心理学 総合案内 こころの散歩道/ 犯罪心理学 /少年犯罪の心理 /東京管理人夫婦殺害事件2  (新潟青陵大学・碓井真史)

少年犯罪の心理
板橋両親殺害事件の
犯罪心理学 2

〜愛が届かなかった家族〜


2005.7.13

 

母の愛に気づかず…両親殺害の少年、通帳の名義見て涙

 本日(05.7.13)の報道によると、少年は、母親が少年名義で預金していた20万円の通帳を見て、涙を流していたといいます。
20万円どころか、両親は多額のお金を少年のために使ってきたわけですし、これからのことも考えて、その20万円以外にも、きっと少年のための蓄えがあったことでしょう。
お金のことだけではなく、両親は息子のことを愛し、気づかっていたことでしょう。でも、その愛は、少年には届いていませんでした。 

届かない親の愛

 愛はあるのに、愛が届いていない。それは、この家庭だけではなく、現代の多くの家庭に見られることでしょう。

中には例外的に文字通り愛のない親もいるかも知れません。子どもに保険金をかけて殺してしまうような親です。けれども、ほとんどの親は子どもへの愛を持っています。

 虐待しているような親でさえ、本当は愛しているのに、親としての強さを失い、育児ノイローゼのようになって子どもに暴力をふるってしまう人もいます。

 ましてや、一般の親達は、子どもを愛してます。

しかし、愛情表現の不器用な親たちがいます。愛を表現するのが不器用な親と、愛を受け止めるのが不器用な子どもがたまたま組み合わさってしまったとき、愛が届かない親子ができてしまいます。


愛の空回り

 親は子どもを愛し、しかしその愛を一生懸命表現しようとしすぎて、愛が空回りする親もいます。

親は良かれと思って、子どもに勉強しろと言っているのに、子どもは言うことをきかない。親はもっとむきになって勉強しろという。親は愛すればこそ、心配すればこそですが、子どもはうるさがるだけで愛は届きません。

 不登校や引きこもりの子どもに、親は心配すればこそ、学校はどうする、仕事はどうすると説教を始めてしまいがちですが、そんなことを頭ごなしに言っても、子どもは反発するだけでしょう。

長崎男児誘拐殺人事件(中学生が幼児をいたずら目的で誘拐し殺害した事件)の少年は、ある種の軽い発達障害を持っていました。小さいころから不器用なところがありました。

 母親は愛情深く、有能で、やる気がありました。子どもを愛し、心配し、何とか他の子と同じようにできるように、一生懸命訓練をしました。

 しかし、親の思いとは裏腹に、少年は母親を怖がるようになってしまいました。一生懸命なればなるほど、愛は空回りしたのです。これが、事件の遠因となっていきした。


愛を表現する

 子どもが育っていくためには、親が子どもを愛しているという事実だけでは、不十分です。その愛を表現し、子どもに届いていなければなりません。
 息子名義の預金通帳。もし、事件の前に子どもがそれを知っていたら、結果は違っていたかもしれません。
 子どものことをどんない愛しているかを、幼いときだけではなく、思春期の子どもにもきちんと伝えることができていれば、事件は防げていたかもしれません。
物質的には豊かになり、しかしその反動で人間関係が希薄になりがちな現代は、愛が届きにくくなった時代なのかもしれません。親の背中を見て、愛を感じ、自分を守ってくれる強さを感じ取ることが、難しい時代になってしまったのかもしれません。
 愛を表現しましょう。
(表現の仕方は、そのご家族によっていろいろあると思います。

あの手この手で愛そう。

 ある中学生。あることで悩み、夜も眠れないほど悩み、受験勉強も手につきません。やっとの思いで悩みを親に話したのですが、親は言いました。
「悩むのは受験が終わってからにしなさい」
 親は、良かれと思い、今は勉強に専念しなさいと言いたかったのでしょうが、これでは親の愛はとどきません。愛の空回りです。
子どもを良い子にしようと思って、暴力をふるってしまう親もいます。親としては善意かもしれませんが、しつけといえば体罰しか思い浮かばないのでは、愛は空回りするばかりです。
あの手この手で、子どもを愛し、守り、しつけましょう。
 一つの方法にこだわってしまうのは、ぬかるみにはまった車を動かそうとして、アクセルを力いっぱい踏むようなものです。タイヤはますます空回りです。
車を脱出させるためにあの手この手を考えるように、子育てもあの手この手を考えましょう。
愛が空回りせず、愛がきちんと届くように。
体罰の心理学:限界と副作用:心理学総合案内こころの散歩道

愛されていると感じられない犯人達

 様々な事件の犯人達が、自分は愛されてこなかったと語っています。中には過酷な環境で育った人もいますが、決して親に愛がなかったわけではないのに、愛が届かなかった少年たちもいます。
 今回の少年も、親は子どものために預金をし、家族で海水浴にも行っていたのですが、子どもは愛されている実感をもてませんでした。
 神戸小学生殺害事件(酒鬼薔薇事件)の少年も、特別な家族ではなかったのですが、親の愛や肌のぬくもりを感じられなかったといっています。ただ覚えていたのは、おばあちゃんにおんぶされたときのおばあちゃんの匂いだそうです。そのおばあちゃんが亡くなった後、彼はネコ殺しをはじめ、舌を切り取ってコレクションにするという行為をはじめています。
 新潟女性監禁事件(9年にわたる少女監禁事件)の犯人も、マスコミ報道では甘やかされて育ったといわれましたが、実際に裁判を傍聴して私が聞いたのは、自分は物はたくさん買ってもらったが、家族の団欒や肌のぬくもりは知らない、自分は甘やかされてなどいないという言葉でした。
 大阪児童殺傷事件(池田小学校乱入殺傷事件)の犯人の親も冷たい親でした。
 普段から愛に包まれている人にはあまりわからないのですが、愛されている時間を持たないまま育ってしまうことは、心に大きなハンデを負うことになるのです。
 犯罪にブレーキをかけるのは、厳しい罰よりもむしろ深い愛なのかもしれません。(NHKテレビ視点論点 「犯罪心理学・心の闇」碓井真史

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