最大余震と心のケア:心理学 総合案内 こころの散歩道 (心理学講座/災害心理学東日本大震災の災害心理学癒しと臨床心理学入門/最大余震で不安になっているあなたに/(新潟青陵大学・碓井真史)

最大余震で不安になっているあなたに
「うそつき」になってしまった大人たちに

不安の中で、自分の心と体を守り、子どもを守るために

20114.8


 

震度6強(マグニチュード7.4)の最大余震

悲しくて、辛くて、怖くて、悔しい、大きな余震が発生してしまいました(2011.4.7 23:32)。「被災者に追い打ち」と報道されています。また尊い人命が奪われました。けがをした人も、建物や道路の被害もでました。
悲鳴を上げて、逃げまどう人々がいました。パニック状態、パニック寸前だったとの報道もされています。
せっかく回復した電気が、また消えてしまいました。少しずつ心の冷静さを取り戻していた人たちにも、また不安と緊張が舞い戻ってきました。大きな余震発生の確率は、だんだん低くなっていたのに。

恐怖と不安を感じているあなたへ

怖いのは当然です。不安なのは当然です。治りかかっていた傷の場所をまたケガしたようなものです。痛いのは当然です。あの、ものすごい体験をして、まだ3週間です。多少の余震には慣れてきた人もいるかもしれませんが、小さな振動にも不安を感じる人も多いのは当然です。そこに、この余震、いえ大地震です。
恐怖と不安を感じるのは当然です。頭の中がパニック状態になり、悲鳴を上げ、大慌てで逃げるのも当然です。今、余震がおさまった後も、不安と恐怖が残っていたとしても当然です。
眠れなくなるのど、心と体の不調があるのも当然です。
巨大地震を体験しなかった人でさえ、災害報道を見ているだけのひとでさえ、恐怖と不安がわいてきた人も大勢います。それも当然です災害報道を見て辛いるあなたへ:災害時ストレスに負けない方法)。
ですから、当事者の方々が、恐れと不安を抱くのは、弱いからではなく、人として当たり前です。
今回の大きな余震は、少し落ち着き始めていた私たち心と生活を、もう一度激しく揺さぶってしまいました。

回復はらせん階段を上るように・三寒四温

何か良くないことが起こっても、その後順調に改善していくのなら、私たちは希望が持ちやすくなります。日一日と良くなっていくのですから、今は辛くとも、我慢ができるでしょう。
しかし、いったん良くなったものがまた悪くなるのは、とても辛いものです。
このページを時間をかけて作り、もう少しで完成だと思っていたところで、パソコントラブルでデータが消えてしまったらどうでしょう。もう一度書きなおすのには、最初に書こうと思った時以上のエネルギーが必要になるでしょう。
冬から春になる時に、いったん暖かくなったあとの、寒の戻りは、体にきついものです。
たとえば、うつ病の人が、だんだん良くなってきていたのに、何かのきっかけでまた悪くなると、とても不安になります。せっかく良くなってきていたのに。みんなも喜んでいてくれたのに。仕事や勉強の再開の準備も進めていたのに。もう自分は治らないのかと、激しく落ち込んだりします。
***
今、安全な場所にいる私には想像もつかないほど、この大余震はきつかったのではないでしょうか。
でも、心の問題について言えば、余震があるにせよないにせよ、心の問題はらせん階段を上るように良くなっていきます。骨折した骨が治るように直線的には良くならないのですが、良くなったり悪くなったり、あっちに行ったりこっちに来たりしながら、でも、らせん階段のように実は着実に上に登っていっているのです。
冬から春になる時も三寒四温です。温かくなったり、寒くなったりしながら、着実に春に向かっていきます。寒の戻りは体にはきついのですが、心が耐えられるのは、必ず春になることを知っているからです。
心も同じなのでしょう。大切なものを失って、涙にくれ、ボーとしてしまい、元気になったかと思うと、また何かの拍子に涙がこみ上げてきて、様々な感情が次々とわいてきて、時間がたっても何も変わらないような気さえしながら、それでも少しずつ、心は回復していくのでしょう。
心は、三寒四温のように、らせん階段を上るように、回復していきます。
うつ病の人との接し方

