風評被害の社会心理学心理学 総合案内 こころの散歩道 (心理学講座/災害心理学/東日本大震災の災害心理学/風評被害 (新潟青陵大学・碓井真史)
2011.3.23
風評被害とは、「ある事件・事故・環境汚染・災害が大々的に報道されることによって、本来「安全」とされる食品・商品・土地を人々が危険視し、消費や観光をやめることによって引き起こされる経済的被害」である。(関谷直也先生の定義)
政府の指示によって規制されたものではなく、それ以外の本当は安全なものまで、購入者が減ってしまうのが、「風評被害」でです。
「人は本当に『安全でない』」から買わないのではなく『安全でなさそう』だから買わないのだ」(三輪宏子師)
関谷先生の社会心理学的研究によると、風評被害は、次のような段階をへて発生します。
- 「人々は安全かどうかの判断がつかないのだらか、危険そうなものは買わないだろう」と、卸売業差など市場関係者が考えるる(想像する)→取引量減少、価格低下。
- これらの様子が大きく報道される。「やっぱり怖い」などといった街頭インタビューが流される。人々は、「風評被害」が起きていると感じる。
- 報道が広がるにつれて、人々の「危険視」は大きくなり、市場関係者の「想像上の風評被害」と実際の消費者の行動が近づき、「実際の風評被害」が発生する。
風評被害は、もともと原子力事故に関連して使われるようになった言葉です。「放射能」は目に見えず、漠然とした不安をかきたてるために、風評被害が起きやすいと言えるでしょう。
3.22朝の市場から帰ってきた青果店店主(@niikura_yaoya)のツイッター情報によると、「やっぱり北関東の野菜がかなり売れ残っていました。関係のない品種や地域まで!」ということです。
上記1の「危険そうなものは買わないだろうと、市場関係者が想像することによる取引量減少」が発生しているようです。
報道でも、やはり「全国の卸売業者の約4割に、制限品目以外の返品や契約破棄が広がっている」ということです。 しかし同時に、小売店からは、「風評被害が生まれないよう、生産者を応援したい」 との声も上がっています。
リンク:ウェブマスター碓井のツイッター
- 1膨大な報道
- 大きな報道がなければ、風評被害は生まれません。まちがった「うわさ」で、風評被害が生まれるわけではないのです。さらにやっかいなことに、報道の内容ではなく、報道の量の大きさによって、風評被害は生まれやすくなります。つまり、何であれ、マスコミのが取り上げるほど、風評被害も広がりやすくなる危険性があるわけです。
- 2情報の不足
- 正確な情報が十分にないと、「何か隠しているのではないか」と人々が思い、本来安全なものまで買わなくなるという風評被害が発生します。
- 3不安をあおるもの
- 今回のケースでも放送されていますが、『ホウレンソウ 撤去しました』 といったスーパーの張り紙は、不安を増大させ、風評被害を大きくします。
パニックを起こさないことが大切です。そのためには、風評被害パニックのきっかけを防がなければなりません。たてえば、今回のケースでも、
『ホウレンソウ 撤去しました』といった告知文は張り出さない
農水省は、「合理的な理由もなく返品するのは望ましくない。」と、大型スーパーや小売店を指導
といった方策がとられています。
マスメディアの報道も重要です。冷静な報道が求められ、また必要以上に報道しすぎないことが大切でしょう。
風評被害が発生する時には、「イメージ」の問題も大きいでしょう。
たとえば、ある食べ物屋さんで食中毒事件が起きたり、殺人事件が起きて大きく報道されたとします。すると、この店とは全く関係なくとも、同じ食べ物が売れなくなるでしょう。
イメージが悪くなる、何となく食べたくなくなるわけです。実際に体に悪いと思っているわけではありませんが、イメージは、何となくというものです。
そうすると、いわゆるイメージ戦力が必要になってきます。
大臣がおいしそうにむしゃむしゃ食べたり、落語家や力士が出てくるなど、イベント性があることで、イメージを変えることも必要です。ここはイメージですから、難しい話よりも、明るく、楽しくです。
たとえば、節電をただ行うだけでは気持ちが沈むので、アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」で、国中の電気を集めて敵を倒した「ヤシマ作戦」を真似てネーミングしたらどうか、という意見がありあます。
今回の、東日本大震災は、国家的な大困難です。みんなで力を合わせて、この困難を乗り切ろうとしています。
日本中で節電を行い、計画停電を我慢してます。日本中から多くのや義援金、支援物資、ボランティアが集まっています。それなのに、風評被害など起こして良いのでしょうか。
日本をあげて、風評被害と闘いましょう。
北関東野菜大作戦発動です。
みんなで、北関東の野菜をたべよう。
小売店ががんばるなら、消費者もがんばろう。みんなで、被災地東北、北関東を支援しよう。
被災地に直接行って行う災害ボランティアも素晴らしいけれど、それぞれの人がそれぞれの場所でできる支援活動があるはずです。
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BOOKS
『奇跡の職場 風評被害から職場を守り抜いた人々 』
『豊能郡ダイオキシン騒動記 』
『風評損害・経済的損害の法理と実務 』
***
ウェブマスターの本『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』
安心安全:災害時の心のケア1 ・災害時のストレス・ASD ・ ご家族ご友人を亡くされた方へ ・より良い避難所生活のために・避難所のトイレ・仮設トイレ:問題と工夫 ・高齢者の心のケア、体のケア・パニックの心理学 ・逃げ遅れの心理学 ・ 疲れているあなたのために(「不眠不休」を越えて) ・ 災害報道を見て辛いるあなたへ:災害時ストレスに負けない方法 ・ 災害時のマスコミの役割 ・ 子どもの心のケア ・ 災害避難所ストレス解消法 ・ ポスト・トラウマティック・グロース:外傷後成長 ・ 風評被害の社会心理学:みんなで北関東の野菜を食べよう ・ 防げ!水道水パニック ・ PTSD ・ 流言 ・ マスコミスタッフの心のケア ・ 事故の心理学 ・ 被災者を傷つけないために避けたい言葉 ・ 被災地仙台訪問記 ・自衛隊員、消防士、潜水士らの惨事ストレスケア ・ 災害ボランティア ・亡くした友とボランティア体験 ・被災地福島からの声
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