心理学 総合案内 こころの散歩道 (心理学講座/災害心理学東日本大震災の災害心理学/避難所生活(新潟青陵大学碓井真史

より良い避難所生活のために

東北地方太平洋沖地震(東北関東大震災)を生き抜いたあなたのために

2011.3.15


***

避難所設置から解消までのステップと
避難所生活の移り変わり

1混乱期 生命確保期 地震発生から数日

続々と避難者が集まってきます。送れてきた人は、悪条件のところしか場所が取れません。場所取りをめぐる争いも起きます。食べ物、水、毛布。救援物資も、人手も、まったく足りません。
地元の人間ではない旅行者が遠慮しておにぎりをもらわなかったなどということも起きます。赤ん坊の泣き声を気にして、避難所に入れない母親もいます。
気をつけないと、強者はすばやく避難所に入り、良い場所をとってしまい、社会的弱者、災害弱者としての高齢者や赤ん坊連れなどの方々は、すきま風が入る場所にいくしかないといったことが起きてしまいます。
場所が固定してしまうと動きにくいですから、最初の段階からリーダーシップが発揮されることが大切です。
トイレの使い方も、最初が肝心です。
安心安全:災害時の最初の心のケア1
災害弱者としての高齢者の心のケア、体のケア
災害時のストレス・ASD急性ストレス障害

2生活確保期 数日~1週間

余震も収まり始め、避難者も落ち着きを取り戻し始める時期です。
最初は、食べ物も水も足りなかったのが、十分に配られるようになります。
食べ物、水以外の生活用品に対する要求も出てきます。
援助物資は多数届けられるようになりましたが、一部の避難所に偏ってしまう問題も出てきました。
どうしても、多く報道された有名な被災地の、大きな避難所に、さらに支援物資もマスコミも集まります。ある避難所では支援物資があり余っているのに、別の避難所では何もかも不足という状態が続くことがあります。
今回の東北地方太平洋沖地震は、これまでになく、被災地域が広がっていますから、数日から1週間でこの段階に至れるかどうかは、まだわかりません。(>>一週間経ちましたが、未だに「混乱期 生命確保期」を脱していません。→まだ支援物資が届かないみなさんへ:東日本大震災から1週間の心と体のケア
最初の段階でトイレをきちんと使い始めないと、
トイレの問題が深刻化しています。(阪神淡路大震災の時は大変でした)
(中越地震の時は、人口も少なかったために、阪神淡路の場合ほど、トイレ問題は深刻化しなかったようです。)
>>避難所のトイレ・仮設トイレ:問題と工夫(東北関東大震災:こころの散歩道)

3秩序確立期 地震発生から1週間~1ヶ月

食料や水が安定して届けられるようになります。避難所ごとに自治組織ができ、運営のルールが作られていきます。
一方、風邪や、不眠、持病悪化など、健康問題が目立ち始めます。特にお年寄りが死亡するケースが多発する場合もあります。

また、プライバシーがない、食事メニューが単調といった生活上の不満が出てきます。
中越地震の時は、阪神淡路大震災の教訓を生かし、できるだけ近所の人が近くで過ごせるように工夫しました。また、神戸のような大都市と、山古志のような山村部という違いも最初からありました。
中越でも、食べ物が十分になると、大きな避難所では単におにぎりを持っていくといったボランティアの必要性はさがりました。そうではなくて、何かイベント性のあること、楽しい食事の会などが求められていました。
慣れてきたとはいえ、不自由な避難所生活です。楽しみが必要です。
>>この時期の災害避難所ストレス解消法:積極的活動による心のケア
>>カウンセリングマインド:会話を通してのサポート
>>災害報道を見ているあなたへ:災害ストレスに負けない方法
>>PTSD 心的外傷後ストレス障害(心の傷のケア)

4自立運営期 機能回復期 地震発生から1ヶ月~3ヶ月

避難所での生活が安定し、避難所運営も軌道に乗ってきました。仮設風呂などもできます。その一方、精神的に限界に達する避難者も出始めます。
自宅で一人暮らしよりも、避難所の集団生活が楽しいと感じる中高年さえいます。その一方、プライバシーがないことに我慢が出来ない、携帯電話やトイレの不自由さの我慢が出来きない若者なども出てきます。
しだいに避難所内の人数が減り初めます。強者から避難所を出て行きます。弱者が避難所に最後まで残ります。
災害ボランティア疲れがたまってきます。

