心理学 総合案内 こころの散歩道 (心理学講座/災害心理学/東日本大震災の災害心理学/死別・喪の作業・死別ケア(新潟青陵大学・碓井真史)
2011.3.15
ショックとを受け、頭が真っ白になる感覚の麻痺や、身体感覚の変化、激しく深い悲しみ、号泣の段階。
通常は、1〜2週間。
災害や事故の様な「予期しない死」の場合は、特に強い。
この段階では「しっかりしなさい」と言った励ましは有害。泣くことには意味がある。
亡くなった方に心がとらわれる段階。数週間〜1年(個人差は大きい)。うつ状態でふさぎこみ、また時には躁状態で妙にはしゃぐ。精神的にはかなり不安定でも外見的にはきわめて正常を装い、一見元気に学校や会社へ行く。
けれど、心の中では、自責感があり、不眠、食欲不振状態になったり、うらみ、怒りなど、様々な感情が出てくることも。
(「どんな感情も受け入れよう」→死別の悲しみを癒すための10の指針)
周囲からは、「早く元気になれ」とせかされたり、逆に少し元気な言動が出てきたことを責められたりすることで、辛さを感じる。
このような状態が1年(子どもが亡くなった場合は数年でも)続くこともある。
しかし、これらのことは、まったく正常なこと。だれもが、そうなること。
人生は続いていると感じる。自分もまだ生きて行こう、まだ人生の目標はあると思える時期。。激しい悲しみや苦痛なしに、故人について語れる。アルバムを開き、故人との思い出を優しい気持ちで語り始めることができる。
死別者の10〜15%が病的悲嘆に陥る。
病的と言っても、いわゆる病気ではないが、悲嘆が長期化するか非常に強度。悲嘆がプロセスの一つの段階に長くとどまる 。
時には、感情の麻痺し、悲しむことができず、前に進めない。
突然の予期しない死、子供を失ったとき など。(今回の大災害には、多くの危険因子があるように思う。)
家族や友人の不用意な勇気づけなど。
*それぞれの段階ごとに、激しい悲しみや不安定な時期があることを周囲が理解し受け入れることが大切。また、今回の大震災のように特殊な死別の状況では、通常と異なる感情や行動が出てくるのも当然と考えよう。
*共感と傾聴が大切。回復を焦らないこと。回復には時間がかかる。しかし、苦しいけれども悲嘆のプロセスを通っていったとき、それは長い長い時間の後では、人生にプラスに働くこともできるのだから。
葬儀に関連する一連の行事は、心のケアの面でも大切でしょう。とてもうまくできていると思います。しかし、大災害の時には、普段の葬儀ができません。ご遺族の中には、きちんとした葬儀ができなかったことを、後々まで悔む人もいます。
できるなら、できることなら、できるだけきちんとした葬儀をしてあげたいと思います。
今回の東北地方太平洋沖地震では、数百の遺体が海で見つかっているのに、何日も手を出すことができません。万を超える犠牲者が、水の底や泥の底に何日も何日も沈んでいます。すさまじい規模の大災害の中で、火葬さえ満足に使えないようです。死を乗り越えるにあたって、これはどんなにつらいことでしょう。
周囲の協力がなければ、通常よりずっと多くの人々が、病的悲嘆に陥るでしょう。みんなの協力で、少しでも良い葬儀を、少しでも心の支えになることをと。願わずにはいられません。
これであの人は楽になった・寿命だった・年齢は十分・あなたは生きていてよかった・がんばって乗り越えましょう・お気持ちはわかります
これらの言葉は、もちろん善意ですが、人はこのような言葉でしばしば傷つきます。何とか助けたあげたいと思うと、何か素晴らしいことを言わなくていけないと考えてしまうのですが、無理に言葉をいう必要はないでしょう。
災害に限りませんが、ご遺族からこのような言葉が出るのは良いのですが、他人から言う言葉ではありません。
悲しみの底にある時には、ただお気持ちを受け止めることが必要だと思います。
私が家族を病気で亡くしたとき、ちょうど「千の風になって 」が流行っていた時でした。すてきな歌だと思います。でも、家族を亡くした直後に、聞きたくなんかありませんでした。それは、もっとずっと後になって必要になることです。
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