PTSD:心の問題が長期化しないために

大災害の直後に、心が不安定になるのは、みんなそうでしょう(災害時のストレス・ASD)。大切なのは、それが長期化しないことPTSDなどにならないことです(PTSD 心的外傷後ストレス障害)
ただ、大きな余震が続くことは、やはりダメージにはなります。災害規模が大きいこと、ご自身への被害が大きいこと、大きな生活変化が発生していること、これらはPTSDの危険性を増し安すが、でも客観的な被害の大きさだけが問題なのではありません。
東日本大震災では、多くの人が「無力感」を感じたことでしょう。大地震を前にし、大津波を前にし、大切な人や、周囲の人を助けられなかった事実を前にし、そして、長いこと救助が来なかったことや、支援物資が来なかったことで、無力感を感じてしまった人も多いでしょう。
この無力感が、心の傷に塩を塗るような影響を与えてしまいます。
さらに、度重なる余震です。余震への感覚も人によって違いますが、余震のたびに大きな不安と恐怖を感じる人ほど、心の傷が治るのに時間がかかりやすくなります。そして、今回の大余震です。これは、だれだって、恐怖と不安を感じたことでしょう。
あの大震災を思い思い起こすような出来事(リマインダー)が多いことは、心の問題を長期化させやすくします。
ですから、互いに支え合いましょう。必要があれば、専門家の力も借りましょう。でも、心の傷にお薬がぬれるのは、専門家だけではありません。
家族として、友人として、同じ地域のものとして、ボランティアとして、お互いに、支えましょう。
私たちは無力ではない、孤独ではないと感じられること、誰かが寄り添っていてくれると実感できることが、心の傷の薬になるのです。
カウンセリングマインド:心のケアのために身につけたい態度
PTSD 心的外傷後ストレス障害(心の傷に負けないために)


 


「うそつき」になってしまった大人の人々へ

不安になっている子どもを抱きしめ、「大丈夫だよ」、「もう怖くないよ」と言ってあげることは子どもの心のケアにとって、とても大切です。
小さな子どもは大人とは違って良く分かりませんから、また3月11日のような大地震や大津波が明日にでも来るのではないかと不安になったりします。大人は、あんな千年に一度の大地震がすぐにまた来ることなどないとわかっていますから、落ち着いて説明し、子どもを安心させることができます。
しかし同じ規模の大震災は起きなくても、マグニチュードが1から2小さい程度の余震はおきるでしょう。
それに、同じ地震がすぐに続けて起こることはなくても、近い場所の別の地震の巣から地震がいつ発生するかは、わかりません。
 
新潟県では、2004年に震度7の「中越地震」が発生し、そのわずか3年後の2007年、まだすぐ近くで、今度は震度6強の「中越沖地震」が発生してしまいました。
「もう地震なんか来ないよ」と話していた親や先生は、「うそつき」になってしまいました。結果的にになってしまっただけではなく、子どもに直接そう言われた人もいました。ウソつきだと言われた大人も困ってしまいました。大人たちも、同じような地域で、またすぐ地震があるなど、想像もしていませんでした。
 
「もう大丈夫だって言ったのに、どうしてまた地震が来たの?」
そんなふうに子どもから質問されたら、どう答えましょう。「うそつき」と言われたら、どう答えましょう。
私は、正直に答えれば良いと思います。
「いつ余震が来るのか、いつ余震がおさまるのか、それはお父さんにも、お母さんにも、先生にもわからない」と。
そして、「こわかったね」「びっくりしたね」と子どもと一緒にこわがっていいと思います。
そして、正直にきちんと、子どもの年齢に合わせて、説明してあげればよいと思います。同じ規模の地震や津波は考えられないけど、もう少し小さな地震や津波は考えられる。だから、気をつけようと。
ただ、正直にと言っても、子ども守るが大人の仕事です。
嵐にほんろうされる船で、船長はウソはつけないでしょう。でも、船長が不安そうな顔を見せたりしたら、客はどうしたらよいでしょう。医者も同じですね。ウソはつけないけれど、全部ありのままに言えば良いわけでもないでしょう。
余震はわからないけれど、それでも、あの時の、子どもが体験してしまった最大の恐怖と不安の、あのときと「おなじこと」は、もうおきない、大丈夫だと伝えましょう。
わからないことは、わからないと伝える、でも、子どものことを愛し、全力で守るから大丈夫だとつたえるのが、大人の役割だと思うのです。
子どもを守り、そして子どもを守ることができるように、自分自身を守りましょう。
ウソの心理学
子どもをPTSDから守ろう:災害後特に注意すべき子どもたち
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