心理学 総合案内 こころの散歩道 (心理学講座/災害心理学東日本大震災の災害心理学/疲れ・ガンバリ新潟青陵大学碓井真史

疲れているあなたのために・がんばっているあなたのために

東日本大震災で「不眠不休」「寝食を忘れて」働いている方々へ

2011.3.16


ボランティアと自衛隊

中越地震の時に聞いた話です。地元の災害ボランティアの方は、文字通り寝食を忘れて働き続けていました。最初はもちろん元気です。しかし、睡眠不足と不規則な生活による疲れはボディーブローのように、徐々に心身を弱めていきます。自分たちが疲れ切っていたときに、ふと見ると自衛隊のみなさんは元気に働相手いました。
なんてタフな人たちだ! 彼らはどれだけ体を鍛えているんだと思ったら、そうではありませんでした(もちろん鍛えていもいますけれども)。
自衛隊のみなさんは、きちんと交代制をとり、きちんと食べ、きちんと寝ていました。
もちろん、緊急事態になれば、食事を取らず、睡眠時間を削ることもあるでしょう。しかし、ほとんど食べず、ほとんど眠らず、文字通り寝食を忘れた生活が何日続くでしょう。しかも、重労働で、危険を伴う仕事です。
三日だけ働けばよいのなら、「不眠不休」「寝食を忘れて」でも良いでしょう。100メートルの短距離走の時には、選手は走っている間ほとんど呼吸をしません。その方が速く走れるからです(私たちも自然にそうしています)。でも、この走り方で1500メートルは走れません。マラソンは走れません。
自衛隊のみなさんは、長期戦を覚悟してきています。命令が出るまで、何ヶ月でもこの地にとどまり、過酷で大切な仕事をしなくてはなりません。自衛隊員が次々と倒れたり、疲労で失敗や判断ミスが続いたのでは、話になりません。だから、自衛隊のみんなさんは、きちんと寝て、きちんと食べていました。
明日のために体を休め、自分の心身の調子を整えておくことも大切な仕事だと理解しているからです。プロフェッショナルですね。プロ野球のピッチャーも次の登板まで体を休めることも仕事です。
(ただし、今回の東日本大震災では、中越地震よりもさらに過酷な状況になってしまっているようです。:被災地で働くプロを守ろう:自衛隊員、消防士、潜水士らの惨事ストレスケア

私たちはなぜ休めないか

この惨状を目の当たりにして、「何かをしなくて」という思いがわいてくるのは当然です。でも、その感情のままに行動してしまうと、行き過ぎてしまうこともあるでしょう。思っただけで何もしないのも困りますが、3キロ走って倒れてしまうマラソンランナーも困ります。
あるマラソンのコーチが言っていました。
「早くゴールするためには、ゆっくり走るんだ」
マラソンのスタート地点では、みんな興奮しています。やる気満々です。その気持ちのままスタートしてしまうと、早く走りすぎて、そのあと急激に失速してしまうのです。走りぬき、早くゴールするためには、やる気をコントロールし、ペース配分を考えることこそが大切なのです。

ストレス反応としてのガンバリと疲れ

人間は上手くできています。危機的な状態になり、強いストレスがかかると、普段は出せない力を発揮できます。いわゆる「火事場の馬鹿力」というものですね。人間には秘められた力があり、普段はセーブされた力があるのです。だから、東日本大震災(東北関東大震災)のような巨大災害を前にして、みんなすごい力を発揮しているわけです。
しかし、普段力がセーブ去っているのには、理由があります。登山中に落石が襲ってきたとき、何百キロもの岩を両手で投げ捨てた人がいます。すごいです。でも、彼の筋肉は骨からはがれてしまい、治療が必要になってしまいました。
ストレスがかからり、心身が高揚すると、寝食を忘れて働いても、眠くもなく空腹も感じないこともあります(災害時の心のケア:まず初めに)。でも、問題はそのあとです。疲れが一気に押し寄せてきます。
だから、休むことが必要です。寝ること、食べることが必要です。寝食を忘れている人がいたら、無理にでも、寝かせましょう。食べさせましょう。
>>災害時の心のケア:災害時のストレス、ASD(急性ストレス障害)

休むのも待つのも仕事

働き続けなければナならいと感じている当事者がいます。仕事がなければ嫌だと思っているボランティアがいます。でも、休んで力を取り戻すのも、大事な仕事です。
不慣れな素人は、せっかく来たのだから、ボランティアの仕事をくださいと、思ってしまいます。でも、ベテランのボランティアや、プロは違います。待つこともできるのです。消防士が夜勤をして、その晩は火事が一件もなかったらどうでしょうか。がっかりするでしょうか。いえ、むしろ喜ぶでしょう。彼は怠け者でしょうか。いいえ、違います。待つことも、立派な仕事なのです。

一番大切安のはあなたのいのち

中越地震の時に、倒れた墓石を直しに行って無理をしたために倒れてしまった方がいらっしゃいました。お墓が倒れているままなのは、耐えられないことだったのでしょう。けれども、一番大切なのはあなたのいのちです。仕事よりも、家よりも、何よりも大切安のはあなたのいのちです。
災害復興も、ボランティアも、命をかけて働くのではなく、どうぞ命を大切に働いてください。
そうは申しましても、交代要員もいないし、今は頑張らなければならない人もいるでしょう。でも、どうか孤独の中で頑張らないでください。助けを求めてください。救助も、片付けも、復興も、みんなで進めてきましょう。単に仕事量だけではなく、孤独と切迫感の中での仕事が疲労につながります。
緊急事態が数日ですむなら良いですが、長期戦になるのであれば、最後まで走りぬことを目指しましょう。
ゴールを目指し、みんなで走り続けることこそが、復興だと思うのです。
 (今日、2011.3.16現在、復興の言葉はまだ早すぎると思います。しかし、地震発生からそろそろ1週間。「不眠不休」はそろそろ限界です。一か月、三か月となれば、なおさらです。事故が起きる前に、大きなミスが起きるまえに、ペース配分を考え始めましょう。
 私自身、このこの東北地方太平洋沖地震の災害心理学を作る時に徹夜してしまいましたから、お気持ちはわかりますが、私は次の日8時間寝ました。 このページは、今日、家にも帰らず働いているメディアの人にお会いし、また今「官邸も疲労蓄積、判断力低下を危惧する声も 」というニュースを見て、書きました。)
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