避難者自らの運営も始まります。
仮設住宅が建設されていますが、不便なものも多いと、空家が目立ってしまいます。
疲れている被災者とボランティアのために(「不眠不休」を越えて)
避難所から出る人、残る人:避難所ボランティア体験から

5避難所解消期 正常化

町の機能が回復し、正常化へ向かいました。その一方、次第に援助が減っていき、避難所に残された被災者には辛い部分もあったと、阪神淡路の被災者は報告しています。
避難者、 災害ボランティアの減少によって、避難所運営が難しくなってきました。その結果、次々と避難所は解消されていきました。
しかし、避難所閉鎖を急ぐ行政と市民とのトラブルが続出しました。
○避難所を出て行きたくなかった理由
新しい住居を用意できない。
仮設住宅が、自宅から遠い、子どもを転校させたくない、近くに介護者が住んでいる、近くの病院に通っている。
苦労して築いた避難所の人間関係から出たくないなど。
避難所の統廃合が行われるわけですが、そのたびに、慣れた避難所がら出て、新しい避難所で、新しい人間関係づくりが求められます。
このような苦労は、中越よりも、人口が多い阪神でよく見られたようですが、中越でも、小さな避難所に最後に残ったおばあちゃんが、最後に掃除をして寂しく避難所を後にするといった風景も見られました。
避難所に入る、移る、出る。そのたびに、本来必要な物理的環境と、心理的環境、人間関係があります。

☆避難所の役割

 できることならば、各避難所ごとに、有能なリーダーが立ち、ボランティアを巧みに活用しながら、被災者の安全と衣食住を確保すること(一次機能)と、生活復旧を支援するための機能(二次機能)の両方を持ち、その時期ごとに運営のあり方を工夫できれば理想的でしょう。Tweet
>>避難所のトイレ・仮設トイレ:問題と工夫(東北関東大震災:こころの散歩道)
   >>東日本大震災から1週間、未だ混乱期の心と体のケア
   >>災害避難所ストレス解消法:積極的活動による心のケア
>>子どもの心のケア
>>災害ボランティアの心理学:互いに成長するために
>>私の日本海大震災:亡くした友と避難所ボランティア体験
ウェブマスター碓井真澄のツイート(情報発信を続けています



 


 


このページは『阪神・淡路大震災における避難所の研究 』を参考にし、
中越地震での出来事を加筆して作成しました。

あのとき避難所は―阪神・淡路大震災のリーダーたち
瓦礫の中のほおずき―避難所となった小学校の一教師の体験
中越地震に関する本

ウェブマスターの本『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』
 

東日本大震災の災害心理学へ戻る

安心安全:災害時の心のケア1 ・災害時のストレス・ASD ・ ご家族ご友人を亡くされた方へ ・より良い避難所生活のために避難所のトイレ・仮設トイレ:問題と工夫 ・高齢者の心のケア、体のケアパニックの心理学 ・逃げ遅れの心理学 ・ 疲れているあなたのために(「不眠不休」を越えて) ・ 災害報道を見て辛いるあなたへ:災害時ストレスに負けない方法 ・ 災害時のマスコミの役割 ・ 子どもの心のケア ・ 災害避難所ストレス解消法 ・ ポスト・トラウマティック・グロース:外傷後成長 ・ 風評被害の社会心理学:みんなで北関東の野菜を食べよう ・ 防げ!水道水パニック  ・ PTSD ・ 流言 ・ マスコミスタッフの心のケア ・ 事故の心理学 ・ 被災者を傷つけないために避けたい言葉 ・ 被災地仙台訪問記 ・自衛隊員、消防士、潜水士らの惨事ストレスケア ・ 災害ボランティア ・亡くした友とボランティア体験 ・被災地福島からの声

 

碓井真史のツイッター 碓井真史のフェイスブック   



こころの散歩道・心理学総合案内
トップページへ戻る

アクセス数3千万の心理学定番サイト

碓井真史スパイシー碓井真史教員紹介碓井真史wik風紹介

心理学入門社会心理学(対人心理学)心の癒し(いやし)・臨床心理学やる気の心理学マインドコントロール| ニュースの心理学的解説自殺と自殺予防の心理学犯罪心理学少年犯罪の心理学(非行の心理)宗教と科学(心理学) プロフィール講演心療内科心理学リンク今日の心理学(エッセイ) | 心理学掲示板ホーム心理学

アクセス数(97.6.5から)

Kokoro no Sanpomichi / 2011 Copyright USUI Mafumi
リンクフリー