を一生懸命聴くことに加えて、何かを語りたいとしたら、こう言いたいと思います。

「あなたの話を、もっと、もっと、聴きたい。」

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他の方法でも。そして語るすばらしさ

 このメッセージを伝える方法は、カウンセリング的面接が、唯一の方法ではありません。そのメッセージを直接言葉で伝える本を書いたり、ホームページを作ったり、掲示板や、メールマガジンで発言したり、歌や演劇で表現したリ、いろいろな方法があります。どれも、すばらしことだと思います。私は、共感できます。

 こういうところで、真剣に生きるすばらしさを表現している人たちの多くは、決していいかげんな気持ちで語っているのではなく、生きる辛さ、人間の醜さを知ったその上で、それでも、命の価値を語っているのだと、私は思います。
 ただし、どんなご馳走も、お腹をこわしている人には苦痛にしかならないように、このような言葉も、苦痛に感じる人はいるでしょう。お腹の調子が悪いときにはおかゆが欲しくなるように、そんな気持ちのときには、もっとちがった言葉が欲しくなります。
 そういう人もいるという想像力は、常に持っていなければなりません。
(でも、だからといって、とんかつ屋が中華粥の店に変わる必要はないと思いますが)

自殺予防の方法 原則と、そして

 自殺予防の標準的な話としては、話を聴こう、共感しよう、です。

でも、いつも原則に縛られることはありません。時には、特別な方法が効果的なこともたしかにあります。
 「死ぬな、ばかやろう!」と、泣きながら殴りかかって、そして、自殺を防止できたこともあるでしょう。しかし、だからそうしましょうとは、いえませんが。
 この二人の特別な人間関係、このときの特別な状況にあって、はじめて効果が出たことですから。
「学者さん」の中には、一般的な原理原則だけで、個々のケースが見えなくなってしまう間違いを起こす人もいます。

 また、「個人」の中には、自分自身の体験を一般化しすぎて、原理原則や、他のケースを認めない人もいます。

どちらも、気をつけましょう。
 死にたいと思っていて、そこに、生きようとする言葉、人生はすばらしいという言葉が伝えられたり、励ましを受けて、そして死を思いとどまる人々は、これは例外的ではなくて、たくさんいます。
 昔、「ああもう死んでしまおう」と思っていた中小企業の社長さんが、偶然NHKテレビの「ひょっこりひょうたん島」ドンガバチョの歌を聞きました。
「今日がだめなら、明日があるさ、
明日がだめなら、あさってがあるさ、
あさってがだめなら、しあさってがあるさ。
どこまでいっても、明日がある。」
 この歌を聞いて、「生きていこう」と思いました。
 私が以前出演したNHKテレビ「特報首都圏」のなかで、紹介された事例です。

 あるメーリングリストに参加していた男性が、もうだめだ死んでしまおうと思い、死に場所を探して、車で郊外へと向かいます。ノートパソコンから、最期の書き込みをしました。そして、さあ死のうとしたそのとき、もう一度だけ、メールを開いてみました。
 そこには、びっくりするほどの多くのメールが寄せられていました。

「死なないで」
「もっと生きよう」
「あなたのことがとても心配だ」
「命を大切にしよう」
「辛いよね」
「君が死んだりしたらとっても悲しい」
「生きていれば、きっと良いこともあるよ」
 断続的に、次々と、一晩中、いろんな人からメールが寄せられました。かれは、泣きながら、メールを読みつづけます。
 メールを読みつづけ、そして…

朝になりました。
彼は、もう一度生きてみようと、思ったのです。

ネットと自殺の問題

 「傾聴しましょう」というのは、主に直接面談する場合や、電話の場合です。ネット上では、少し違います。傾聴と共感の態度はとても大切です。しかし、面談のように、うなづきながら直接じっくり話を聞くことはできません。
 たいていは、カウンセリング的面接でもありません。そして、文字による会話です。そのための難しさがいろいろあるでしょう。
 多くの場合、相手からは、わずか数行の書き込みしかありません。こちらから返信しても、その一回だけのやり取りで終わることも多いでしょう。
 私は、一通のメールの中で、前半は、一生懸命、傾聴と共感的態度で文章を書き、そして場合によって後半では、もう少し直接的に伝えたいメッセージを語ることもあります。

当サイト内の関連ページ
返信:いやしのために2(死を考えている人への返信)
どうして生きることを勧めるのですか (メールに答えて)
インターネット心理学(より良いネットコミュニケーションのために)

 ネットでは、さらに、ややっこしい問題があります。
 現実世界では、お腹の下っている人が、わざわざとんかつ屋に入ることはありませんし、しんみりしたい人が、元気いっぱいの本をそのときわざわざ買って読んだりしません。
 ところが、ネット上では、たとえば「自殺」のキーワードで検索をかけて、このサイトや掲示板に来てくださる方々がたくさんいます。
いろんな思い、様々なニーズを持った人々が、突然訪問されます。
 もちろん、当サイトは、できるだけ多くの人々の期待にそいたいとは願っていますけれども。
 特に掲示板は、すばらしい出会いもあれば、誤解やすれ違いも多くあります。
当サイトにかぎらず、ネットの利用者には、やはり「自己責任で」としか、私としては言いようがありません。

こころの散歩道:掲示板について

 もちろん、すべての人にとって、良い出会いがありますようにと、心のそこから願っていますけれども。
 ネット上の問題は、まだまだこれからの問題です。
 長文におおつきあいいただき、どうもありがとうござました。
 
うつ病の人との接し方:家族、友人、同僚のために(自殺予防のために)
 はげましていけないのなら、どうすればよいのか。
碓井真史のツイッター 碓井真史のフェイスブック
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自殺と自殺予防の心理学
心理学 総合案内 こころの散歩道 (心理学講座)

当サイト内の関連ページ(心理学の幅広い知識がお役に立つように)
  
うつ病の人との接し方:家族、友人、同僚のために(自殺予防のために)

とてつもなく悲しいとき、 どうしようもなく落ち込むとき
いなくなってしまいたい(うつ病の自殺予防)
今のあなたの力で:インナーチャイルド(傷ついた子ども時代からの癒し)
もうだめだ!(絶望からの癒し)
家族心理学:不幸を背負わないで(家族問題からの癒し)

癒し(いやし):心の病と悩み解決のための臨床心理学情報


心理学入門講座


「おくりびと」「つみきのいえ」アカデミー賞から思う 命と死と人生の心理学1
命と死と人生の心理学2:いのちは誰のもの

リンク

東京いのちの電話  (03)3264-4343
NPO 国際ビフレンダーズ・大阪自殺防止センター (06)6251−4343


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